第14話 塞ぎ込んだ心
春休み一日目。その日は外に出なかった。
カーテンを開ける気にもならず、目が覚めてからもしばらく布団の中で天井を見ていた。
スマートフォンは枕元にある。でも手に取らない。通知が来ていないことはもう分かりきっていた。確認する必要もない。
体を起こし部屋を見回す。
狭い。けれどこの狭さが今日はちょうどいい。壁と天井と床が私を囲っている。外から触れられない形をしている。
カーテンは閉めたまま、電気だけをつける。昼なのか夜なのか、分からなくなる。その曖昧さが安心につながる。
昨日のことを思い出そうとして、途中でやめる。飲み会の話ではない。教室の空気でもない。
思い出すのは、自分が何も言わずに輪の外に戻った、その瞬間の感覚だけだ。
私は、何かを失ったわけじゃない。最初から、持っていなかっただけ。そう思うと、少し楽になる。期待しなければ、傷つくこともない。期待するだけ無駄だ。
冷蔵庫を開け、適当に口に入れられるものを探す。味はよく分からない。噛んで、飲み込む。それだけで十分だった。
部屋の音が増えないように、テレビはつけない。音楽も流さない。世界は、私の呼吸の音と、時計の針の音だけになる。
ベッドに戻り、膝を抱える。布団を頭まで被る。ここなら、誰にも見られない。
何も答えなくていい。泣いたっていい。無理して笑わなくていい。
部屋は殻だ。私はその中で、動かずにいればいい。
外は私がいなくても進む。
それなら、今日は関わらなくていい。
目を閉じると、少しだけ安心する。
孤独は消えない。今日が春休みで本当によかった。今日も、明日も、その先もずっと休み。
もう誰にも会いたくない。




