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第二話 蛇と自治体の事情



 ゆかりは眠れなかった。時計はもう午前三時を回っている。午後から日付が変わる少し前までアルバイトがあるというのに眠れないのは困る。



 昼間、いろいろありすぎた。



 当初の約束通り、そのまま帰さないなどということはなく駅まで車で送ってくれたエンは、


「まぁ、うん、そうだな。こちらも無茶振りしているのはわかっているんだ。たかが三年されど三年、お前さんにはお前さんの人生がある。でもこちらも本当に困っている。他でもない、お前さんに頼るしかなくてなぁ」


 しょんぼりしていた。

 すっかり日が落ちて人気のない駅前で停車した運転席。その整った顔の、申し訳なさそうな表情もまた(さま)になる。しかしきれいな顔ではある、が、威厳は全くない。代理とはいえ一応神様のはずなのだが。

 あまりにもしょんぼりしているので、

「あのさ。今日はもう、時間ないけど。次に来たときに、ちゃんと説明してくれる? もっと早い時間に来るから」

 ゆかりもつい仏心を出してしまった。本当はよくないとは思う。しかしエンだけでなく町が困っているのだと聞いたら放っておくのも良心が痛む。

「スマホかパソコン持ってる?」

「どっちもある」

「どっちもあるんだ」

「副業で使うからな」

 そういえば梛木(なぎ)の家にいたときも言っていた。土地神なのに副業とはこれいかに。気にはなるが、突っ込まないことにしよう。

「すぐ見れるしスマホのがいいかな。連絡先交換しとこ、出して」

「ん」

 (ふところ)から取り出したのは最新機種のスマートフォン。ゆかりは「おじいちゃん蛇のくせに生意気な」とちょっと思ってしまったが、車といいたくさん出された菓子といい、金回りはいいのかもしれない。――金回り? 土地神なのに?

「メルッピ入れてる?」

「入れてる」

「入れてるんだ」

「町役場との連絡用にな。あとゴミの日のお知らせが来るから便利で」

「へぇ」

 メッセージアプリを起動、QRコードを読ませ、互いにアカウントを登録。まさか土地神と簡易連絡ツールのやりとりをすることになろうとは。

「できるだけ早い方がいいんでしょ、バイトのシフト明日出すからOKもらえたら連絡するわ。……じゃ、行くね。送ってくれてありがと」

 車を降りて駅に向かおうとすると、運転席のウィンドウが開いた。

「いつ頃に、なりそうだ?」

 エンは少し不安そうな顔をしている。そんなに切羽詰まっているのだろうか。


 できるだけ早く問題を解決して、さっさと関係を断とう。きっとそれがいい。


「だから、こっちから連絡するって。おとなしく待ってな」

「わかった。……ゆかり」

「何よ」

「好きなものは? 次に来るときに用意しておこう」

 来てもらえるとわかるや否や、にこにこ顔になる。たった今まで沈んでいたかと思えばこれだ。溜め息が出た。

祖父(じいちゃん)ヅラすんな!」



 初対面にもかかわらずあの馴れ馴れしさ。全くあのエンとかいう蛇の男、一体何だというのだ。何って土地神代理の妖怪か。


 あの田舎の町で、長年(まつ)られ、町の人たちを(まも)ってきた。だからゆかりのことも可愛がろうとするのか。


「…………きれいな緑だったな……」


 元の蛇の姿を思い出す。

 子どもの頃に学校で使った絵の具やオイルパステルなんか比べものにならない、自然が産んだ美しい色。


「何て蛇なんだろ。あれアオダイショウじゃないよな……」


 何となく気になり、スマートフォンで検索しているうちに、ゆかりは眠りに落ちた。




 ゆかりが再度土地神代理に会いに行ったのは、初対面からちょうど一週間経ってからのことだった。あの日と同じく、天気がいい。午前中に来てほしいとのことだったのでいつもの休日よりも早起きしなければならなかったが、気持ちのよい晴天に少し心が(おど)った。土地神代理のことはともかく、途中で海が見える電車に乗ってのんびり向かう母の実家への行程には何だか少し()やされる。


