第13話:School Festival
1:近づく文化祭
【聖百合園女学院・2年A組教室 13:02】
夏休みが終わり、新学期が始まって一週間が経った。
この一週間は慌ただしく、あっという間に過ぎ去っていった。
昼休みが終わって、軽い眠気と闘いながら、天峰莉子(飛鳥凛太朗)は夏休み明け直後の騒動をぼんやりと思い出していた。
【回想:2年A組教室 始業式後の休み時間 10:45】
夏休みが明け、教室は少し日焼けした生徒たちの活気と、再会を喜ぶ黄色い声で溢れていた。
莉子は、いつもの完璧な黒髪を整えながらも、心中では穏やかではいられなかった。
(……ダメだ。あの花火の下でのキスが、頭から離れねぇ……。しかも、実家に璃々花さんが来たせいで、父さんたちまで璃々花さんを「凛太朗の嫁候補」だと信じ込んでる……)
莉子が机でため息をついていると、背後から強烈な勢いで誰かが抱きついてきた。
「莉子ちゃーーーん! 会いたかったよぉ〜〜!!」
莉子のクラスメイトで、自称・親友の白鳥紗耶だ。
彼女はいつものように莉子の腕に手を回し、豊満な胸を莉子の背中にこれでもかと押し付けてくる。
「さ、紗耶ちゃん……近いってば!」
「えへへ、いいじゃん! 女の子同士の特権だよ♡ それより莉子ちゃん、花火大会のあとのアレ、どうなったの!? 私、見たんだからね! 莉子ちゃんと璃々花様が……ムギュッてなってたの!」
「そ、それは……!」
紗耶の無邪気な「追及」に、莉子の顔は熟したトマトのように真っ赤になった 。
周囲の生徒たちが「えっ、会長と莉子ちゃんが!?」と色めき立つ。その時、教室の空気が一瞬で氷点下まで下がった。
「あら……。白鳥さん、随分と朝から賑やかね?」
現れたのは、生徒会長・氷川璃々花だった。
彼女は「氷雪女王」としての完璧なポーカーフェイスを纏っているが、その瞳の奥には、莉子に触れる紗耶への漆黒のダークマターが渦巻いている。
「ひ、氷川さん! おはようございますっ!」
紗耶が驚いて手を離すと、璃々花は優雅に莉子の隣へ立ち、莉子の耳元で、クラス中に聞こえるような「わざとらしい小声」で囁いた。
「莉子ちゃん、夏休みは楽しかったわね。特に……あなたのご両親に『凛太朗をよろしく頼みます』なんて言われた時は、責任の重さを感じてしまったわ♡」
「ちょ、璃々花さん!! ここでその話は……!!」
莉子は椅子から転げ落ちそうになりながら絶叫した。
教室中が「両親に挨拶!?」「結婚!?」「凛太朗って誰!?」と大パニックに陥る。
そこへ、メガネをクイっと直しながら高瀬真理が割って入った。
「会長、公私混同が過ぎます。生徒たちが混乱しているのが見えませんか?」
副会長の冷静な一喝に、璃々花はフッと冷たい笑みを浮かべた。
「あら、私はただ莉子ちゃんとの『共犯関係』を再確認していただけよ」
「『共犯』ではなく『暴走』の間違いでしょう。……天峰さん、あなたも大変ですね。こんな肉食獣に目をつけられて」
真理の憐れむような視線に、莉子はただ顔を覆って呻くしかなかった。
璃々花はさらに追い打ちをかけるように、莉子の耳の裏を指先でかすめながら、甘く狂気的な声で囁いた。
「新学期も逃がさないから。……放課後、生徒会室で『続き』をしましょうね、莉子ちゃん。いいえ、凛太朗♡」
(……新学期が始まる前から、俺のライフはもうゼロだよ!!)
