【第15話】妖術師・八兵衛の本気!お菊ちゃんの敵は消し炭にする
「あ、頭なでなで……!? お菊ちゃんのあの白くて柔らかい小さな手で、俺の頭を撫でてもらえるだと……!?」
八兵衛の全身から、これまでの比ではないドス黒い妖気の柱が、竜巻となって天高く噴き上がった。
『一分以内と言わず、一秒で終わらせてみせる!! 俺とお菊ちゃんの神聖な【頭なでなでタイム】を邪魔する奴らは、たとえ百万の大軍だろうと全員まとめて消し炭にしてやるぞーーーっ!!』
そこへお菊が、すかさず両手をかざして極大の支援魔法を重ね掛けした。
「ほな、いくで八兵衛! 【魔力極大化】【詠唱破棄】、おまけに【限界突破支援】や! ただし、鎧は後で売るから、絶対に燃やしすぎたらあかんよ!」
「了解だお菊ちゃん!! 鎧にはススひとつつけるものか! くらえ山名軍、これが俺の愛の妖術奥義――【黒炎大蝦蟇・丸呑み地獄】だーーーっ!!」
八兵衛が両手を地面に叩きつけると、大通りの石畳に巨大な魔法陣が浮かび上がり、そこから家屋ほどもある『黒い炎をまとった超巨大なガマガエル』がドォォォンッ! と出現した。
「ケロォォォォォッ!!」
「な、なんだこのデカすぎるカエルはーーっ!?」
突撃してきた山名軍の精鋭五十人が急ブレーキをかけるが、もはや手遅れだった。
大ガマがビョーーン! と数十メートル伸びる炎の舌を振り回すと、五十人の侍たちをまとめて絡め取り、その巨大な口の中へと一気に放り込んだ。
そして、大ガマの腹の中でボォォォンッ!! と適度な威力の黒炎が爆発し、次の瞬間、「ゲップ」という音とともに、五十人の侍たちが空へと吐き出された。
「「「ぎゃあああああっ!!」」」
ドサドサドサッ!! と地面に降り注いだ山名軍の精鋭たちは、お菊の言いつけ通り『鎧だけはピカピカの無傷』のまま、頭髪だけを綺麗なアフロヘアのようにチリチリに焦がして、全員白目を剥いて気絶していた。
《実況:フクザワ》「ファイヤーーーッ!! 一撃! わずか三秒で山名軍の精鋭五十人が、全員まとめてアフロヘアにジャストミーーーート!! 鎧を一切傷つけずに中身だけを黒焦げにする、なんという精密機械のような妖術コントロールだーっ!!」
《解説:イッシーバ》「んー、今のですね、ガマガエルという両生類についてでありますが。本来、カエルというものはですね、皮膚呼吸をする生き物でありまして、あのように炎をまとっておりますと、水分が蒸発してしまうのではないかと。そういう生物学的な観点からですね、非常に疑問が残るわけでありますね」
《解説:アベ》「……イッシーバ君、これはファンタジーの召喚獣なんでありますよ! なぜそこで両生類の皮膚呼吸についてネチネチと議論を始めるんでありますか! 私の頭までチリチリになりそうであります!」
大ガマが煙となって消えると、八兵衛は過労の反動で「ぐふっ!」と血を吐きかけたが、お菊がコンマ一秒で【極大治癒】を撃ち込んで強制的に全快させた。
「わぁ、すごいわ八兵衛! ほんまに三秒で片付いたし、鎧もピッカピカのままやんか! よしよし、約束通り、後でたっぷり撫でてあげるからね♪」
「うおおおおおっ!! ありがとうお菊ちゃん! 俺は今、世界で一番幸せな妖術師だーーーっ!!」
尻尾を千切れんばかりに振る八兵衛の横を通り過ぎ、お菊は呆然と立ち尽くしている山名軍の大将・赤松鬼十郎の前へとトコトコと歩み出た。
「な、な、なんだ今のは……!? 俺様が手塩にかけて育てた山名軍の猛者どもが、カエルに呑まれて一秒で全滅しただとぉ……!?」
ガタガタと震える身長二メートルの赤鬼を見上げ、お菊は『慈愛号』をクルクルとバトンのように回しながら、にっこりと微笑んだ。
「さあて、赤鬼のおっちゃん! 周りの邪魔者はみーんなお掃除できたし、いよいよメインイベントやね! どっちが本物の『鬼』か、その金棒とこの『慈愛号』で、白黒はっきりつけよっか♪」
《実況:フクザワ》「さあ、舞台は整った! 身長二メートルの巨漢・赤松鬼十郎か、それとも身長百五十センチの撲殺聖女・お菊か! 戦国時代最大の『鬼決定戦』、ゴングは今、鳴り響いたーっ!!」
《解説:イッシーバ》「白黒はっきりつけると言いましてもですね、相手は『赤鬼』なわけでありまして、そこになぜ『白』と『黒』が出てくるのか、色彩感覚の観点からですね、もう少し丁寧な議論が……」
《解説:アベ》「ああもう、いちいち言葉尻を捉えてネチネチと絡んでくるんじゃないんであります! 次回、金棒とメイスの正面衝突! 赤鬼が泣いて謝る撲殺ショーが開幕します。どうぞご期待ください!」




