【第16話】金棒vsメイス!赤鬼が泣いて謝る撲殺ショー
部下五十人を一瞬でアフロにされた赤松鬼十郎は、恐怖を振り払うかのように血管をブチブチと切れそうなほど浮き上がらせ、巨大な鉄の金棒を両手で高々と振り上げた。
「な、なめるんじゃねえぞ小娘ぇぇぇっ!! いくら隣の優男が奇妙な妖術を使おうが、てめえ自身はただの町娘だろうが! この『山名の赤鬼』の怪力で、その生意気な笑顔ごと地面にめり込ませてやるわーーっ!!」
『くそっ、部下どもはやられたが、この小娘さえぶっ潰せば俺様の勝ちだ! 大人しくミンチになりやがれーーっ!』
鬼十郎が地面を踏み砕き、丸太のような金棒をお菊の頭上へと全力で振り下ろした。
ゴォォォォッ!! とすさまじい風圧が巻き起こり、町人たちが思わず目を覆う。
しかし、お菊は一歩も動かず、空いた左手を軽く上にかざした。
「はい、無駄無駄ー!【聖なる障壁】っと♪」
ガキィィィィィンッ!!
お菊の頭上に展開された七色の光の盾に金棒が激突し、鬼十郎の両腕にすさまじい反動が跳ね返った。
「ぐわあああっ!? な、なんだこの硬い光は!? 俺様のフルスイングが、ビクともしねえだと!?」
手がしびれて金棒を取り落としそうになる鬼十郎の前で、お菊は「ふふん」と可愛らしく胸を張った。
「どう? うちのバリア、カチカチやろ? ほな、今度はお返しに、うちの『慈愛号』の味を見てもらうで!」
お菊は右手に握った玉鋼製メイス『慈愛号』に、聖女の神聖な魔力をギュッと集中させた。
【固有スキル:鈍器術・極 & 聖光付与が発動しました】
黒光りするトゲトゲの鉄塊が、まばゆい黄金色の光をまとってブゥン! と唸りを上げる。
「いくでーっ! 本物の『鬼』がどっちか、その体でしっかり覚えときやーーっ! えいっ☆」
お菊が小さな体をバネのようにしならせ、鬼十郎が盾代わりに構えた極太の金棒に向かって、『慈愛号』を真横からフルスイングで叩き込んだ。
ドガシャアアアアアンッ!!
耳をつんざくような金属の破砕音が堺の街に轟き、鬼十郎の自慢の鉄の金棒が、真ん中から真っ二つにへし折れて空高く吹き飛んだ。
「ば、馬鹿なあああっ!? 俺様の特注の金棒が、小娘の片手スイングで折れただとぉぉっ!?」
《実況:フクザワ》「ジャストミーーーート!! 鬼の金棒、完全粉砕だーっ!! 玉鋼十本分を圧縮した『慈愛号』と聖女の怪力バフの前に、山名軍最強の金棒もただの鉄クズに過ぎなかったーっ!!」
《解説:イッシーバ》「んー、今ですね、お菊さんが『後ろからではなく正面から』殴ったわけでありますが。私はですね、やはり後ろから味方を撃つようなですね、そういう不意打ちの戦術もですね、選択肢として排除すべきではないと、常々申し上げているわけであります」
《解説:アベ》「イッシーバ君、自分の趣味である『後ろから味方を撃つ』戦術をここで正当化しないでいただきたいわけであります! お菊さんは正々堂々と正面から粉砕しているんでありますよ!」
金棒を折られて完全に無防備になった鬼十郎の顔から、サーッと血の気が引いていく。
「ひ、ひいいいっ!? ま、待て、ちょ、ちょっとタンマ……」
「タンマなんかあるわけないやんか♪ ほな、鎧が壊れへんように、ちょっとだけ力を抜いて……お腹にサービスの一撃や! ほいっ♪」
お菊はニコニコと満面の聖女スマイルを浮かべたまま、鬼十郎の分厚い太鼓腹のど真ん中に、『慈愛号』の先端をボコォッ!! とめり込ませた。
「ぐ、ぐぎゃあああああっ……!?」
身長二メートルの巨漢が、「く」の字に折れ曲がったまま地上から三メートルほど宙に浮き、白目を剥いて泡を吹きながらドォォン! と地面に墜落した。
ピクピクと痙攣する鬼十郎の背中に、お菊はチョコンと足を乗せ、Vサインを作って見せる。
「はい、これにて決着やね! 今日から『山名の赤鬼』は廃業! この堺で鬼言うたら、うちのことやから、みんなよう覚えときやー!」
気絶から目を覚まし始めていた山名軍の兵士たちは、そのあまりにも凶悪で可憐な光景を見て、全員ガタガタと震えながら涙を流した。
『お、俺たちの鬼十郎隊長を、片手でワンパンしやがった……!』『あ、あいつこそが、正真正銘、本物の鬼だぁぁぁっ!!』
《実況:フクザワ》「ファイヤーーーッ!! カウント・スリー! 山名の赤鬼、完全ノックアウトだーっ! 堺の『本物の鬼』の座は、文句なしでお菊選手が防衛成功であります!!」
《解説:イッシーバ》「しかしですね、倒れている人の背中に足を乗せるという行為が、果たして国民の皆様の納得と共感を得られるのかどうか。そこはですね、非常に厳しい目で見ていかなければならないと……」
《解説:アベ》「もう黙っていていただきたいんであります! 次回、気絶した赤鬼・鬼十郎さんを回復魔法で無理やり叩き起こし、戦国時代初の『悪魔のローン契約』を結ばせる第17話が幕を開けます。どうぞご期待ください!」




