第2話 ちょろい
「だーー!! もう飽きたぞ!!」
フィニアスは、ノコギリをワタシの方へ投げた。
そして、帰り支度を始めた。
「こんなクエスト受けなきゃよかったぜ!」
ノコギリは、ワタシにあたるはずだった。
しかし、あり得ない方向にそれて、ノコギリの方が避ける。
それをちらりと見ながら、フィニアスは言う。
「なぁ、リリベット。帰ろうぜ」
「明日の夕方までに、ギルドにサーベルタイガーの牙、二本。ーー簡単なクエストですよね?」
フィニアスの顔が歪む。
「俺には、肉体労働は合わないんだよ!! もっと、俺にあったクエスト探してこい」
ギルドで、S級の冒険者の彼だが、素行の悪さもS級なのだ。
ワタシは、ノコギリを拾い上げて、フィニアスに握らせた。
「まだ、一本目です。二本持っていかなかったら、規約違反で罰金ですよ。ーー次から仕事がなくなりますよ」
続ける。
「ワタシを飢えさせる気ですか?」
フィニアスの顔が、ますます歪んだ。
「そういうところは、エリーにそっくりだ」
ワタシは、サーベルタイガーに近づいた。
指でさす。
「牙の根本から切ろうとしても固いだけです。ーーこの位置から三十度の角度でノコギリを引けば最短時間で切れます」
ひゅー。
フィニアスの吹いた口笛だ。
「エリーらしい発言だぜ。ーーでも、詳しすぎるだろ?」
カバンをフィニアスから取り上げて、サーベルタイガーの前に座らせる。
「その角度からなら、一時間でできますよ」
その言葉に、俄然やる気になったフィニアスである。
「よし、今夜は、ギルドの酒場で一杯やって、パーッと遊ぶぞ!!」
ーーちょろい……