「よく来たなぁ」

 駅の改札口まで迎えに出てきていたエンは、前回会ったときとは違い洋服だった。(えり)のないシャツに濃いグレーのテーラードジャケットを羽織り、足元は小洒落た革のスニーカー、肩まで伸びている髪をひとつに(くく)っている。口さえ開かなければ髪色が派手なだけの好青年だ。妙に現代に馴染んでるなこのじいさん蛇、と思いながら、

「…………えぇ、とぉ。そちらは」

 ゆかりは一歩下がったところに(ひか)えているスーツ姿の眼鏡をかけた若者に目をやる。若者は緊張した面持ちで頭を下げた。

「はっ、初めましてっ! いつもエン様にお世話になっておりますっ、巳埜谷(みのや)(ちょう)役場危機管理部の畑辺(はたべ)と申しますっ!」

 やや早口、声が大きい。「社会人初心者」の香りが(ただよ)っている。今年役場に入ったばかりなのだろう。

「……梛木、ゆかり、です。…………エン?」

 説明を求めると、エンはゆかりが持っていた二泊三日分の荷物が入ったボストンバッグを受け取った。

「お前さんに見てもらいたいものがあるんだが、また出直すのも手間だと思ってな。行政が関わっていると言っただろう、説明も俺だけでは上手くできないかもしれないから専門家を連れてきた。耀(ひかる)という。若いがものをよく知っているぞ」

 改めて畑辺を見ると、キュッと身を引き締めたのが目に見えてわかった。ゆかりよりは年下か、くりっとした丸くかわいらしい目が幼く見える。それがフレッシュさを増幅しているようだ。

「よろしくお願いしますっ!」

「あ、はい、どうも」

「うんうん、今日も元気だな耀は。さて」

 エンは指先に引っ掛けた車のキーをくるくる回した。

「今日の昼飯は店を予約してある。その前にちょっと行ってこようか」



 車で二十分ほど走っただろうか。対向車が来たらすれ違うのが難しいくらいに細い上り坂を法定速度でゆるゆると上り、そして下る。川沿いをしばらく行き、木々の間の開けた場所に入って、車を停める。細かい砂利が敷いてあるそこは、一応駐車場であるらしい。

 降りて少し歩くと、湖が見えた。水面が陽光の欠片を弾くように輝いている。

「ほぇ~」

 こんなところもあるのかと感心したゆかりが気の抜けた声を出すと、畑辺は得意げな顔で眼鏡のつるをくいっと上げた。

「きれいでしょう! 巳埜谷町自慢の景勝地ジャノメ()です! 名前が表す通り昔はもっと円に近い形で、土地神様にちなんで(へび)()池と呼ばれていました。農業用水を取るために少し広げられて現在では人工湖という扱いになっていますが、生態系は昔のまま保たれています。一番の見頃は紅葉の季節ですね!」

