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久々に、告白されるというイベントを終えてあとは買い物して帰るだけになった。いつの間にか雨も止んでたしよかったー。
ロゼも一緒に見て回りたいというので、商店街のひと気のない横道にちょっと入ってスイッチしてもらった。この間あたしはロゼを背に入ってきたほうを見張っていたけど、まぁこんな場所を覗く人はいないし、誰にも見られず人間サイズになったロゼと二人で出ることができるようだ。
初めてスイッチしたときは服を身に着ける必要があったけど、服を着たまま人形になったということでスイッチするときに着替えることはないらしい。毎回着替えてたら大変だもんねー。
しかし、である。
変身するところを見られなかったとしても、春っぽいVネックのニットにレースのスカートを身に纏った金髪の美女が歩いていたら誰もが目で追ってしまうのではないだろうか。
事実、大きくなったロゼに「うわースタイルいー」とか改めて思ってしまったし、こちらを見ていないその顔を見て色気あるなぁと思ったとき、ちょっと目がじわっと熱くなって鼻の奥がツーンとしてしまった。なんで涙が出たのかわからないけど……美しいものを見たから?
路地から出た瞬間、そんな美しいロゼを見た人のざわめきがさざ波のように広がっていき、道路はあたしとロゼを遠巻きに囲むように人であふれてしまっていた。
おーい、ここまでとは……予想外ですぜ?
もしや金髪美女のロゼと黒髪美少女(自称)のあたしがお互いに引き立てあってしまっているのでは?
などとちょっと図々しいことを考えていると。
「やはり美しいものはこちらの意思なんか無視して人目を惹いてしまうんだわ……でも嫌じゃないのよねー。これもまた、さらに私を美しくさせる要素となるのだから」
さっき出ちゃった涙を返せ。
さすがの彼女は人に見られ慣れているらしいし、まぁ気にしないで買い物に行こうか。
周りの人だってスーパーまで着いてくるわけは……あるいは何人かはいるかもしれないけど、行動が制限されるほどではないだろうし。
というわけで、周囲の人々の視線を感じながらスーパーまで歩いて行くことにした。ほんとはお肉屋さんのハムカツ、揚げたてのがおいしいから一緒に食べたかったんだけど、人目が気になるから早めに店の中に入ったほうがいい気がするし。学校帰りにお土産で買って帰ってもいいね。
なにを買うかのメモを確認しながらスーパーへ到着すると、買い物カゴを手に取る。そこまで買うつもりはないからカートはいらないかな。
「リン、お米を買うぶんの手持ちは持ってきている?」
「ん? あるよー」
「晴れたしお米を買いましょう。私もシアンほどではないけどそれくらいなら簡単に持てるし、明日出かけるときに気にしなくてよくなるわよ」
「おー、そっか。カート持ってくるね」
カートをガラガラと運んできて上にカゴを乗せた。
さぁ、しゅっぱーつ!
正直言って食材の良し悪しはあたしにはよくわからない。トマトとかレタスとか見て傷があるとか穴が開いてるとか、それがいいことなのかもわからない。
ロゼは野菜を一瞥してパパッとカゴに入れていく。早いなぁ、どこを見て買う気になってるのかわからない……。
続いてお魚、お肉と、二人いるからということでメモに書いてあるものをわりとオーバーしているけど、予算的には問題ない。
あ。
ここは……!
ここでならあたしの知識が役に立つってもんよ!
「ねーロゼ、ちょっとこっち見よ」
「えぇ。なにがあるの?」
「お菓子ー」
そう、お菓子コーナーである!
野菜やお魚の見分けなんてできないさ。でもお菓子なら新商品から定番のものまで、ほぼ全てあたしの頭の中に刻み込まれているのだ。
「これとこれとこれとこれと……」
「ちょっとリン、そんなにいっぱい買わないで満足度が高そうなものをちょっとでいいわよ。……これなんかどう?」
「あぁそれねー、おいしそうに見えるけどなんか物足りないよ、パサパサしてるし。値段同じくらいのだったらこっちのほうがおいしいし安いし、そっちはマーガリンだけどこっちはバター使ってるし」
先ほどまで見ているだけでなんの役に立っていなかったことも合わさって、どやさぁと鼻を膨らませ、理屈っぽくも知識を披露して見せた。
どうです、あたしにだって目利きできるものはあるんですよ。
「詳しいのねーリンは」
「ふっ、まーね……」
「材料を気にするなら手作りも面白いわね。私も簡単なものだったら作れるし、一緒に作ってみない? 季節の果物のパイなんかおいしいわよー」
「パイ? あたしパイ好きだよ! 作りた、食べたい!」
ロゼが作れるというのであたしはクッキーとかのお菓子をカゴから取り出し、元の場所へと戻した。そしてパイ生地の材料やらイチゴやらを追加して買い物は終了となったのだ。
帰りの道すがら。
「……そういえば。リンは男の子に人気があるのねー」
「ん?」
「今日、男の子に告白されてたじゃない?」
「んあー……普段声かけられたり優しくされたりとかないよ。知らない人からたまに告白される不思議」
「それはリンがそっけないからよ。朝でも自分から挨拶してごらんなさい、話すきっかけができたら……なーんて、本人にその気がなければ意味のない話だわね」
「彼氏欲しくないもんなー今は」
……なんて話しているときにふと思い出す。
あたし、昨日先輩に告白して振られたんだってこと。
なのに今……彼氏なんていらないって思ってる。
あんなに鷹尾先輩が好きだったのに……今は顔を思い出してもなんとも思わない自分になぜか焦りを感じる。
だっておかしいよ、確かに昨日告白するまでは――告白したときまでは好きだったのに、今は――告白したことを後悔してる。
人の気持ちってこんなに早く変わるもの? あたし、おかしいのかな……?
「……リン? ちょっと、どうしたの?」
「……なんか、変」
「変……?」
そこからあたしはなにも話す気はしなくなって、ロゼも気を遣ってくれてそのことには触れずに帰宅した。
「凜様、ロゼ、お帰りなさい。あ……米を買ってきたんですね。ロゼ、僕が台所まで持って行きますから」
ただいま、と視線を合わさずに言うと持っていた荷物を台所まで運んだ。
楽しかったのに急に疲れた……。
「シアン、お風呂は沸いているの?」
「ええ。入れておきましたよ」
「じゃあリン、お風呂に入っちゃいなさいよ。その間に夕飯の支度しとくわ」
「ああ……うん」
「おいしいの作るわよー」
お風呂ー……お気に入りの入浴剤入れて気分転換しよう。
自分の部屋でカバンを置いて制服を脱ぎ、ブラウスとパンツ一丁という格好で着替えとバスタオルを持って脱衣所の棚から入浴剤を取り出す。落ち着きある癒しの香り……これでいいな。
着ているものを脱いで洗濯機に放り込むと生まれたままのあたしが鏡に映る。
顔よしスタイルよしの自分の姿を鏡で見るのが好きだったけど、今はなんかどうでもいい気がしてさっさと風呂場に入った。