莉子(凛太朗)の絶望をよそに、璃々花は満足げに、そして真理は深い溜息をつきながら、教室を後にしていった。
残されたのは、莉子へのスキンシップを虎視眈々と狙う紗耶と、完全にパニックに陥ったクラスメイトたちだけだった 。
莉子は窓際の席で頬杖をついて、校庭の銀杏並木をぼんやりと眺めていた。
頭の中では夏の間の海や花火大会、東京での璃々花とのデートなど、この半年ほどの出来事が浮かんでは消えていった。
(……そういえば俺、なんで璃々花さんをあんなに必死で拒絶してるんだっけ? 別に嫌いなわけじゃないのに……)
脳裏に浮かぶのは、璃々花の様々な積極的アプローチの数々に、顔を真っ赤にして逃げ回る自身の姿だった。
(むしろ、キスされた時のドキドキとか、あの耳のほくろで崩れる顔とか……。全部、頭から離れねぇし……)
指先で無意識に唇をなぞる。
(……俺、ただビビってるだけじゃねぇか)
その瞬間。
ガラッ!
教室のドアが開いて、担任の声が響いた。
「はいはい〜、みんな聞いてる〜? それじゃあ、文化祭に向けて準備始めるわよ〜!」
担任の女性教師が、笑顔でホームルームを始めた。
「今年の2年A組の出し物は……『メイド喫茶』に決定〜!」
教室中が「きゃー!!」と黄色い声に沸く。
莉子は教室の空気に飲まれつつ、内心で呟く。
(メイド喫茶……? なんだか知らねぇけど、適当にサボれば大丈夫だろ……)
担任はニコニコしながら、莉子の方を見つめた。
「で、メイド長はもちろん……天峰莉子ちゃんね♡ もうビジュアル完璧だし、みんなの人気者だし!」
「は!?」
莉子が顔面蒼白になり、クラスメイトたちの視線が集中した。
「賛成〜!」
「莉子ちゃんがメイド長なの最高〜!!」
「絶対かわいすぎて推せる!!」
生徒たちの歓声と騒ぎ声が教室に響く。
莉子は机に突っ伏しながら、頭を掻きむしった。
(……文化祭でメイド服……。しかもメイド長ってことは逃げられないじゃん……! つーか俺がメイド姿で「おかえりなさいませ、ご主人様♡」って言うのかよ!!)
莉子はガバッと顔を上げると、一人の顔を思い浮かべた。
(待てよ……。璃々花さんのことだ。何かと理由をつけてメイド喫茶に来るに決まってる。それだけじゃない。何かこの機に合わせて仕掛けてくるかも……!)
すると、後ろから誰かにポンと肩を叩かれる。
振り返ると……璃々花が笑みを浮かべていた。
「文化祭の実行委員長として、2年A組の様子を見に来たんだけど……」
璃々花が口角を上げながら、小声で囁く。
「メイド姿の莉子ちゃん……楽しみにしてるね♡
……今度は、絶対に逃がさないから」
文化祭まであと17日。
凛太朗にとって、最大級の地獄イベントが始まろうとしていた。
2:進む準備
それからというもの、放課後には文化祭に向けた準備が各教室で行われ、慌ただしく毎日が過ぎていく。
莉子はクラスの飾り付けの準備やメイド服の調整など、忙しさに目を回していた。
(やることが……やることが多い……!!)
