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ヤンデレ竜娘が折ったツノで剣を作ったんだが、愛が強すぎて俺専用の魔剣になっている件  作者: 或鬼ながら


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#04. 薄暗い場所で逆壁ドンされました


 北西部に位置するオルカーン鉱山。

 そこは標高が上がるに連れて強い風が吹き荒れ、剥き出しの岩肌が見られるのが特徴の山脈地帯だ。

 頂上は常に雲で隠されていて、麓の村では禁足地と呼ばれている。


 なので、採掘は比較的風が穏やかな標高の低い場所になる。

 辺りの木々が秘匿するひっそりとした洞窟。

 ここが、俺とシャーテが出会った場所……なのだが。 


「参ったな……嵐でもあったか。入り口が崩れてる」

「大きい岩、だね」


 上から転がってきた大岩が洞窟の入り口を崩し、塞いでしまっていた。


「壊す?」

「……ふむ」


 シャーテが指さしたのは、俺が腰に下げていた黒剣。

 確かにコイツならあの岩を斬れそうだ。

 やってみるか。


「頼むぜ相棒」


 鞘から引き抜いた黒剣──《ヴァールホルン》に言う。


「む……アインハードの相棒は私」

「も、もしもしシャーテさん? この剣はあなたのツノですよ」


 どうやら剣に嫉妬しているらしいシャーテにそう弁明するが、果たして伝わっているだろうか。


 大岩は黒剣を軽く一振りすると、まるで豆腐でも切るような感触で真っ二つになった。

 相変わらず威力がおかしい。

 とんでもない魔剣になってしまったが、ともかくこれで洞窟に入れる。


「それじゃあ松明を……」

「必要ないよ」


 バックパックから松明用の棒を取り出そうとしたのだが、シャーテが詠唱すると周囲に穏やかな光を放つオーブのようなものが現れた。


「照明魔法か。ありがとな」

「魔力探知も兼ねてるから、魔物の警戒も任せて」

「変身した時から思ってたんだが、シャーテって魔法得意だよな」


 片角を失って日が浅いのに、これだけ自在に魔法を扱えるのは得意と言うレベルでもない気がするが。

 ドラゴンってみんなこうなのか……?


「私はドラゴンの中じゃ小柄だし、力も弱い。だから……魔法だけが身を守る手段。自然と魔法の扱いは上手くなれた」

「へぇ……そういえば幻影竜って名前、()()()()()()()()ってとこから来てるんだよな。もしかして透明化とかしたり?」

「透明にはなれないけど……アインハード、魔法に興味あるの?」


 おっと、食いつきが良すぎてバレてしまったか。


「いやぁ、今でこそ鍛冶師をしてるが、子どもの頃は魔法使いが夢だったからな。でも俺は魔力をほとんど持ってないから、精々使えるのは鑑定魔法くらいでな……ま、適性がなかったってわけだ」

「そっか……じゃあ、私が教えてあげる」

「いや、魔力がないから──な?」


 突然、俺は洞窟の壁に追いやられる。

 シャーテの手が俺の脇下から壁を付き──端的に言えば、壁ドンされていた。


 照明魔法のオーブが、少し薄暗くなる。

 シャーテの紫紺の瞳が俺の目を覗き込み、僅かな明かりできらめいている。

 しかしシャーテは俺をジッと見つめたまま動かない。


「……届かない」

「え?」

「少し、屈んでほしい」

「屈むって……こ、こうか?」

「ん、そのまま────」


 屈むとシャーテの顔がすぐ近くに来て気恥ずかしい、そう思っていた。

 ふと、シャーテの顔が迫って──その唇が触れた。


「むっ!? ──ぷはっ。な、なにを!?」

「動かないで。まだ終わってないから────ちゅっ」


 思わず一度離した唇を、シャーテは追いかけるように重ね合わせてきた。

 吐息が混ざり合う。シャーテの柔らかい唇の感触が、次第に緊張していた体を溶かしていく。

 バッチリ開いたままの紫紺の瞳がジーっとこちらを見つめていて、まつ毛が少し、こそばゆい。


 周りの音を消し去るような、長い接吻(キス)だった。


 シャーテの唇が離れ、唾液がつぅっと糸を引く。


「──ん。これでよし」

「……え? あ、うん? おぉ……え?」

「どうか、した?」


 見つめられると、心臓が跳ね上がる。

 でも本人はなんとも思ってなさそうで、俺の認識に誤りがあるのか不安になってくるな……。


「い、いや、いきなりキスされて、思考が追いついてないと言いますか……」

「キス……? 魔力供給のつもりだったけど……人間はこれをキスと言うの?」


 シャーテはキョトンと首を傾げた。意外な反応だ。


「ど、ドラゴンは魔力供給でキスをするのか!?」

「ううん、魔力が枯渇することなんてほとんどないから、普通はやらない。人間に魔力供給することもないけど……たぶん、このやり方が一番手っ取り早いから」

「あー……そ、その……な。人間がキスするのは……」


 誰が聞いているわけでもないが、大声で言うことでもないので耳打ちする。

 するとシャーテは驚いたのか目を丸くして──すぐに目を細めて笑みを浮かべた。


「そっか、これが人間の愛情表現なんだ。じゃあ……これからはもっとするね……♡」

「え!? いやっ、その! あー……」


 いかん、余計なことを教えてしまったか。

 しかし満更でもない自分が居る。

 ファーストキスを盗られた衝撃は思っていたより大きかったらしい。


「ひ、人目のないところでな……」


 せめて人前でいきなりされないよう、そう釘を刺しておいた。


「わかった。つまり今だね?」

「そうなるかぁ!! 悪いんだが、今は探索に集中してくれないか!」

「むぅ……でも、確かに。魔物も来てるからね」

「そうそう魔物も……え?」


 照明魔法のオーブがうっすら赤くなっていた。

 耳を澄ませば、洞窟奥からバタバタと羽ばたく音が聞こえてくる。

 暗がりに目を凝らしてみると……音の正体は、石のような肌をしたコウモリの群れだった。


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