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女子校に潜入して身バレしたら、生徒会長に惚れられた件。  作者: あじ


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13/14

第13話:School Festival

1:近づく文化祭


【聖百合園女学院・2年A組教室 13:02】


夏休みが終わり、新学期が始まって一週間が経った。


窓際の席で天峰莉子(飛鳥凛太朗)は頬杖をついて、校庭の銀杏並木をぼんやり眺めてた。


頭の中では夏の間の海や花火大会、東京での璃々花とのデートなど、この半年ほどの出来事が浮かんでは消えていった。


(……そういえば俺、なんで璃々花さんをあんなに必死で拒絶してるんだっけ? 別に嫌いなわけじゃないのに……)


脳裏に浮かぶのは、璃々花の様々な積極的アプローチの数々に、顔を真っ赤にして逃げ回る自身の姿だった。


(むしろ、キスされた時のドキドキとか、あの耳のほくろで崩れる顔とか……。全部、頭から離れねぇし……)


指先で無意識に唇をなぞる。


(……俺、ただビビってるだけじゃねぇか)


その瞬間。


ガラッ!


教室のドアが開いて、担任の声が響いた。


「はいはい〜、みんな聞いてる〜? それじゃあ、文化祭に向けて準備始めるわよ〜!」


担任の女性教師が、笑顔でホームルームを始めた。


「今年の2年A組の出し物は……『メイド喫茶』に決定〜!」


教室中が「きゃー!!」と黄色い声に沸く。


莉子は教室の空気に飲まれつつ、内心で呟く。


(メイド喫茶……? なんだか知らねぇけど、適当にサボれば大丈夫だろ……)


担任はニコニコしながら、莉子の方を見つめた。


「で、メイド長はもちろん……天峰莉子ちゃんね♡ もうビジュアル完璧だし、みんなの人気者だし!」


「は!?」


莉子が顔面蒼白になり、クラスメイトたちの視線が集中した。


「賛成〜!」


「莉子ちゃんがメイド長なの最高〜!!」


「絶対かわいすぎて推せる!!」


生徒たちの歓声と騒ぎ声が教室に響く。


莉子は机に突っ伏しながら、頭を掻きむしった。


(……文化祭でメイド服……。しかもメイド長ってことは逃げられないじゃん……! つーか俺がメイド姿で「おかえりなさいませ、ご主人様♡」って言うのかよ!!)


莉子はガバッと顔を上げると、一人の顔を思い浮かべた。


(待てよ……。璃々花さんのことだ。何かと理由をつけてメイド喫茶に来るに決まってる。それだけじゃない。何かこの機に合わせて仕掛けてくるかも……!)


すると、後ろから誰かにポンと肩を叩かれる。


振り返ると……氷川璃々花が笑みを浮かべていた。


「文化祭の実行委員長として、2年A組の様子を見に来たんだけど……」


璃々花が口角を上げながら、小声で囁く。


「メイド姿の莉子ちゃん……楽しみにしてるね♡

 ……今度は、絶対に逃がさないから」


文化祭まであと17日。


凛太朗にとって、最大級の地獄イベントが始まろうとしていた。




2:進む準備


それからというもの、放課後には文化祭に向けた準備が各教室で行われ、慌ただしく毎日が過ぎていく。


莉子はクラスの飾り付けの準備やメイド服の調整など、忙しさに目を回していた。


(やることが……やることが多い……!!)


出来上がったメイド服を眺めながら、莉子はかつての中学時代の文化祭を思い出していた。




【回想:凛太朗——中学1年、文化祭当日】


「うわあああ!超かわいい!」


「写真撮らせて!」


「メイドさん、こっち向いて〜!」


メイド服を着た凛太朗の周りには、常に人だかりができていた。


来場者数は過去最高を記録。クラスの出し物は大成功だった。


でも——


「おい凛太朗、お前ズルいだろ!」


「女装して人気者とか、男子の裏切り者じゃん」


男子生徒たちからは、妬みの声が聞こえてきた。


女子生徒たちは、凛太朗を「かわいい女の子」としてしか見なかった。


(みんな、自分のことしか考えてない。誰も……俺自身を見てくれない)