出来上がったメイド服を眺めながら、莉子はかつての中学時代の文化祭を思い出していた。
【回想:凛太朗——中学1年、文化祭当日】
「うわあああ!超かわいい!」
「写真撮らせて!」
「メイドさん、こっち向いて〜!」
メイド服を着た凛太朗の周りには、常に人だかりができていた。
来場者数は過去最高を記録。クラスの出し物は大成功だった。
でも——
「おい凛太朗、お前ズルいだろ!」
「女装して人気者とか、男子の裏切り者じゃん」
男子生徒たちからは、妬みの声が聞こえてきた。
女子生徒たちは、凛太朗を「かわいい女の子」としてしか見なかった。
(みんな、自分のことしか考えてない。誰も……俺自身を見てくれない)
莉子は過去の自分を思い出して苦笑いしながら、独白する。
(高校生になっても結局メイド服着るのかよ……。成長してないな、俺……)
そう自嘲する莉子の後ろから、紗耶がガバッと抱きついてきた。
「莉子ちゃーん! なに暗い顔してるの? 莉子ちゃんのメイド服、楽しみにしてるんだから!」
莉子は顔を赤らめながらも、紗耶の明るさに少し救われた気分になった。
「あはは……紗耶ちゃん、私こういうの似合わないから……」
「えー!? 莉子ちゃん、水着も浴衣もバッチリ着こなしてたじゃん! もっと自分に自信持っていいよ! 私が保証するから!!」
紗耶の笑顔に、自然と莉子の顔もほころぶ。
「ふふ、ありがとう。じゃあ楽しみにしててね」
(ひとりぼっちだった、あの頃とは違う……。彩耶ちゃんも、真理さんも、璃々花さんだっている)
莉子の心の中に温かい光が灯り、勇気が湧いてきていた。
3:トイレでの攻防
【聖百合園女学院・女子トイレ(2階西側) 放課後・準備期間中】
そんな日々の中にも、嫌な時間はある。
個室のドアをカチャリと閉めた瞬間。
莉子は小さなため息をついた。
(……来た。俺にとっての“毎日デッド・オア・アライブ”。女子トイレ個室・正味90秒間の極限戦……)
莉子はゆっくりと便座に座る。立ったままでは絶対にバレる。金田一少年だって気づいてたし。
スカートをたくし上げ、慎重に……慎重に……
(音……立てるな……。隣の個室に誰かいたら終わる……)
しかも最近、璃々花が“偶然”を装って同じタイミングで入ってくる率が80%……。
(絶対に俺の排泄リズムまで把握してる……)
最小限の音で済ませる。
流すタイミングも、周りの気配を察知して人のいない時を狙う。
そして最後に……
(……生理中だからナプキンつけてる設定、忘れるな……)
ゴミ箱にちゃんと捨ててあるナプキン——自分で用意した偽物を確認する。
個室を出て、手を洗いながら鏡を見る。
完璧な美少女が、そこにいる。
(……俺、いつまでこんな綱渡り続けてんだよ……)
その瞬間。
コンコン。
ドアの外からノックの音。
璃々花の甘い、狂気を孕んだ声がする。
「莉子ちゃん? いるよね?♡」
莉子の心臓が停止した。ガチで。
ドア越しに璃々花の声が聞こえる。
「生理用品、貸してあげようか? ……私、莉子ちゃんのサイズ、ちゃんと知ってるから♡」
莉子の顔がみるみる青ざめていく。
(マジでヤバい!! サイズって何!? ナプキンの!? 俺の!? どっち!? ていうかいつからそこにいたんだよ!!)
ドアの向こうに、氷雪女王の影がゆらゆら。
凛太朗、今日も命懸けの攻防戦の予感……!
4:鬼ごっこ
ガチャリ。
凛太朗(莉子)は意を決してドアを開ける。
「……もう…… 璃々花さん……冗談きついですよ……」
作り笑いを精一杯浮かべて顔を出す。
そこに立っていたのは——
瞳の奥に完全に狂気の炎を灯した璃々花。
右手には黒のパッケージがぎらりと光るコンドームの箱(XLサイズ・12個入り)を握りしめ、左手で「いつでも使えるように」とばかりにローションの小瓶をカチャカチャ振っている。
璃々花は満面の笑みを浮かべ、甘く囁いた。
「莉子ちゃん……♡
いつでも私はOKだからね♡
今日は文化祭の準備で遅くなるでしょ?
だから……放課後、空いてる教室で……ね?」
パッケージをぱんぱんと叩きながら、一歩、また一歩と近づいてくる。
凛太朗は脳内で絶叫した。
(怖えぇぇぇぇぇぇぇ!!! XLって何!? 俺のサイズ知ってるってどういうこと!? ローションまで持参って完全に本気じゃねぇか!! もう既に猟犬モードじゃん!!)
