第20話 フィニアスの情報
ワタシは、イーグの話にズレを感じる。
それが頭から離れない。
それから、イーグに過去のことを聞いても『さあ?』しか返ってこなくなったのだ。
『気がついたら、ここにいたわ。
……私は、イーグということになってた』
ーーやっぱり、仕方なく受け入れたのね……
ワタシは、心の中で嘆息する。
当の本人が、記憶が曖昧なのだ。
いつ、生まれて、なぜ名前がないのか?
この二百年、どこにいたのか?
全てが謎だ。
その分、イーグの存在を危うくしていた。
「今」は、安定している。
いつまで、持つかだがーー
イーグが再び、歌を歌い始めた。
ワタシは、そっと彼女のそばを離れた。
今は、静かに見守ったほうがよさそうだ。
何の歌か聞いても、きっとこう言うだろう。
『さあ?』
と……
ーーその時、結界に何かが触れた。
魔法使いが、もうここを見つけたのか?
バカな魔法使いが、結界に気がつかずに小屋へ突っ込んだような揺れかただ。
ワタシは、外へ様子を見に行く。
もし、本当に神殿の魔法使いだったらーー記憶操作をしてお帰りしてもらわねば……
「なにやってるんですか? フィニ」
結界を出る。
目に入ったのは、木にぶら下がって目を回しているフィニアスだった。
しまったーー
彼も魔法使いだった。
普通に帰ってきてくれたら、弾かれないのに……
有能な精霊を持ってるだけにーー飛ぶことに慣れすぎている。
ワタシは、ふわりと浮いて、フィニアスに怪我がないか確認する。
頭にたんこぶだけですんでいる。
ほっとした。
一応、身体全体に癒しの術をかけておいた。
ほどなく、フィニアスは目覚める。
「あれ? ここはどこだ?」
「マルタ村ですーーお願いですから、この村では地上からお帰りください」
「バカ!! それどころじゃねえ!!」
フィニアスは、呂律がまわってない。
「……落ち着いて……なにが言いたいのです?」
「酒場で聞いたんだ!!
三日前に、南方で、大きな竜巻があってーー」
「それで?」
「魔族が大分やられたらしいーー」
「どこの情報ですか?」
「ギルドの公式発表だ。
S級冒険者も巻き込まれた」
フィニアスに喋らせながら、情報を整理する。
二日前、イーグを拾った。
その前に、南方で竜巻。
魔族の巣が壊滅。
偶然にしては、出来すぎている。
ワタシは、ゆっくりと息を吐いた。
結界の内側へ視線を戻す。
小屋の中。
何事もなかったかのように、風が揺れている。
あの風が。
あの、穏やかな風が。
ーーすべてを、巻き上げた?
「……」
否定する材料が、どこにもない。
ワタシは、額に手を当てた。
拾った、のではない。
《落ちてきたものを、拾わされた》のかもしれない。