「お、あ、はい……」

 早口の説明に気圧(けお)されると、エンが笑った。

「耀、落ち着いてゆっくり話してやれ。ゆかりは巳埜谷ビギナーだからな」

「あっ、すみませんっ」

「ゆかり。もう少し歩くが大丈夫か?」

「うん」

 メッセージアプリであらかじめ「動きやすい靴で来なさい」と言われていた。そもそも母の実家に行くまで結構歩くから、ヒールの高い靴など履こうとは思わないが。

「大きな木があるだろう」

 エンが示す先、湖の左手に、頭一つ抜けたような高さの木が見える。

「あそこまで歩く」

「何かあるの?」

「例のブツだ」

 先陣を切り歩き始める。ゆかりと畑辺も続く。

「何のブツだよ例も何も聞いてないよ」

 土地神様に容赦のないゆかりに畑辺は慌てる。

「あっ、あのっ、梛木さんっ、そのひとっ、いやヒトじゃないんですけどっ」

「知ってますよ蛇でしょこいつ」

「『こいつ』!」

 メッセージアプリでのやりとりを見たら卒倒しそうだな、とゆかりは思った。


 ここ一週間ほど、エンは好きな菓子を買っただの夕食に何を作っただのと写真付きのメッセージをゆかりに送ってきていた。直接表情を見たわけではないが、きっと身内のようなもの――と、彼が勝手に思っているだけなのだが――と繋がりを持てて嬉しかったのだろう。それで仕方なく、つい、相手をしていたのだが、話しているうちに「あんた」やら「じいさん」やら、曲がりなりにも神とされている存在に向かって何とも無礼な口を利いてしまっている。


 しかしエンは全く気にしていない。

「耀、いいんだ、耀。梛木の家は代々俺の面倒を見てくれているからな」

「え、エン様がそう言うなら……」

 いいのか、いいのかな、とぶつぶつ自問自答している。ゆかりよりは背丈があるが、顔立ちや言動から受ける印象も相まって俊敏な小動物のように見えてしまい、つい笑いを堪えてしまう。

「畑辺さんも、そんなに(かしこ)まらなくていいですよ。私に対しても」

「や! そういうわけには! エン様は神様ですし! そして僕も巳埜谷町の職員ですし!」

 生真面目で可愛らしい小動物系だ、と微笑ましく感じていたゆかりだったが、


「梛木さんも、エン様の奥様になるんでしょう!?」


 続けられた畑辺の言葉に、立ち止まり、顔を(ゆが)める。


「はァ!?」


 響いた。

 晴れ渡る空の青、光るような白い雲、生い茂る木々の緑、そして鏡の如く静かにして艶々(つやつや)とした湖――それはそれは美しい景観の中に、怒声が響き、(こだま)した。


 それまで口調こそ丁寧とは言い切れないが比較的おとなしかったゆかりが突然大きな声で怒りを表したので、畑辺は「ひっ」と小さく悲鳴を上げて目を丸くした。

「え、え、へっ!?」

「おいジジイ! 何説明した!? 私断るっつったよな!?」

 (つか)みかからんばかりに詰め寄るゆかりに、さすがのエンも(おび)える。

「あ、あぁ、いや、そのだな、俺はあくまで候補だと」

「候補でもねーし!! 勝手に決めんな! 第一何なんだよ嫁って!」

「うん、だからな、ゆかりよ」

 エンはゆかりの両肩をぽんぽんと軽く叩き、(なだ)めた。

「その説明に必要だから、ここに連れてきたんだ。だからちょっと落ち着いてくれ、な?」

 そうだ、エンはちゃんと説明しようとしてくれている。ゆかりは一回、深呼吸した。

「納得できなかったら蒲焼きにするからな」

「神を食う気か、恐ろしい娘だ。ちゃんと(さば)けるんだろうな?」

「なめんな魚くらい捌けるわバ先で元料亭の板さんに二年間いろいろ教わってんだぞ」

「俺は魚じゃなくて蛇だぞぉ?」

「うるせージジイ!」

 並んで再度歩き始めたふたりの背を見ながら、畑辺はびくびくしていた。

「な、仲は、いい…………のか、な?」

 それは夫婦(予定)というにはほど遠い姿だが、おそらくふたりなりの関係性ではあるのだろう――不安はあるが受け入れようと決意し、後を追った。



 先ほどエンが指し示した大きな木の下には、心地よい日陰ができていた。木漏れ日もまた美しい。

「これだ」

 前に出たエンがしゃがんでそれを()でた。根元には(ほこら)を模したような小さな石積みがある。ゆかりもしゃがんで、じ、と見る。

「何それ。触っていいやつなの? 崩れない?」

「ただの目印だから崩れたって問題ない」

 言いながら一つ一つ石をどけていくと、地面に金属製の(くい)のようなものが刺さっている――のだが、これはどう見ても。

「エン。これってさ、もしかしてテントとか設営するときに使うやつ」

 上部に(かぎ)状の出っ張りがある、今の時代のものだ。エンは頷いた。

「うん。安くてちょうどいいのがあってな。ミナオカで税込三百八十円だった。送料はかかるが注文して三日以内に届くのはありがたい」


 チェーン店のホームセンターの名前? 「三日以内に届く」?


