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失望者の異世界転生  作者: コバヤシ アキラ
第3章
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眠れる猫はドリームを見る2


俺は実家から仕事場へと通っていた。


警察に入って自分自身何が変わったかというと、いろいろ変わったのだが、人の死に慣れてしまったことと、祭りが嫌いになったことだろう。


人の死に慣れたとはいっても、実際は全然慣れてはいないな・・・

そういう風に見せる演技が上達したと言えばいいのだろうか・・・

亡くなった人の身内が悲しんでいる傍ら、俺らは何をするのかと言えば、事件性の有無を確かめなければならないのである。

親族にしてみれば、何だお前ら?と思うだろう。

そこで、俺らが変な顔をしたり、悲しんだりすれば、変な誤解を生むことになったりしかねない。

だからこそ、平常心で、事情を説明し、淡々と、出来るだけ早く済まさなければならない。

正直、これは結構辛かった。


そして祭りに関して言えば、祭りの日は必ず仕事になる。

祭りの警備にあたっている警察官。

あれは、全員が非番か、公休の警察官である。

通常の勤務は、通常通りしなければならず、じゃあ誰が警備にあたるのかと言えば、それ以外の休みの警察官である。

24時間働いた後の警察官と、明日24時間働くことのなる警察官がそれぞれ警備にあたる。

では、3、4日続く祭りはどうなるのか、当然、非番と公休が警備に当たる。


警察官は3交代と呼ばれる勤務体制である。

当番は、通常業務で、24時間働く。

非番は、当番で24時間働いた後の日で、残業が終わり次第帰ることが出来る。

公休は1日休みで、次の日に当番となる。

そのサイクルがずっと、他の係になるまでは永遠に続いていく。


つまり、当番、祭り警備、祭り警備、当番と続くわけだ。

祭りが嫌いになるのは当然といっていいと思う。

ちなみに残業代なんてほとんどでない。

先輩から聞いた話によると、階級が上の者から残業代は支払われていくらしい。


つまり、怠け、仕事を押し付けてくる上の奴ら、無駄に居残る奴らが残業代をかっさらっていく。

今はどうか知らないが、俺の時はそうだったのだ。


そんな不満だらけの状態で仕事だけはキッチリとこなしていた俺にも転機が訪れた。

県下一忙しい警察署で働いていた時から付き合っていた女性と、結婚することになったのである。


そうして無事に?結婚をした。

?がついたのは、最初だけは幸せだったからだ。


最初は順風満帆だったが、後に彼女の浪費癖が発覚した。

俺は実家への仕送りもしていた為に、最低限のお金しか手元には残していなかった。

こうして、さらに貧乏に、それと同時に心にも余裕が無くなっていった。


俺が馬鹿なだけといえば、それまでになるのだが・・・


警察官として働いていたが、出世欲は皆無だった。

上にいく興味がなかったのだ。


出世をするのは、もっと年を取ってからでいいと思っていた。

何故かと言われれば、給料はそんなに上がらず、責任だけが跳ね上がることを知っていたからだ。


なら、巡査長から部長に上がったところで、いいことなんて何一つない。

当時の俺はそう思った。


そんな考えだった俺の所に、入籍した頃話が入った。


俺は先ほどの通り、警察で出世欲はなく、また、他の課の希望もなかった。

階級が上がれば責任は増え、課が変われば休みがなくなるからである。


さらにそれまで警察官をやってきて思っていたのは、残業の管理のずさんさだ。

これは、未だに疑問が残る。

優秀な人ほど給料が少なくなってしまう現状を一刻も早く改善するべきである。しかし、現状はそうはならない。例えば刑事課である。どの署でも大体残業代の振分が多いのが刑事課なのだが、泊り明けは正午には帰れるのに、帰りづらい雰囲気を醸し出す。そんな雰囲気ではとてもじゃないけど帰れない。