璃々花はドス黒い想いを込めた笑顔で呟く。
「逃げないでね? 逃げたら……今夜、寮の部屋に直接行くから♡」
「ひぃぃぃぃぃ!!」
凛太朗ダッシュ!!!
廊下を全力疾走で逃げる。
カツカツカツカツ!!
後ろから靴の音が追いかけてくる。
「待って〜! 莉子ちゃ〜ん♡ 今日は絶対逃がさないって決めたんだからぁ〜!!」
聖百合園女学院の廊下で、美少女と美少女(+コンドーム)の、地獄の鬼ごっこが始まった!!!
5:意外な助け
凛太朗は走りながら脳内で絶叫する。
(誰か助けてくれぇぇぇ!! 俺の貞操がぁぁぁぁ!!!)
その時——
「あ、痛っ!」
璃々花が急に倒れ込み、足首をさすり始めた。
凛太朗はそれを見て、慌てて璃々花の元に駆け寄る。
「大丈夫!? 璃々花さん、足くじいたなら保健室まで連れていくから……」
璃々花に手を貸そうと腕を伸ばす——と、璃々花の手が凛太朗の腕をガシッと掴んだ。
「つかまえた♡」
罠だ——と気づいた瞬間、凛太朗の腰が抜けた。
(やられる……!)
璃々花が興奮を抑えきれない熱っぽい表情で、凛太朗の耳元で囁く。
「保健室に連れてってくれるんでしょ? あそこなら今は誰もいないし……♡」
だがその時、廊下の後方から別の靴音が近づいてきた。
「会長……。随分と、ハメを外しておられるようですね?」
そこにいたのは、生徒会副会長の真理。メガネをクイっと持ち上げながら、鋭い眼光で璃々花と凛太朗を睨む。
「我が校の風紀を乱す者は何人たりとも許さない……。それがかつてのあなただったはずです、会長」
璃々花の顔から、みるみる表情が消え、氷雪女王としての冷たい仮面が貼り付けられた。
「ええ、そうね……。ちょっとやり過ぎちゃったみたい。ごめんなさいね、天峰さん」
璃々花はスッと立ち上がると、コンドームとローションを素早くカバンにしまい、何事もなかったように廊下を歩き始めた。
そして一度だけ凛太朗の方を振り向き、名残惜しそうに見つめると、再び前を向いて歩き出す。
真理は黙ったまま、凛太朗をチラッと見ると、何か言いたそうな顔をしたが、声をかけずに去って行った。
(会長のあの態度、間違いない。天峰さんの正体は……)
凛太朗は一人廊下に残されたまま、呆然としていた。
(助かった……のか?)
文化祭まであと数日。
修羅場はもう最高潮に達している……!!
6:夢の中
【聖百合園女学院・女子寮 3階 308号室 23:12】
カーテンの隙間から、月明かりが細く差し込む。
凛太朗はベッドに横たわり、薄いキャミソール+ショートパンツというラフな格好。
念のため胸パッドは外さず、万が一の事態にも備えている。
(ハァ……今日も璃々花さんに追い回されて、まいったよ……。夢の中くらい、ゆっくり寝かせてくれ……)
まぶたが重くなる……
意識がふわふわと落ちていく……
──夢の中。
真っ暗な廊下。
遠くからヒールの音がカツ……カツ……と近づいてくる。
暗闇から、ゆっくりと現れる璃々花。
制服ではなく、真っ白なネグリジェ姿。
月のような白い肌が闇に浮かび、瞳だけが妖しく光っている。
夢の中の璃々花が囁く。
「逃げても無駄だよ、凛太朗……。私はもう、あなたの匂いを覚えちゃったから……」
凛太朗は夢の中でも後ずさりして呟く。
「おいおい……夢の中でも追いかけてくるのかよ……。勘弁してくれって……」
近づく。
近づく。
もう逃げ場がない。
璃々花の手が、凛太朗の頬に触れようとした瞬間。
ハッ!
