12
「ふぅ……」
あたしどうしたんだろ。
元々自分の容姿に自信があって、彼氏なんて作りたいと思ったらすぐにできると思ってたし、両親の離婚も見てたから恋だの愛だのって話には興味がなかった。
なのに昨日、自分でもわからないんだけどいてもたってもいられない気持ちになって鷹尾先輩に告白してた。
ありえない。本当に。
告白されるならともかく、あたしがするなんて……それこそ将来を考えた人に、というならわかるよ。でもあたしにとって鷹尾先輩は違う。
優しくて真面目で地味な先輩というだけ、恋愛の対象じゃない。
あーなんであんなこと言っちゃったんだろ……やだやだ、しかも振られるなんてありえない。
いや、違う。付き合うなんてことになったほうが大変だった。
そもそも告白したときの状況が頭の中でボーっとしててよく思い出せない。
告白して振られた。そのあとで現実逃避みたいになって――支離滅裂なことを思ってた気がする。
だあぁぁ……やだやだ!
鼻の下まで湯船につかって思いっきりブクブクする。ぶごごごご。
告白して振られた――ってよくあることなのに、すごく取り返しのつかないことをしてしまった気がした。あたし、告白するとしたら一生に一回って気持ちだったし、鷹尾先輩に告白するなんて想定外もいい話だったからね。
柴田くん、あっさりお断りしたけど告白しなきゃよかったって思われててもおかしくないよなぁ。
あっさり振られたあたしが思ってんだからさ……。
こうなったらロゼとシアン、二人とも美形で恋愛経験豊富って雰囲気あるし、ここまで簡単に人の気持ちが変わるのか聞いてみよっかな。
シアンは堅物っぽい気がするけど、あの容姿からして告白されることなんてほぼ日常でもおかしくない。
でもま、ロゼほど打ち解けてないシアンには聞きづらい話だよね。
ロゼはまぁ恋愛は自分をさらに美しくするとか思ってそうだし、というか恋愛経験あってのあの美しさかもしれないし。あるいは一番好きなのは自分で他人に興味がないタイプ……?
どっちにしてもロゼには話を聞いてもらいたいと思った。
うー、のぼせてきたし上がろっと。
クラクラしながら頭と体を洗ってお風呂を出て、身支度が終わったころにはごはんのいい匂いが漂ってきた。
やっぱみんなでごはん食べるのっていいなぁ。
ちなみに今日はあたしが食べたいってお願いした肉じゃがです。味が染みたほくほくの肉じゃががおいしい。肉から出汁的なものが出ててこんなにおいしい味なのかなぁ。作ったことがないからわからない。
あとは焼いたナスに玉ねぎとかが入ったサラダとかをポン酢で。野菜なんて家ではなかなか食べなかったし体が欲してるって感じでバクバクと箸を進める。っかー、ごはんに合いますねぇ。
と、食卓に乗っている物に一通り箸を付けて一息。
「あとでロゼの部屋に行っていい?」
「えぇ、もちろん……なにか話でもあるの?」
「うん。あと明日の予定なんだけどね、お昼食べてから駅前で買い物しない? 服とか下着とか生活用品とか」
「あらー、そういえば明日なのね。楽しみだわぁ」
「バスで行こうと思うんだけど。シアンはどう、なにか意見ある?」
「いえ……僕の意見といえば、ここまで主にしていただく必要はない――と、昨日までは思っていましたが。こうやって同じ食卓を囲ませていただいている次第、もはやなにも言えることはありません。明日の荷物持ちはお任せください」
「うむ、期待してる」
明日が楽しみだなー。
なんてったってシアンも一緒ということは、さっきと違った楽しさがあるに違いない。
シアンの下着も買うとしてあたしが選んじゃったりとか!?
いやー、ないな。自分で選んだパンツが見たい。ぐふふ。
いや待てよ、買い物はいいとして……二人が一緒に街を歩いていたら目立ち過ぎるのでは?
金髪の美男美女と一緒に歩いてるあたしも、クラスメイトに見つかったら話しかけられるかもしれない。
となると二人との関係を説明したりしなくちゃいけなくなったりとか、すごく面倒なことになるのは確実。まぁ、街の中でクラスの人と会ったことないし気にしすぎと言われればそうなんだけど……。
「ときに凜様」
「はい?」
「少し考えたのです……僕と彼女の髪色は外出先で目立ってしまうのでは、と」
おぉ。
私の心中を見透かしたかのように……。
「僕とロゼはある程度自由に髪の色を変えたりできるですが、どうでしょう。黒く変えたほうが変に人目を引くことがないかと」
「ロゼ、嫌じゃない?」
「べつにいいわよー、ゆっくりお買い物したいものね」
「よし、じゃあ二人とも髪の毛黒くしてくれる?」
「承知しました」
「ええ」
こうしてシアンとロゼは出会ったときのように不思議な力で髪の色を金から黒へと変えてくれたのだった。
……しかし。
黒髪に碧や紅の瞳ってなんか不思議な魅力があるね……。
元からきれいな二人だったけど髪の毛の色が変わっただけで雰囲気がかなり違う。ちょっと若くなった? っていうのかな。ロゼなんかはお姉さんって感じだったのがもうちょっと身近な存在になった感じ。年齢的にクラスメイトでもおかしくないみたいな。
シアンは……。
瞳の色が碧いおかげかちょっとキリッとして見えるためか、王子様からツンとした美青年になった。
黒髪って身近な色だからなんかドキドキしちゃうんだよなー、髪の毛が黒くなっただけで東洋っぽい美形に見えるからすごい。
おまけにあの体(ガラス越しに見た)だもん、見た目をちょっと変えても目立つことには変わらないな。顔立ちは変わってないから当然なんだけどね。
さーて明日は「女性物の下着選ぶときにシアンに見せ付けて恥ずかしがらせる作戦」と「お前のセンスを見せてみな。シアンが選ぶパンツはいかに」の二つが予定に入ってるし早めに寝よう。
「あーおいしかった、ごちそうさま!」
「はいお粗末様ー。じゃあリン、部屋で待ってるわね」
「うん、すぐ行くから」
昨日はロゼがお皿とか洗ってたけど、流しに食器を持って行くと今日はシアンが洗いものをしていた。
ほんと自分で洗わなくていいっていうのは助かるなぁ。でもあたしも少しは手伝わないとね……。
「お疲れ様ー、ありがとね」
「いえ。凜様も明日に備えて体を休めてください」
「うん。おやすみ」
「おやすみなさい」
歯を磨いて自分の部屋に戻り、ちょっとだけ身だしなみを整えたりしてからロゼの部屋のドアをノックした。




