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【第12話】物理で殴る聖女様!ジャストミートで鎧ごと粉砕!

自慢の式神を一秒で消去され、馬上の賀茂晴明はガタガタと震えながら後ろの侍たちに怒鳴り散らした。


「え、ええい、何をボサッと見ておるか! あの小娘は奇妙な妖術を使うぞ! 護衛の侍ども、全員で取り囲んで斬り捨てるでおじゃるーーっ!!」


「「「おうっ!!」」」


細川軍の精鋭である三十人の侍たちが、一斉にギラリと日本刀を抜き放ち、お菊と八兵衛に向かって殺到した。


『ふん、いくら小賢しい術が使えようと、所詮はか弱い町娘よ! 鎧を着た侍三十人に囲まれれば、手も足も出まいでおじゃる!』


しかし、迫りくる白刃の群れを前にしても、お菊は涼しい顔で八兵衛の背中をポンと叩いた。


「八兵衛、あんたは左半分の十五人をお願いね! ほら、【筋力強化】と【俊敏強化】かけとくから、刀と鎧に傷をつけへんように優しく吹っ飛ばしてや!」


「任せろお菊ちゃん! お菊ちゃんの優しい魔力に包まれた今の俺なら、蚊に刺されるよりも優しく全員を気絶させてみせるぞーっ!!」


『うおおおおっ! お菊ちゃんとの共同作業だ! 左半分と言わず、地球の裏側まで敵を掃除してきたい気分だぜーっ!!』


ドガガガガガッ!! と八兵衛が黒い疾風となって左翼の侍たちに突っ込み、目にも止まらぬ神速の峰打ちで次々と侍たちを宙へ舞い上げていく。


そして、残る右半分の十五人の侍たちが、お菊へと斬りかかった。


「観念しろ小娘! おりゃあああっ!!」


先頭の侍大将が、渾身の力で日本刀を振り下ろす。


お菊は「よっと♪」と軽い掛け声を上げると、片手で握った玉鋼製メイス『慈愛号』を、下から上へと豪快にカチ上げた。


ガキィィィィィンッ!!


凄まじい金属音が大通りに響き渡り、侍大将の自慢の日本刀が、まるで乾いた割り箸のように根元からポッキリとへし折れた。


「なっ……!? わしの名刀が、鉄の塊に一撃で折られただと!?」


《実況:フクザワ》「おーっと! 日本刀とメイスの正面衝突は、玉鋼十本分を圧縮した『慈愛号』の圧倒的勝利だーっ! 刀がまるでスナック菓子のように砕け散ったぞーっ!!」


《解説:コイズミ2世》「刀が折れましたね。なぜ刀が折れたのか。それは、相手がすごく硬かったからなんです。硬いものにぶつかると、折れる。これがいわば、戦国のリアルなんですね」


《解説:アベ》「……コイズミ君、小学生でもわかる物理現象をドヤ顔で語らないでいただきたいわけであります……。ええ、そもそも日本刀というのは『斬る』ための武器でありまして、あのような質量の鉄塊と正面からぶつかり合えば、ひとたまりもないわけでありますね」


刀を折られて呆然とする侍大将の前で、お菊はパッと華やかな笑顔を咲かせた。


「あ、ごめんなさいね、刀折れちゃった! でも安心しいや、うちの『慈愛号』には刃がついてへんから、血は一滴も出えへんよ! ほな、せーのっ……えいっ♪」


お菊が可憐に腰をひねり、【鈍器術・極】の十倍補正が乗った『慈愛号』を、侍大将の分厚い鉄兜の上からフルスイングで叩き込んだ。


ドゴォォォォォンッ!!


大砲が爆発したかのような轟音とともに、侍大将の鉄兜がベコォッ! と空き缶のようにひしゃげ、その巨体が地面をバウンドしながら後方へ二十メートルほど吹き飛んでいった。


「ぐへぇぇぇっ!?」


さらに、お菊は止まらない。


「はい、次のお兄さん! ええ兜かぶっとるね、ほいっ♪」「そっちのおっちゃんも、お腹の鎧は高く売れそうやから、頭だけにしとくね、えいっ☆」


ドガァン! バキィン! ドゴォン!!


清楚な町娘が、ニコニコと笑いながらトゲトゲの鉄塊を片手で振り回し、屈強な侍たちを次々とピンボールのように弾き飛ばしていく。


《実況:フクザワ》「ジャストミーーーート!! 右へ左へ、お菊選手の『慈愛号』が火を噴く大乱打戦だーっ! 聖女とは一体何なのか!? 完全に物理で殴る撲殺エンジェルが堺に降臨しているーっ!!」


《解説:コイズミ2世》「お菊さんのスイング、非常にセクシーですね。ただ、一つだけ言わせていただくと、殴られた侍さんたちは、とても痛いと思います。痛いということは、ダメージを受けているということなんです」


《解説:アベ》「だからコイズミ君、当たり前のことをポエム調で言うのをやめなさいと……! しかしですね、お菊さんが胴体の鎧ではなく『兜』ばかりを狙っているのは、後で鎧を古道具屋に高く売るためでありまして、この乱戦の中でも見事なコスト意識が働いているわけであります」


わずか三十秒後。


堺の大通りには、八兵衛とお菊によって綺麗にノックアウトされた三十人の侍たちが、ボコボコに凹んだ兜をかぶったまま、マグロのようにずらりと転がっていた。


「ひ、ひいいいいっ……!? ほ、細川本軍の精鋭三十人が、たった二人に秒殺されたでおじゃる……!? あの娘、本物の『鬼』でおじゃるぅぅぅっ!!」


馬の上で失禁寸前の晴明に向かって、お菊は血一滴ついていない『慈愛号』を肩に担ぎ、ニッコリと手招きをした。


「さあて、お公家さんみたいなにいちゃん! 周りの護衛さんたちはみーんな伸びてしもたけど……あんたもこの『慈愛号』で、ちょっと頭を撫でてもらう?」


《実況:フクザワ》「さあ、完全に包囲されたエリート陰陽師・賀茂晴明! 泣く子も黙る撲殺聖女の前に、もはや逃げる場所はなーーーいっ!!」


《解説:コイズミ2世》「次回、お菊さんがすごいビジネスを始めます。ビジネスを始めるということは、お金が動くということなんですね」


《解説:アベ》「……もうコイズミ君のマイクの電源を切っていただきたいわけであります。次回、自分で殴って自分で治す『究極のマッチポンプ医療ビジネス』が開幕します。どうぞご期待ください」

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