凛太朗が目を見開いて跳ね起きる。
「……!?」
心臓がバクバク鳴ってる。
汗がびっしょり。
凛太朗は息を荒げながら呟く。
「……夢か……よかった……」
と、ふと視線を窓の方へ。
カーテンの隙間。
そこに、月明かりに浮かぶ、真っ白なネグリジェ姿の璃々花が、じっとこちらを見つめて立っていた。
「………………え?」
ガチャリ。
鍵はかかってるはずなのに、窓がゆっくりと開く。
璃々花が微笑みながら、部屋に滑り込む。
「凛太朗……♡ やっと二人きりだね」
凛太朗は完全に硬直しながら口をあんぐり。
「ちょ……待て……!?
窓から!? 3階なのに!?
どうやって登ってきたんだよ!!
『SASUKE』出れるわ!!」
璃々花は少し荒い息を整えながら、ベッドに近づき指を自分の唇に当てる。
「しーっ……声出したら、他の子たち起きちゃうよ? ……今日は、もう逃げられないから。ちゃんと私に向き合って? 凛太朗……」
月明かりが、完全にスイッチの入った氷雪女王を妖しく照らす。
凛太朗はごくりと生唾を飲み込む。
(マジでヤバい……。今度こそ、完全に逃げ場ゼロ……!)
ベッドの端に、ゆっくりと腰掛ける璃々花。
童貞凛太朗、今夜こそ決戦の刻!!
7:月の下で
凛太朗は小さく笑って、両手を上げた。
「……まいったよ。降参だ。もう好きにしてくれ」
璃々花の顔が、まるで花が咲いたようにパァッと明るくなる。
璃々花が震える声で囁く。
「凛太朗……♡」
彼女が顔を近づけた瞬間、凛太朗は優しく囁いた。
「ちょっと待って。今日は……俺が、君を優しく感じさせてあげるから」
指先でそっと頬を撫で、ハンカチを取り出すと、璃々花の目に優しく巻く。
甘い声で囁く凛太朗。
「ほら……目、閉じてて」
次に、タオルで両手を後ろ手にゆるく縛る。
璃々花は息を荒げながら、期待で震えている。
「凛太朗……今から……どんなこと、してくれるの……?♡」
部屋が、しん……と静寂に包まれる。
……10秒
……20秒
……30秒
璃々花は少し不安そうに呟く
「……凛太朗……?」
必死に首を振って、目隠しをずらす。
そこに、凛太朗の姿はどこにもない。
ベッドの横に置かれたメモだけが、月明かりに白く浮かんでいた。
──メモの内容──
『ごめん、俺まだ心の準備が……
でも、絶対次は逃げないから
──約束する
凛太朗より』
窓は開け放たれたまま、カーテンが夜風にゆらゆら揺れている。
璃々花は目隠しとタオルを外しながら、呆然と呟く。
「……あ……。また……逃げられちゃった……」
でも、その頬は怒りじゃなくて、どこか嬉しそうに紅潮していた。
璃々花はメモを胸に抱きしめて、小さく笑う。
「……次は、本当に逃がさないからね……凛太朗……♡」
月明かりが、逃げ続ける童貞と、待ち続ける氷雪女王の影を、静かに見守っていた。
そして──文化祭当日。
メイド服姿の凛太朗を、完全に狙いすました璃々花が待ち構えている……!
凛太朗にとって最後の戦場が、いよいよ開幕する。(つづく)
おまけ【架空インタビュー:飛鳥凛太朗(天峰莉子)独占告白】
(このインタビューはフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません)
──取材日:文化祭前夜 場所:女子寮屋上
Q. 正直、今の心境を一言で言うと?
(屋上のフェンスにもたれかかり、ため息)
「……完全に詰んでる」
Q. 詰んでるって、どういう意味で?
(苦笑いしながら)
