赤き森
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5日ほど歩き、その姿を見たとき、俺はその絶景に息をのんだ。
その森の葉は真っ赤に染まっており、紅葉の時期なのかと思えばそうではなく、1年中真っ赤なのだそうだ。
その景色は圧巻と言っていいだろう。
丘から見渡す限り全ての葉が赤く染まっている。
そんな感想等、抱いている場合ではないのだが・・・・
「なぁ・・・やっぱりもっと急いだほうが良いんじゃないのか?」
急いでいこうとしていたが、ハルベルはそれを良しとしなかった。
危険な道のりであり、ミスをすれば命を落とす。
一歩一歩確実に行くことが、任務遂行には必要なことだと言った。
確かにそうではあるのだろうが、にしてもと思う。
「ですから、急いては事を仕損じるというではありませぬか。ここに来る道中も、魔物が罠を張っていたでしょう?ジン殿は、罠をはる魔物を初めて見たとおっしゃっていたではありませぬか。油断なさらぬように、確実に行くのです。それが結果として、近道になりましょう。それに、この森の中は龍の眷属らしきもの共で埋め尽くされております。その前に休息を入れるのも、大事なことなのです。」
俺の不満顔を読み取ってか、再度、ハルベルはそう忠告してきた。
そう、この真っ赤な森こそが、目的地。
炎龍の縄張りであり、龍の出来損ないのやつらが数多くひしめき合っているのだそうだ。
だが、決して弱いわけではない。
上空は時折ワイバーンが飛び、地はトカゲのような奴らが闊歩している。
だが、そうとは言っても、確実に来たおかげか、疲れてはいないし、休息等、別に要らない。
王国では、他の騎士達が死に物狂いでゴアと戦っているのだ。
なら、急ぎ取りに行き、届け、加勢するべきだと俺は思う・・・
「そろそろ行きましょうか。」
その声で俺は、ようやくかと一つ息を吐いて、腰を上げた。
そうして真っ赤な森に入る。
ムーは少し寝ると言い残し、この道中はずっとトラックの中で寝ている。
「ミーは目覚めたばかりだからね!寝ても寝足りないのさ!」
って言っていたが、ただ単に眠いだけなのだろう。
「このまままっすぐ行けば、目的地に着くはずです。」
そこは奥に続く、人ひとり分ほどの細い獣道・・・左右が草で見えない。
広範囲索敵が俺にはあるから、まだ大丈夫だけど・・・でも割と怖いな。
「では、参りましょう。」
そう言うとハルベルさんは警戒も糞もなく、淡々と進み始めた。
「ちょっ!え?大丈夫なんですか?」
「私には感知能力がありますからね!心配には及びません。」
「は、はぁ・・・」
なら、休憩も何も、要らないじゃないかとは流石に言えなかった。
ハルベルさんが進む道のりをひたすらについていく。
ハルベルさんは槍の達人でもある。
炎を槍に纏い魔物の急所を突いていく。
俺も棒術や槍術の時にはお世話になったし、近衛騎士でもあるのだ。
戦闘能力はずば抜けている。
俺もあのころに比べて格段に強くなったと思うし、ハルベルさんとの模擬戦では一応勝ち越している。
だがやはり、ちょっとかじっただけの俺とでは、槍の扱いだけを見るならば雲泥の差がある。
二人で互いにカバーしあいながら、難なく奥まで進むことが出来た。
「ここらで少し、休憩致しましょう。」
「え?もう少しなんですよね?なら、取ってからでもいいんじゃないですか?それに、炎龍のテリトリーでもあるわけですし、早めにここを離れたほうが良さそうですけど・・・」
「すみません。ちょっと疲れてしまいまして、それに奥に行けば、龍が攻めてくる可能性もあります。休憩していきましょう。さぁ、どうぞ。」
そう言って、コップに水を入れて進めてきた。
それを仕方なしに受け取って、口へと運ぶ。
一口のみ、俺はコップを投げ捨ててその場から飛退いた。
敵意感知の警報が鳴り、俺のいた場所に炎槍が空を切った。
「お見事。」
「何の真似だ?」
「フフッフハハハ!何の真似?それはこちらのセリフなんだよ!折角苦労してフォルスを半殺しにできたってのに、それを助けようってんだからなあ!」
ハルベルはそういうや否や炎を纏った槍でこちらを狙ってくる。
だが―――
「俺は槍を使ってるわけじゃないんだ!俺には敵わないことくらいわかってるだろ!」
ハルベルの槍が達人級とはいえ、基礎能力を上げ、女神様からいただいた刀・・・もう神刀でいいか、があれば、後れを取ったりはしない。
「ククッそうでもないさ!」
「ん?毒か・・・」
視界がわずかに霞んだ―――
「フハハッ!気付いたか?さっきの水、無警戒に飲みやがって!俺は槍の達人ってだけじゃねぇ!ある方から魔物の扱いと毒を習い、そのスペシャリストになったのさ!あのゴアも某の策さ!
だがどういうことだ?スペシャリストになったってのにいっこもうまくいきやしねぇ!
フォルスのやろうにも致死量の毒を盛ってやったのに、くたばりゃあしねぇ!
しかも王女のやろうが睨みをきかせてくるから直接手が下せねえし・・・
おまけにテメェが現れて、生命草で治すなんて言いやがる!
そしたら俺の計画は全て水の粟、このままじゃあのお方に合わせる顔がねえと思っていたが、テメェが間抜けで助かったぜ!
俺にもようやく付が回ってきやがった!」
「ちっ」
フォルスさんもこいつが毒盛ってたせいで目が覚めなかったってことかよ・・・
視界が歪む・・・こんなことなら耐性を上げておくんだったと後悔するが・・・遅い。
何とかしなければならない―――
力が・・・はいらねぇ
「お前はここで炎龍にやられ、某は命からがら逃げ延びる。ゴアの大群で国が滅びりゃあ儲けもん。そうでなけりゃあー王になるのも悪かねぇ・・・まっそういうこった!これで邪魔な奴が消えてくれるわけだ!あとは王女ぶっ殺せばしめぇよ!」
魔力も気もうまく操作できず、視界が歪み・・・俺はそこで気を失った。
「まぁ・・・勝手に死ぬだろうが、一応ぶっ殺しといてやるかぁ」
そうして無慈悲にジンの首へと槍が到達する―――
その瞬間、天より飛来した真っ赤な皮膚の巨体が、ハルベルという青い毛の獣人を叩き潰した。
そうして、そいつは咆哮を上げる。
「ば・・・バカな・・・お前は俺に操られていたはず・・・」
『愚かよのう・・・あんな小さな魔人の力で我を操れるなど、あるわけがないだろう。ちょっと面白そうだと思って乗ってやったというだけで調子にのりおって、このまま踏みつぶしてやるからそのまま死ね。』
「ぐ、ぐおおおおおお」
太古から恐れられる龍が一匹、
炎龍だった。
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