第17話 軽い名付け
「あのーー」
イーグにピク草を届けて、ベルナール氏にーー相談してみる。
神殿と仲が悪いのなら、秘密裏で動いてくれるかもーー
「光の神殿に入ることは可能ですか?」
「うん、神官と仲が悪くても、立場は僕のほうが上だからね」
口元だけで笑う。
本当に信用できるのか?
迷うーーでも、他に手段がない。
「なに? 竜のこと?」
興味津々で聞いてくる。
視線がそらせない。
「……《《彼女》》にも関係はあります。
二百年前、神官の失踪者についての情報がほしいです」
ベルナール氏は、ワタシと視線を合わせるために、しゃがんでくれた。
「何の竜か教えてくれる?」
「風竜です」
「名前は?」
「イーグ……と」
ワタシは、声を押さえて答えた。
「古代レトア語で、名無しとはねぇ。
……おかしいなあ。竜は生まれつき名前を持っているものだよ」
ベルナール氏は、少し考えて言った。
「もしかして。名前が無いの?」
ワタシは、答えない。
「なら、僕が付けてあげるよ」
ベルナール氏は、片方だけの唇を上げて笑って言う。
「風竜だろ……ネーヴァはどう? 《風が生まれる》の意味だよ」
「おっ!! それいいな。イーグ《名無し》よりはよっぽどいいぜ」
いい名前を思いついたと、ベルナール氏とフィニアスは、浮かれていた。
軽いーー
さすがにフィニアスの従兄だ。
イーグは、受け取るのか?
こんなノリで付けられた名前を。
瞬間、小屋がわずかに軋んだ。
――次に家の中に風が吹き荒れ、窓という窓が開け放たれた。
『ちがう、それは私の名前じゃないーー私はエイルが付けてくれた名前を待ってるの!!』
頭の中で声が響いた。
「イ……」
言いかけて、大変なものを見てしまった。
大の大人、ベルナール氏が、軽々と風に持ち上げられている様をーー
「うぁ!!」
フィニアスが必死に手を伸ばして、引き戻そうとしている。
「ベルナール!!」
「……やはり、本物か」
「ベルナール氏、さっきの件、お願いします!」
慌てて、それだけ言った。
そして、寝室へ向かう。
『力を収束させてください。この家が吹き飛びますよ』
『力加減ならしているわ。あの無礼な男を故郷まで帰しただけ』
ーー竜の力計りしれない……
このままでは世界を壊しかねない。