莉子は過去の自分を思い出して苦笑いしながら、独白する。


(高校生になっても結局メイド服着るのかよ……。成長してないな、俺……)


そう自嘲する莉子の後ろから、白鳥紗耶がガバッと抱きついてきた。


「莉子ちゃーん! なに暗い顔してるの? 莉子ちゃんのメイド服、楽しみにしてるんだから!」


莉子は顔を赤らめながらも、紗耶の明るさに少し救われた気分になった。


「あはは……紗耶ちゃん、私こういうの似合わないから……」


「えー!? 莉子ちゃん、水着も浴衣もバッチリ着こなしてたじゃん! もっと自分に自信持っていいよ! 私が保証するから!!」


紗耶の笑顔に、自然と莉子の顔もほころぶ。


「ふふ、ありがとう。じゃあ楽しみにしててね」


(ひとりぼっちだった、あの頃とは違う……。彩耶ちゃんも、真理さんも、璃々花さんだっている)


莉子の心の中に温かい光が灯り、勇気が湧いてきていた。




3:トイレでの攻防


【聖百合園女学院・女子トイレ(2階西側) 放課後・準備期間中】


そんな日々の中にも、嫌な時間はある。


個室のドアをカチャリと閉めた瞬間。


莉子は小さなため息をついた。


(……来た。俺にとっての“毎日デッド・オア・アライブ”。女子トイレ個室・正味90秒間の極限戦……)


莉子はゆっくりと便座に座る。立ったままでは絶対にバレる。金田一少年だって気づいてたし。


スカートをたくし上げ、慎重に……慎重に……


(音……立てるな……。隣の個室に誰かいたら終わる……)


しかも最近、璃々花が“偶然”を装って同じタイミングで入ってくる率が80%……。


(絶対に俺の排泄リズムまで把握してる……)


最小限の音で済ませる。


流すタイミングも、周りの気配を察知して人のいない時を狙う。


そして最後に……


(……生理中だからナプキンつけてる設定、忘れるな……)


ゴミ箱にちゃんと捨ててあるナプキン——自分で用意した偽物を確認する。


個室を出て、手を洗いながら鏡を見る。


完璧な美少女が、そこにいる。


(……俺、いつまでこんな綱渡り続けてんだよ……)


その瞬間。


コンコン。


ドアの外からノックの音。


璃々花の甘い、狂気を孕んだ声がする。


「莉子ちゃん? いるよね?♡」


莉子の心臓が停止した。ガチで。


ドア越しに璃々花の声が聞こえる。


「生理用品、貸してあげようか? ……私、莉子ちゃんのサイズ、ちゃんと知ってるから♡」


莉子の顔がみるみる青ざめていく。


(マジでヤバい!! サイズって何!? ナプキンの!? 俺の!? どっち!? ていうかいつからそこにいたんだよ!!)


ドアの向こうに、氷雪女王の影がゆらゆら。


凛太朗、今日も命懸けの攻防戦の予感……!




4:鬼ごっこ


ガチャリ。


凛太朗(莉子)は意を決してドアを開ける。


「……もう…… 璃々花さん……冗談きついですよ……」


作り笑いを精一杯浮かべて顔を出す。


そこに立っていたのは——


瞳の奥に完全に狂気の炎を灯した璃々花。


右手には黒のパッケージがぎらりと光るコンドームの箱(XLサイズ・12個入り)を握りしめ、左手で「いつでも使えるように」とばかりにローションの小瓶をカチャカチャ振っている。


璃々花は満面の笑みを浮かべ、甘く囁いた。


「莉子ちゃん……♡ 


 いつでも私はOKだからね♡


 今日は文化祭の準備で遅くなるでしょ?


 だから……放課後、空いてる教室で……ね?」


パッケージをぱんぱんと叩きながら、一歩、また一歩と近づいてくる。


凛太朗は脳内で絶叫した。


(怖えぇぇぇぇぇぇぇ!!! XLって何!? 俺のサイズ知ってるってどういうこと!? ローションまで持参って完全に本気じゃねぇか!! もう既に猟犬モードじゃん!!)


