第22話 マークス・セイン
「くれぐれも、地上から帰ってきてくださいね」
「へいへい」
翌日、フィニアスはクエスト参加のために、南方に向かって出発していった。
神殿の魔法使いと、ギルドのはぐれ魔法使いが集められた。
合同のクエストなのだ。
滅多にあることではない。
この機会に、神殿のフィニアスの扱いを調べた。
ギルド公認のS級魔法使いかと思っていたーー神殿所属のS級魔法使いとして登録されていた。
神殿は、追放といっても、完全に見放したわけでもないようだ。
今日は、小屋の中で心地よい風が吹いていた。
ーー結界に誰かが触れた?
ワタシは、急いで小屋の外に出る。
茶色の外套男がこちらに向かって来ていた。
結界に足止めされている。
その時、ベルナール氏につけた、金色の糸がワタシのもとに落ちてきた。
彼は、招かざる客の中には入れていない。
手紙付きだ。
開くと少し懐かしい匂いーー
《ひどく、派手な帰還をしたもので、神殿に目をつけられた。代わりに僕のために動いてくれた者を行かせるよ》
「手紙、拝見しました。マークス・セイン? ワタシは、リリベット・モルガンです」
「はい、そうだ。えっと……話は小屋の中でもできるよ? お嬢さんの他に大人はいないの?」
「ベルナール氏からの情報でしたらワタシが受け取ります
今、小屋には誰もいません
用件が終わったら、お帰りください」
マークスは、一つの古い手配書をワタシに差し出す。
「二百年前、ドーリアの神殿の監査官が失踪しておりました」
すすけた皮紙に描かれていた、人相画。
「彼がエイル?」
「ーーはい。エイル・ブレン。
王都で中位の神官だった男です」
マークスは、小屋が気になるのか、そちらから目を離さない。
でもーーワタシは、結界の中に彼を招き入れる気はなかった。
「この男が、配達人になることはありますか?」
ワタシの言葉に、マークスは首をかしげる。
「配達人とは……?」
彼の瞳が、ワタシに戻る。
「王都で、若くして監査官になっている男ーー秘密の任務があったのかと……」
「今回は、エイル・ブレンという監査官が、二百年前に失踪したという記録が残っていた……だけだ」
「そうですか。ありがとうございます。ではーー」
結界を閉じようとした時だった。
「お嬢さん、ベルナールさまをこの件に巻き込むな!! 奥方をもらって
跡継ぎが生まれたばかりなのだ」
ワタシは、冷たく言い放つ。
「それはあなたの決めることではありません。
ベルナール氏の決めることです」
ぱしっ
結界を閉じる。
先ほどから空気が変わっていた。
竜の聴覚は、人間には計り知れない。