「ポチったんだ」

「店が近くにないからなぁ。これはな、今俺が一番力を注ぎ込んでいるものだ」

「これに? なに、何か封印されてたりすんの?」

「変なものは何もいないが、まぁ、似たようなものかな」

 やや後ろに控えていた畑辺が一歩前に出る。

「梛木さん。実はこのあたり、今歩いてきたところも、ハザードマップで真っ赤っかなんです。というか、エン様のお力がなければとっくに崩れています」

「えっ」

「さっき、ジャノメ湖は農業用水に利用されているとご説明しましたよね。車で走ってきた道沿いに、川があったじゃないですか。あそこから巳埜谷町の人が住んでいる方に水が流れていってるんですけど、」

 懐から取り出して地面に広げたのは、地図だった。ゆかりの隣に畑辺もしゃがみ、地図を指さす。


「ここがジャノメ湖。僕たちが今いるのはこのへんです。で、こう川が流れています。下流のこのあたりが住宅地。ここが崩れたら、この川を伝って大量の土砂が流れ出る。土砂だけじゃない、周りの木も倒れて流れる。そういう災害の映像、ニュースやネットで一度は見たことがあるでしょう? 巳埜谷町の場合、それによって――人が、ほとんど住めなくなってしまうんです」


 今見ている、この景色。

 (しず)かでのどかな民家と田畑。


 それらが濁流に押し潰されて、なくなってしまう?


「え、なっ……いや、それって…………だから何で、それが私がエンの嫁になることと関係が」

 町の人たちが困るのも、エンが土地神として真面目に務めを果たしていることも理解したが、何がどうなってそうなるのか。

「簡単に説明するとな、」

 エンは立ち上がると、湖に目をやった。

「俺はモバイルバッテリーみたいなものだ」

「は?」

 シリアスな話をしていたはずなのに突然何を言い出すのか。ゆかりも呆れ返りながら立ち上がる。

「何言ってんのあんた」

「ふざけているわけじゃない。これが言い得て妙でな」

 苦笑いしながら振り返る。

「俺は正確には土地神の代理だと言ったな? つまり元のアレよりも力は弱いし、予備というか、補助というか……まぁ、そういう感じだな」

「それは、何となくわかるけど……だから何で嫁が必要なの」

「俺は元々この巳埜谷のものじゃない。よそもよそ、外国から来た蛇だ。だから巳埜谷の土地神として機能するには、巳埜谷の者と繋がりを持たなきゃならない」

 あ、とゆかりは声を漏らした。

「それが、おばあちゃんだったってこと?」

「正解。嫁とはいったが、まぁ契約みたいなものでな。りつ子の前はかやの……りつ子の祖母だった。もちろんりつ子もかやのも夫がいたが、その上で本人たちの理解があって、儀式をして、形式上の夫婦となったわけだ。それで俺は巳埜谷の蛇として成り立って、巳埜谷の神の座に座れていた」

 だからエンは「内縁の夫」だなどと称したのだ。一般的に知られる夫婦というものではなかったのである。

「で……でもさ、エンは、長いことここに住んでるんでしょ? だったら、そういう紐付けみたいなさ、」

「それじゃ足りん(・・・)のだよ。ゆかり、神は消えてなくなることがあるのを知っているか?」


 「消えてなくなる」。


 「いなくなる」でも「死ぬ」でもなく?