璃々花はドス黒い想いを込めた笑顔で呟く。


「逃げないでね? 逃げたら……今夜、寮の部屋に直接行くから♡」


「ひぃぃぃぃぃ!!」


凛太朗ダッシュ!!!


廊下を全力疾走で逃げる。


カツカツカツカツ!!


後ろから靴の音が追いかけてくる。


「待って〜! 莉子ちゃ〜ん♡ 今日は絶対逃がさないって決めたんだからぁ〜!!」


聖百合園女学院の廊下で、美少女と美少女(+コンドーム)の、地獄の鬼ごっこが始まった!!!




5:意外な助け


凛太朗は走りながら脳内で絶叫する。


(誰か助けてくれぇぇぇ!! 俺の貞操がぁぁぁぁ!!!)


その時——


「あ、痛っ!」


璃々花が急に倒れ込み、足首をさすり始めた。


凛太朗はそれを見て、慌てて璃々花の元に駆け寄る。


「大丈夫!? 璃々花さん、足くじいたなら保健室まで連れていくから……」


璃々花に手を貸そうと腕を伸ばす——と、璃々花の手が凛太朗の腕をガシッと掴んだ。


「つかまえた♡」


罠だ——と気づいた瞬間、凛太朗の腰が抜けた。


(やられる……!)


璃々花が興奮を抑えきれない熱っぽい表情で、凛太朗の耳元で囁く。


「保健室に連れてってくれるんでしょ? あそこなら今は誰もいないし……♡」


だがその時、廊下の後方から別の靴音が近づいてきた。


「会長……。随分と、ハメを外しておられるようですね?」


そこにいたのは、生徒会副会長の高瀬真理。メガネをクイっと持ち上げながら、鋭い眼光で璃々花と凛太朗を睨む。


「我が校の風紀を乱す者は何人たりとも許さない……。それがかつてのあなただったはずです、会長」


璃々花の顔から、みるみる表情が消え、氷雪女王としての冷たい仮面が貼り付けられた。


「ええ、そうね……。ちょっとやり過ぎちゃったみたい。ごめんなさいね、天峰さん」


璃々花はスッと立ち上がると、コンドームとローションを素早くカバンにしまい、何事もなかったように廊下を歩き始めた。


そして一度だけ凛太朗の方を振り向き、名残惜しそうに見つめると、再び前を向いて歩き出す。


真理は黙ったまま、凛太朗をチラッと見ると、何か言いたそうな顔をしたが、声をかけずに去って行った。


(会長のあの態度、間違いない。天峰さんの正体は……)


凛太朗は一人廊下に残されたまま、呆然としていた。


(助かった……のか?)


文化祭まであと数日。


修羅場はもう最高潮に達している……!!




6:夢の中


【聖百合園女学院・女子寮 3階 308号室 23:12】


カーテンの隙間から、月明かりが細く差し込む。


凛太朗はベッドに横たわり、薄いキャミソール+ショートパンツというラフな格好。


念のため胸パッドは外さず、万が一の事態にも備えている。


(ハァ……今日も璃々花さんに追い回されて、まいったよ……。夢の中くらい、ゆっくり寝かせてくれ……)


まぶたが重くなる……


意識がふわふわと落ちていく……


──夢の中。


真っ暗な廊下。


遠くからヒールの音がカツ……カツ……と近づいてくる。


暗闇から、ゆっくりと現れる璃々花。


制服ではなく、真っ白なネグリジェ姿。


月のような白い肌が闇に浮かび、瞳だけが妖しく光っている。


夢の中の璃々花が囁く。


「逃げても無駄だよ、凛太朗……。私はもう、あなたの匂いを覚えちゃったから……」


凛太朗は夢の中でも後ずさりして呟く。


「おいおい……夢の中でも追いかけてくるのかよ……。勘弁してくれって……」


近づく。


近づく。


もう逃げ場がない。


璃々花の手が、凛太朗の頬に触れようとした瞬間。


ハッ!