「ちょっと出て来ます」と、外に出て眠っていたなんてのもざらだろう。

むしろ無いとは言わせない。


仕事をわざと残したり、ちんたら仕事したり、この点に関しては本当にバカなんじゃないかと思ってしまう。

まぁ、当時の俺が警察官だった時の話だから、今がどうなっているかもわからないし、優秀な人たちも数多くいたと、補足しておこう。


だからこそ、ずっと地域課がいいと思っていたところ、警備課長からお声をいただいた。

こうして警備の紐付きへとシフトしてしまう。

その課長は唯一尊敬できる方だったから、少しだけ嬉しかった。


因みに、紐付きというのは『留置』、わかりやすくいうと『牢屋』の看守を2年こなせば警備になれますよといったものだった。

俺は勉強は出来なかったし、だから、留置に行ってこいってことだったのだと思う。


先輩からのプッシュでこのような事態になってしまい、仕方なく転勤して看守へとなる。

そもそも拒否なんてできない・・・

またここで人生の転機を迎えることになった。


俺が勤務していた時期の年寄りの警察官は、失礼を承知で言えば、【バブルの時期に波に乗れず、いい企業に就職できなかった頭の悪い奴ら】だと思う。

もちろんそうじゃない人もいるが、俺の周りの大半はそんな感じだった。


だからいつまでたっても組織の中は変なまま、変化を拒絶し、問題が起こればそれを禁止して蓋をする。

馬鹿としか言えなかった。


そんな人らのさらに階級が一個くらいしか違わない人が相勤者になる。

結果は目に見えている。


自己中で自分ルールを勝手に決める。


それに対しての説明はなく、従わなければ罵声、そもそもその自分独自のルールが明らかに間違っているにもかかわらず、強要するのだからタチが悪い。


そんな相手と1年半、その時に人生の変化が訪れた。


ずっと続けていた母の仕送りが必要無くなり、俺には子供が出来た。

そして次に・・・


仕事に行けなくなった。


普通、子供が出来たのなら、「よし、もっと頑張ろう」とか、思うだろうに、俺の場合、署に近づくにつれ手が震えだし、吐き気がし、遂には実際に吐いてしまうのだった。


診断結果はうつ病だった。

そこから休職することになった。


どうしてこうなってしまったのかは分からない。

でも、結果的にこうなってしまった。


そして、妻は、俺を見放した。

そりゃそうだ・・・子供が産まれるのに、俺は仕事に行けない、金が少ししか入らない。

浪費癖は収まらない。


金がない・・・それを理由に離婚することとなった。


正直、限界だった。


何もする気が起きない。

だが、幸いにも、給料は受け取ることが出来た。

そういう制度があったのだ・・・その金は毎月の養育費と共に元妻へと消えていったが・・・。


そうして、俺は一人になった。


唯一の救いは、母が新たな人を見つけ、その人と幸せに暮らしていたことだった。

だからこそ、俺は母を頼ることは止めた。


ずっと、苦労し続けてきた人だった。


それが、やっと・・・長い長い年月をかけて、幸せになれた。

それを、俺が壊していいはずがなかった。


俺は一人、何を食べてたのか、どう過ごしていたのか、もう思い出すこともできない。結果、長い間休職していたが、俺は警察官を辞めた。

警察官になって10年の出来事だった。


そこからは、うつ病が治ることもなく、ただ、惰性で生きてきた。

外にはあまり出ることも出来なくなった。


こんな時間に何してるんだろう?とか、仕事してないんじゃないか?とか、そういう風に思われたくなかったからだ。

今思えば、そんなこと気にしなくてもいいのにとも思うが・・・当時は本気で周囲の目が気になって仕方なかった。


そうして過ごしていくうちに金は底を尽いた。

新たな職を探したが、高卒で直ぐに警察になったから、持っている資格も無線の免許くらいで、厳しい状況だった。


つまり、何も持っていない。何もない・・・


そんな事に気付いても、別にどうでもよかった。

腹に何か入ればよかったからだ。

だから、バイトを始め、そして気が付けば、トラックの運転手となっていた。


煙草を初め、酒を飲み、ギャンブルにも手を染めた。


そこからは淡々とトラックを転がした。



そうして堕落した生活の3年後、俺の人生は幕を閉じるのだった。




「全く・・・変な夢を見せないでほしいね!これがひどいのかどうか、ミーにはよくわからないけれど、ユーにとっちゃあ、辛い出来事だったんだろう。でも今、ユーは必至に抗っている。今を大事に思っている。なら、それでいいじゃないか・・・」


そうしてまた、猫は眠りについた。






お読みいただきありがとうございました。


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