第18話 元気になったイーグ
ベルナール氏を吹き飛ばした晩から、イーグは変わった。
彼女は、元気になった。
絶えず、家の中に風が吹いている。
目に力が出てきた。
ーー今まで不確定だったものが一気に消えた。
それに、古い伝承歌など口ずさんでいる。
意味は分かるが、知らない歌だ。
『ご機嫌だね? イーグ。ネーヴァは、よっぽど気に入らなかったのかな?
俺の従兄を吹き飛ばしてくれて』
この男は、やっとレトア語を思い出して、イーグに話しかけたと思ったらーーこれだ。
ベルナール氏に、弱みでも握られてるのだろうか?
ーーあっさり連れて帰って来るし……
『私には、真名があるのよ。
変な名前をつけないで』
『イーグ《名無し》のくせに生意気だな』
ペーパーナイフが、フィニアスの頬ぎりぎりに飛んでいく。
「リリペット!! 危ないだろ」
「女性に失礼すぎです」
ワタシは、上着を着て外に出る準備をする。
「フィニ、これ以上イーグを侮辱すると次は本気で怒ります」
「おまえは、いつも本気だろ!」
「古代レトア語で侮辱はいけません。言葉で人は死ぬんですよ」
「こいつは、竜なんだろう!」
「古代レトア語は、本質を顕す言葉ですーー気をつけて使ってください」
フィニアスは、ワタシに向かって思いきり舌を出してきた。
相変わらずだーー
ワタシは、外に出て小屋のまわりに結界る準備を整える。
本当は、山の中に籠りたいところだ。
でもーーフィニアスが絶対に無理だろう。
盛り場が、大好きなフィニアスである。
山籠りなぞさせたら、大暴れだ。
少し、駄々っ子のフィニアスを想像してしまう。
ーーできる対策は、イーグをここに閉じ込めておくこと。
ワタシの力で、どこまで持つか分からない。
ーーそれでも
守らなければ。
私は、大地と水を基にした結界ーー小屋の回りできるだけ、広い範囲に張った。
仕上げに、指をならす。
光の加護と、
もう一つ
闇の加護。
これで、ここは、簡単には突き止められない。




