ヒヨッコ
俺は像に触れるのをやめて後ろのヒューグさんに向き直ると短剣術士になったことを報告する
「おお、そうか ちなみにだが、他になんの職があったんだ?」
興味津々できいてくる
まぁ誰がどんな職業が選択できるかってのは気になるものだよな
「えーっと ちなみにヒューグさんは?」
「俺か?俺は最初剣術士と斧術士だけだったな。それで剣をⅣにしたところでステータスに選択職業追加とでてな、弓術士と狂戦士が追加されていたんだ。でも俺はそれを無視したよ。
剣をⅩまで上げて次に斧をⅣまで上げると、今度は他の術士と重戦士が追加されていた。確かレベルがⅣになるごとに選択職業が増えるってのは王都で聞いたことがあるな。まぁ、俺の場合、中途半端が嫌いだったからⅣで変えることはしなかったがな。」
ふむ、職レベルⅣ達成時に開放される感じか、でも個人差があるかもしれないし、他の条件もあり得る・・・王都なら詳しい人もいるんだろうな・・・
そういう情報があれば知りたいもんだな。
それに確かポリスとトラックもⅩまでそれぞれ効果が得られるようになっていたし、ヒューグさんの言う通りⅩまで1個づつ上げていくのが強くなるコツなのかもしれない。
しかし・・・各レベル達成時の効果が分かればもっと効率よくできそうなんだけどな・・・。
顎に手をつけて考えているとヒューグさんがもったいぶらずに早く教えろと言ってきた。
「俺は 短剣術士 弓術士 魔法士 木工師 調理師 がありましたよ。」
「そうか、短剣をあげるのは正解だな。最初に弓を上げると近寄られた際に詰んじまうが、短剣を先に覚えてからなら、近寄られても短剣がある。
これは、心にも余裕が生まれるし、それがあるとないとでは大違いだ。」
ヒューグさんの言う通りだろうな。俺には刀術があるにしろ、木刀しかないのだから、それで魔物と戦うのは頼りなさすぎる。
短剣を扱えるようになれば安心感が違うだろう。
「そうですね。アドバイスありがとうございます!
それで、できれば戦闘の指導もお願いしたいのですが・・・。」
俺は魔物と戦う技術を何一つ持っていないのだ。
ヒューグさんは冒険者だった。
なにより3つ以上をⅩにまで上げた人。
そんな人でも腕の怪我で引退するのだから、厳しい世界だ。
俺はこの人から生きる術を身に着けたい。
するとヒューグさんはニヤッとした後に快く引き受けてくれた。
「いいだろう。坊主がそこらへんの魔物に殺されない程度には鍛えてやる」
そうして戦闘の指導が始まったのだが・・・。
もうコテンパンにやられた。
地球での剣道や柔道、逮捕術での間合い?
全く意味がない。
ヒューグさんの速さは人間のそれを完全に超えていた。
手始めに打ち合うということになり、短剣を借りての試合になったのだが、俺の対人戦への自信は1秒ももたずに粉々に砕け散った。
「反応できただけすごいぞ。だが、身体強化等が俺にはある。
つまりお前は才能はあるが、それだけのヒヨッコだな。
俺との戦闘の前にレベルを上げて、せめて身体強化を極めねばならん。
強化なしで倒せるのはせいぜいホーンラビットとオオカミくらいだ。
怪我をする前に助けてやるから、ほら、行くぞ!」
俺のメンタルを砕いたヒューグさんは俺の肩を笑いながらビシビシ叩きながらそう言うと、「着いて来い」と言って、森へと歩み出した。
森に着いた途端に、嫌な気配が周りからチクチク伝わってくる。
一番違和感の近い方向に顔を向けると、ヒューグさんは、
「さすがだな。わかるのか?」
と、感心しながら言ってきた。
「まぁ、何となくですけど、嫌な感じがします。」
俺がそう言うと、魔物に会わずにここまできたことに納得したと言ってから
爽やかに
「じゃ、倒してこい」
と言うのであった。
その時の俺はまだ知らなかった。
ヒューグさんはA級冒険者まで上り詰めた戦闘のプロ、数々の冒険者に勝負を仕掛け、自身が勝つまで挑み続ける。
そんな彼についた名は、
36歳 おっさんの二つ名 【戦闘狂 ヒューグ】
彼の腕が治り 再び王国のギルドに帰ってくるなど、王国の冒険者も誰も知る由もない。