「神様が、そんなことになるの?」

「信仰されなくなった神は力を失う。力がなくなれば神ではなくなる。神という存在が消えるんだ。俺の場合はただの長生きな蛇の妖怪に戻る。幸い今も巳埜谷の者らはみんな俺を神だと認識してくれてはいるが、残念ながらこの田舎だ。どうしようもない社会問題が例に漏れず起きている。学校で習っただろう?」

 また、あ、と気付く。

「過疎化……」

 その言葉に畑辺が少し唇を噛んだが、彼に背を向けているゆかりは気付かない。エンは弱く、笑う。

「正解。優秀だなお前さんは。……信じてくれるのはありがたいことだ。それでもその数が少なければ出力も落ちる。りつ子がいた頃は何とかギリギリでもっていたんだが、りつ子がいなくなった今俺の力も減っている。しかも繋ぎがないから充電もできない。わかるか? 今の俺は残量僅かなモバイルバッテリー、俺の嫁というのはつまり充電用ケーブルだ。アレ――俺に役目を押し付けたバカが言うには梛木は蛇を祀る一族らしいから、まぁ純正品といったところだな」

「じゃあ、三年っていうのは? 何で期限付きなの?」

「来年、このあたりの工事を予定しているんです」

 地図をたたんだ畑辺も立った。

「できるだけ早く着工した方がいいというのは我々もわかってはいるんですが、予算の関係で……それまでエン様のお力にお(すが)りして現状維持していただくしかない。補強工事が終われば、エン様がお力を注がずとも土砂災害は起きにくくなる見込みです」

「それは…………そっちは解決するかもしれないけど、三年経った後どうするの!?」

「それまでにアレを探す」

 真剣な顔になって、エンは言った。

「しばらく眠るとか言っていたくせに、いつの間にか社からいなくなりおった。とはいっても、土地神だからそう遠くへは行っていないはずだ。三年の間にアレをとっ捕まえて、土地神に戻す。アレは梛木の者の助けがなくても神として成り立つやつだ、巳埜谷が困ることはなくなる。……ゆかり、改めて頼む。三年お前さんの時間をくれ。あの家で一緒に住んでくれるだけでいい。対価も用意するし、一緒にいる間の生活費は責任持って全部俺がもつ。俺が巳埜谷の神でいるためには、お前さんが必要なんだ」


 これはとんでもないことに巻き込まれてしまった。ゆかりは目を閉じ、天を仰ぐ。


 「のっぴきならない事情」――きっと祖母とエンが母を外に出したのは、こういうことに巻き込みたくなかったのだ。そして本当はゆかりも巻き込みたくはなかったが、どうしても、そうせざるを得ない状況になってしまったのだ。


 大きな溜め息が出る。



「……しょうがないな~」



 息をするような小さな声だが、聞き漏らさなかったエンと畑辺の顔がぱっと晴れる。


「エン。さっき言ったの、約束してよ。あの家に一緒に住むだけ。生活費はあんたが全部もつ。三年間縛り付ける対価をちゃんと用意する。畑辺さん、今のちゃんと聞いたね? 証人だからね!」

「はい! はい! 畑辺耀、確かに聞きました!」

 よっしゃ、やった、と飛び跳ねる畑辺。まだ学生気分が抜けきっていないようだ。

 エンも心底嬉しそうにゆかりの両手を取る。

「ゆかり、ゆかり、ありがとう、お前さんは本当にいい子だな! 不自由はさせないからな!」


 この神の代理をしている蛇は、巳埜谷という町を本当に愛し、大事にしているのだ――そう感じてしまったら、断れるはずがなかった。


 天涯孤独にも等しい自分が力になれるというのなら、そうしてもいいかと思ってしまうではないか。


「一緒に暮らすのかぁ……引っ越ししなきゃだな……あ、バ先にも辞めるって言わなきゃうわーシフト出したばっかりなのに」

「うんうん、引っ越し費用は任せておけ、バイト先にも詫びを入れてやろう」

「いやそれはいいよ何とかするよ。っていうかさ、エン」

「何だ?」

「あんたさっき外国から来たって言ってたね? 私、外来種の嫁ってこと?」

 一瞬きょとんとしたエンは、

「そうか、そうなるなぁ!」

 愉快そうに大笑いした。




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