第26話 届かなかった手紙
マークスから取り上げた鞄を持って小屋の中へ入る。
水晶玉はーーぐしゃりと握り潰した。
砕けた水晶の破片が、浮き上がる。
ーーこれで監視しているつもりか?
その欠片さえもさらに、砂粒並に砕いてやった。
ベルナール氏は、人を見る目がないな……
神殿の犬を使いによこすとはーー
ワタシは、再び鞄の中に目を落とす。
たくさんの皮紙や、巻物、竜に関する書物も入っていた。
神殿の秘密も余多ありそうだ。
イーグのいない部屋。
鞄を、まっ逆さまにする。
カビ臭い匂いが部屋を漂う。
ワタシは、鼻をつまんで入っていたものを一つのづつ拾う。
竜に関する書物。
神殿が確認している竜の個体。
生息地と名前。
リンシャー王子に関する情報。
ーーアルテアの第二王子か。
一つの大きな紙袋も添えられていた。
開けてみる。
たくさんの封書。
もう一度、リンシャー王子の情報に目を移す。
なるほど、風の魔法の使い手。
幼い頃、銀の森で教育を受けた人。
この人がなぜ、イーグに手紙を送り続けた?
封筒を一つ取ってみる。
風の魔法がかかっていた。
普通の人間には空けれない。
よほど上級の魔法使いでなければ、無理だろう。
おそらく、フィニアスにもむりだ。
これは、イーグにあてた手紙。
風竜の彼女なら、難ともない。
ーーワタシにも。
ワタシは、手紙を取り出して封を破る。
中には、二百年前の香りがした。
王子の愛用したインクの匂い。
少しの潮の香り。
一枚の便箋が入っていた。
古代レトア語の綴り。
ーー見つけた。