凛太朗が目を見開いて跳ね起きる。


「……!?」


心臓がバクバク鳴ってる。


汗がびっしょり。


凛太朗は息を荒げながら呟く。


「……夢か……よかった……」


と、ふと視線を窓の方へ。


カーテンの隙間。


そこに、月明かりに浮かぶ、真っ白なネグリジェ姿の璃々花が、じっとこちらを見つめて立っていた。


「………………え?」


ガチャリ。


鍵はかかってるはずなのに、窓がゆっくりと開く。


璃々花が微笑みながら、部屋に滑り込む。


「凛太朗……♡ やっと二人きりだね」


凛太朗は完全に硬直しながら口をあんぐり。


「ちょ……待て……!?


 窓から!? 3階なのに!?


 どうやって登ってきたんだよ!!


 『SASUKE』出れるわ!!」


璃々花は少し荒い息を整えながら、ベッドに近づき指を自分の唇に当てる。


「しーっ……声出したら、他の子たち起きちゃうよ? ……今日は、もう逃げられないから。ちゃんと私に向き合って? 凛太朗……」


月明かりが、完全にスイッチの入った氷雪女王を妖しく照らす。


凛太朗はごくりと生唾を飲み込む。


(マジでヤバい……。今度こそ、完全に逃げ場ゼロ……!)


ベッドの端に、ゆっくりと腰掛ける璃々花。


童貞凛太朗、今夜こそ決戦の刻!!




7:月の下で


凛太朗は小さく笑って、両手を上げた。


「……まいったよ。降参だ。もう好きにしてくれ」


璃々花の顔が、まるで花が咲いたようにパァッと明るくなる。


璃々花が震える声で囁く。


「凛太朗……♡」


彼女が顔を近づけた瞬間、凛太朗は優しく囁いた。


「ちょっと待って。今日は……俺が、君を優しく感じさせてあげるから」


指先でそっと頬を撫で、ハンカチを取り出すと、璃々花の目に優しく巻く。


甘い声で囁く凛太朗。


「ほら……目、閉じてて」


次に、タオルで両手を後ろ手にゆるく縛る。


璃々花は息を荒げながら、期待で震えている。


「凛太朗……今から……どんなこと、してくれるの……?♡」


部屋が、しん……と静寂に包まれる。


……10秒


……20秒


……30秒


璃々花は少し不安そうに呟く


「……凛太朗……?」


必死に首を振って、目隠しをずらす。


そこに、凛太朗の姿はどこにもない。


ベッドの横に置かれたメモだけが、月明かりに白く浮かんでいた。


──メモの内容──


『ごめん、俺まだ心の準備が……


 でも、絶対次は逃げないから


 ──約束する


  凛太朗より』


窓は開け放たれたまま、カーテンが夜風にゆらゆら揺れている。


璃々花は目隠しとタオルを外しながら、呆然と呟く。


「……あ……。また……逃げられちゃった……」


でも、その頬は怒りじゃなくて、どこか嬉しそうに紅潮していた。


璃々花はメモを胸に抱きしめて、小さく笑う。


「……次は、本当に逃がさないからね……凛太朗……♡」


月明かりが、逃げ続ける童貞と、待ち続ける氷雪女王の影を、静かに見守っていた。




そして──文化祭当日。


メイド服姿の凛太朗を、完全に狙いすました璃々花が待ち構えている……!


凛太朗にとって最後の戦場が、いよいよ開幕する。(つづく)






おまけ【架空インタビュー:飛鳥凛太朗(天峰莉子)独占告白】


(このインタビューはフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません)


──取材日:文化祭前夜 場所:女子寮屋上


Q. 正直、今の心境を一言で言うと?


(屋上のフェンスにもたれかかり、ため息)


「……完全に詰んでる」


Q. 詰んでるって、どういう意味で?


(苦笑いしながら)


「俺、もう逃げ場ないってわかってるから。この前だって、女子寮の自分の部屋から逃げたけど……。あれ、完全に“次に捕まったら終わり”のフラグ立ててるだけじゃん?」


Q. 氷川さんのこと、どう思ってるんですか?


(少し俯いて、声が小さくなる)