「俺、もう逃げ場ないってわかってるから。この前だって、女子寮の自分の部屋から逃げたけど……。あれ、完全に“次に捕まったら終わり”のフラグ立ててるだけじゃん?」
Q. 氷川さんのこと、どう思ってるんですか?
(少し俯いて、声が小さくなる)
「……嫌いじゃない。むしろ、めちゃくちゃ……ドキドキする。キスされた時の鼓動とか、あの耳のほくろで崩れる顔とか、全部頭に焼き付いて離れない」
Q. じゃあなんで毎回逃げてるんですか?
(自嘲気味に笑う)
「ビビってるだけだよ。俺、顔だけは最強だけど、中身はただの童貞だし。あの人、本気で俺のこと……全部欲しいって顔してるから。捕まったら、もう戻れないってわかってる」
Q. 捕まりたくないんですか?
(一瞬、言葉を詰まらせる)
「……捕まりたくない、ってわけじゃ……。いや、わかんねぇ。ただ、俺が“飛鳥凛太朗”として、ちゃんと向き合わないと、あの人に失礼な気がするんだよ」
Q. 明日の文化祭、メイド服ですよね?
(顔を覆って呻く)
「うわぁぁぁ……考えるだけで死にそう。メイド長だし、絶対璃々花さん来るし、しかも俺、“おかえりなさいませ、ご主人様♡”って言わなきゃいけないし……。あの人、あの場で俺を……公開処刑する気満々だろ……」
Q. 最後に、本音を一つだけ。
(夜空を見上げて、ぽつり)
「……俺、そろそろ逃げるのやめてもいいかなって、ちょっとだけ思ってる」
(風が吹いて、髪が揺れる)
「だって……逃げても逃げても、結局あの人しか見えなくなってるし」
屋上のフェンスに、月明かりだけが静かに降り注いでいた。
──インタビュー終了──
明日の文化祭で、凛太朗はついに“答え”を出すのか……?
【架空インタビュー:氷川璃々花 独占告白】
──取材日:文化祭前夜 場所:生徒会長室
インタビュアー(小声)
「……こんな時間に呼び出してごめんなさい」
璃々花が窓辺に立って月を見上げたまま、静かに微笑む。
「いいの。……どうせ、今夜は眠れないから」
Q. 正直、今の心境は?
(小さく笑って)
「もう、胸が張り裂けそう。嬉しくて、苦しくて、怖くて……全部ごちゃ混ぜ」
Q. 凛太朗くんのこと、どう思ってるんですか?
(頬を染めて、でも真っ直ぐに)
「好きすぎて、狂いそう。……初めて会った瞬間から、全部バレてたのに、逃げないで、私の仮面を剥がそうとしてくれた。あんな人、初めてだった」
Q. 毎回逃げられてるけど、どうして追いかけるんですか?
(自嘲気味に)
「だって……本当に逃げられたら、またあの孤独な氷の部屋に戻っちゃうから。凛太朗がいなくなったら、私はまた……誰も触れられない“氷雪女王”に戻るしかない」
(指先で窓ガラスに小さなハートを描く)
「だから、捕まえたい。……全部、欲しい。凛太朗の声も、涙も、弱さも、強がりも……全部」
Q. 明日の文化祭、メイド姿の莉子ちゃんが見られるんですよね?
(急に瞳が妖しく光る)
「……楽しみで、死にそう。メイド服の凛太朗が『ご主人様』って呼ぶ瞬間を、私はもう何度も頭の中でリピートしてる」
(小声で)
「……絶対に、他の子に見せたくない。あれは、私だけのものだから」
Q. 最後に、本音を一つだけ。
(月に向かって、震える声で)
「……怖いの。凛太朗が本気で逃げなくなった時……私が、本当の自分を全部見せたとしたら、嫌われないかって」
(すぐに微笑む)
「でも、もういい。明日こそ、全部さらけ出して……凛太朗を、私のものにする」
(振り返って、インタビュアーに微笑みかける)
「だから……明日は、絶対に見に来てね? ……私が、初めて“氷”を溶かす瞬間」
窓の外で、月が静かに雲に隠れた。
──インタビュー終了──
文化祭当日。
氷雪女王は、もう仮面を外す覚悟を決めた。
凛太朗を逃がさない。
そして自分自身を、もう隠さない。




