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失望者の異世界転生  作者: コバヤシ アキラ
第3章
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古猫と炎龍


『久しいな、元精霊王・・・その弱そうな人間にくっついて何を遊んでおるのだ?』


炎龍が言葉を発すると、ジンの頭上に異空間が広がる。

そこから顔を出したのは、ムーであった。


「やー!ユーも元気そうだね!すっかり炎龍ってのが板についてきたじゃないか!昔は泣き虫だったくせに、今じゃ威張り散らしてるのかい?ミーを起こしてくれたのがジンだったからね。力を取り戻しがてら、恩返ししようかなってところだよ。」


『威張れるくらいには、力は手に入れたつもりだ。お前は邪神に封印されていたんだったか?それをこんな奴が解いたと・・・興味深いな。』


炎龍は意識を失っているジンをギロリと睨み、そう言った。


「ジンはミーの主だと勘違いしているみたいだし、封印を解いた自覚すらないみたいだけどね・・・ミーが記憶を一方的に見れるって時点で、どちらが上か、気付いてほしいものではあるけれど、まっ楽しいからいいのさ。それに女神もこの子を気に入っているみたいだよ?」


『ほぅ・・・お前の物好きは変わらんのか・・・確か、人の子に加護を与えたのが邪神の気に振れたのではなかったか?』


「まーねー、でも、何となくあの子にも似ている気がするんだよ。」


『光の戦士・・・か。』


「そうそう、なんかほっとけなくてね。」


『ふん、まあそれはいいだろう。だが・・・ここは我がテリトリーだ。そこに足を踏み入れたとなれば、元精霊王と言えども、許容できぬ。我のものになるか、死ぬかを選べ。』


「へぇ~急に強気になるじゃないか。ミーが十分に力を取り戻してないと見て、そう言ったのかい?残念だよ炎龍・・・ユーは相手の強さも分析できないのか・・・」


『ふんっ千年もの間封印され、力を失った猫が、我にかなうはずもない。そこの人間とお前を喰らえば、更に我も力がつくであろう!喜ぶがいい、我の糧になるのだからな!』


そう言うと炎龍は咆哮を上げる。

細胞の一つ一つに突き刺さるような、けたたましい咆哮。


だが、ムーは静かに口を開く。


「ユーはいつからミーと同格と思ってしまったんだい?そうだなぁ・・・まず、頭が高い。」


ドンッと衝撃が森全体に響き渡った。


『ぐぅ・・・』


炎龍が地面にひれ伏した。いや、ひれ伏したのではなく、地面に身体がめり込んだ。


「ミーとの差を思い出したかい?」


『ぐ・・・ぐぅ』


「ミーは寛大だからね。今回のことは許してあげよう。勝手にユーのホームに入り込んだのはこっちだしね。あ、そうそう、生命草ユーん家にあるだろう?あれ、持ってきてくれよ。あそこの丘で待ってるからさ!いいよね?」


『わ、分かった・・・』


「話が早くて助かるよ!あ、あとさ、ジンは邪神の復活を妨げようとしている。だから、彼がユーに挑んで、もし勝った時には、力になってあげなよ!」


『ふん!その人族に我が負けるとは思えんが・・・もし、勝てたならな・・・我が勝ったらそ奴を喰らうが良いな?』


「まっその時はしょうがないのかな?それと!一番大事なことを言っておこう!ミーは猫じゃない!エンシェントキャットさ!」


―――――


「ハッ!」


刀をトラックから取り出し、身構える―――あれ?


「おはよージン、危ないところだったねぇ!」


「え?あ、おう・・・おはよう・・・」


生きてた。それだけでもびっくりだが・・・・


「どうなったんだ?」


「ん?ああ、あの獣人は油断したんだろうね、トカゲ共に襲われて食べられてしまったよ!ミーはなけなしの魔力でユーを救い、ここまで運んであげたってわけさ!」


「まじか・・・あ、ありがとう。それで・・・この生命草は?」


ムーが横たわっている隣には、生命草が3枚も置いてある。

助けてくれたことにも驚きだが、生命草があるのもまた・・・おかしな話だ。


「ああ、これかい?これはーーーそう!その襲ってきたトカゲ共が持ってたのさ!ミーは結界でジンを守り!この美しくも可憐な拳で、パンチパンチを繰り返し!ミーの空飛ぶ魔法で!ジンを優しく包み込み!そして―――」


「あーわかったわかった。本当にありがとうな!」


俺には嘘にしか聞こえん・・・が、助けてくれたのは本当なのだろうな・・・何か癪に障るけど・・・


「それでミーはちっとばかし、魔力を使いすぎてしまってね、しばらくはジンの中で眠るとするよ。実はもう限界・・・」


そう言うとムーの姿はビー玉くらいの光になると、俺の中にすっと入り込み、消えた。


「うわ!なにこれ気持ち悪!」


何かが身体に入り込むのが分かった。

何かってのは、間違いなくムーだ。ムーが光になって入り込んできたのだ。

あのムーが、クソ猫がだ。


気持ち悪いしかない。


俺の体中に悪寒がし、震える身体を手で押さえていると声が聞こえてきた。


『あのさぁ・・・助けてあげたのに・・・それはいくらなんでもミーも傷つくんだけど・・・』


『ああ、なんだ話せたのかってか念話?』


頭に直接話しかけてきた。

イザークもやっていたやつだ。


『うん。一応は話し相手って契約だしね。それは果たしていくつもりさ!』


『いや、眠ってていいぞ!』


『あまり話されても、俺もめんどくさいし。』


『それ聞こえてるからね!』


『おっと・・・すまんすまん。とはいえ、助けてくれたのは本当に感謝する。ありがとうな。』


『ふふ、ちょっとは素直になったじゃないか!その調子でもっと敬ってくれたまえよ!』


『すぐに調子に乗るんだよなお前・・・』


『そこがチャームポイントでもあるわけだしね!』


『はいはい』


そこから俺は少し休息を取った後、獣王王国まで走り出した。


ハルベルは結局、国を滅ぼしたかったのか、王座に就きたかったのか・・・

誰から毒等の情報を得たのか、何一つ分からずじまいだったが、別にもう興味はない。


一刻も早く戻り、特級を届け、加勢に入る。


俺の頭にはもう、その事しかなかった。






お読みいただきありがとうございました。


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