「……嫌いじゃない。むしろ、めちゃくちゃ……ドキドキする。キスされた時の鼓動とか、あの耳のほくろで崩れる顔とか、全部頭に焼き付いて離れない」


Q. じゃあなんで毎回逃げてるんですか?


(自嘲気味に笑う)


「ビビってるだけだよ。俺、顔だけは最強だけど、中身はただの童貞だし。あの人、本気で俺のこと……全部欲しいって顔してるから。捕まったら、もう戻れないってわかってる」


Q. 捕まりたくないんですか?


(一瞬、言葉を詰まらせる)


「……捕まりたくない、ってわけじゃ……。いや、わかんねぇ。ただ、俺が“飛鳥凛太朗”として、ちゃんと向き合わないと、あの人に失礼な気がするんだよ」


Q. 明日の文化祭、メイド服ですよね?


(顔を覆って呻く)


「うわぁぁぁ……考えるだけで死にそう。メイド長だし、絶対璃々花さん来るし、しかも俺、“おかえりなさいませ、ご主人様♡”って言わなきゃいけないし……。あの人、あの場で俺を……公開処刑する気満々だろ……」


Q. 最後に、本音を一つだけ。


(夜空を見上げて、ぽつり)


「……俺、そろそろ逃げるのやめてもいいかなって、ちょっとだけ思ってる」


(風が吹いて、髪が揺れる)


「だって……逃げても逃げても、結局あの人しか見えなくなってるし」


屋上のフェンスに、月明かりだけが静かに降り注いでいた。


──インタビュー終了──


明日の文化祭で、凛太朗はついに“答え”を出すのか……?






【架空インタビュー:氷川璃々花 独占告白】


──取材日:文化祭前夜 場所:生徒会長室


インタビュアー(小声)


「……こんな時間に呼び出してごめんなさい」


璃々花が窓辺に立って月を見上げたまま、静かに微笑む。


「いいの。……どうせ、今夜は眠れないから」


Q. 正直、今の心境は?


(小さく笑って)


「もう、胸が張り裂けそう。嬉しくて、苦しくて、怖くて……全部ごちゃ混ぜ」


Q. 凛太朗くんのこと、どう思ってるんですか?


(頬を染めて、でも真っ直ぐに)


「好きすぎて、狂いそう。……初めて会った瞬間から、全部バレてたのに、逃げないで、私の仮面を剥がそうとしてくれた。あんな人、初めてだった」


Q. 毎回逃げられてるけど、どうして追いかけるんですか?


(自嘲気味に)


「だって……本当に逃げられたら、またあの孤独な氷の部屋に戻っちゃうから。凛太朗がいなくなったら、私はまた……誰も触れられない“氷雪女王”に戻るしかない」


(指先で窓ガラスに小さなハートを描く)


「だから、捕まえたい。……全部、欲しい。凛太朗の声も、涙も、弱さも、強がりも……全部」


Q. 明日の文化祭、メイド姿の莉子ちゃんが見られるんですよね?


(急に瞳が妖しく光る)


「……楽しみで、死にそう。メイド服の凛太朗が『ご主人様』って呼ぶ瞬間を、私はもう何度も頭の中でリピートしてる」


(小声で)


「……絶対に、他の子に見せたくない。あれは、私だけのものだから」


Q. 最後に、本音を一つだけ。


(月に向かって、震える声で)


「……怖いの。凛太朗が本気で逃げなくなった時……私が、本当の自分を全部見せたとしたら、嫌われないかって」


(すぐに微笑む)


「でも、もういい。明日こそ、全部さらけ出して……凛太朗を、私のものにする」


(振り返って、インタビュアーに微笑みかける)


「だから……明日は、絶対に見に来てね? ……私が、初めて“氷”を溶かす瞬間」


窓の外で、月が静かに雲に隠れた。


──インタビュー終了──


文化祭当日。


氷雪女王は、もう仮面を外す覚悟を決めた。


凛太朗を逃がさない。


そして自分自身を、もう隠さない。

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