ボッコボコ
職業を変え、王女ハンナ・ディ・レオグラルトから直々に指導を受けた。
指導・・・っていうか、ボコボコにされている。
「いっつっつつ・・・」
打ちのめされた身体が痛み、そんな声が漏れ出る。
「ジンも良くやるねぇ・・・」
クソ猫は我関せずといった感じで、指導中は離れて寝ている。
そして終われば近付いてきて、俺の肩で喚き散らす。
「お前は気楽だな・・・もうちょっといたわってくれてもいいんだぞ?ただ飯食ってるわけだし・・・」
「タダ飯だなんて人聞きの悪い・・・ミーはジンの話し相手だよ?こんなにプリティなミーがこうやって愚痴を聞いてあげたりしてるんだから、感謝されこそすれ、そんなことを言われる覚えはないよ。」
「いや、でもお前・・・俺が主じゃんか?たまには敬ってくれても良くない?」
「え!?いやいや何言ってるのさジン・・・ミーが主でしょ?」
「え?」「へ?」
「ジンがご主人とかありえないでしょ?ミーがご主猫様だよ」
「よーしっちょっと表出ろ」
「全く、ミーがジンの願いを聞き届けに来てあげたってのに、どっちが上かもわからないなんて・・・」
ムーはやれやれといった感じで溜息を吐く。
それは挑発、煽りと感じられ、俺の心に火が付いた。
そうして宛がわれた部屋から外へ出ようとすると、その前に盛大に扉が開く。
「やかましい!なんだ?訓練が物足りないならそう言ってくれ!続きをやるぞ!」
バンと扉を開けて、両腕を組み、仁王立ち・・・立っていたのはこの国の女王。
そうして首根っこを掴まれると、闘技場まで連れていかれた。
俺としては、「あっはい・・・」としか言えず・・・獣耳の女王、クソ猫のムー、首根っこ掴まれる俺・・・最早、誰が獣なのかわからねぇ。
俺はペットじゃない・・・だけど首を掴むなとも抗議できずに連れていかれた。
俺を見るムーは憐れむような目を向けている・・・主だっていうなら、助けてほしいもんだが・・・そういった目を向けたが、欠伸で返された。
覚えとけよ・・・
「じゃあ、基礎の気闘術からだな!お前は気を何となく流しているだけだろ?そうじゃなく、きちんと管理しろ!」
「きちんと管理・・・ですか?」
一応意識してはいた。それを何となくって言われるのは心外だが、でも、まぁ・・・何となくと言えば、何となく流していたのかな?とも思ってしまう。
「そうだ!どこにどれだけ流すか、全体の何割をそこに持っていくか、そして、それの最適解を見定めろ。」
「具体的にどうするんですか・・・?」
「そんなものは感覚だ!個人で気の多さには違いがある。私と戦って、それを見極めていけばいい!気のみで戦う事!いくぞ!」
そう言って地面を蹴った。
女王も気だけのはず、だが、気だけでここまで速いのか!
「今のは脚に8割、全体に2割だ!」
そう言って拳を突き出す。
俺はそれを脚に3割、全体に2割、腕に5割振り分けて受け止めるが、足の踏ん張りが効かずに後方に飛ばされる。
「くっそ!」
「気付いたか?殴る瞬間に気を移動させたんだ。受けるなら体幹をしっかりしろ!足の踏ん張りが効かないなんてのはもってのほかだ!そんなガバガバな隙を見せればっ」
そう言って、いつの間にか俺の後ろに回り込まれ、
「こうなる!」
俺の脇腹に拳が届く―――
瞬間、全気をそこに集中させ防ぐが、また吹き飛ばされた。
「今のがフェイントだ!頭を殴られてたらかち割れてたぞ!」
ごもっともすぎて何も言い返せない・・・
戦闘中に考えることが多すぎて、今までのように動けない。
「最初は動きが鈍るのも当然だ!それを呼吸と同じように、無意識にできるまで殴り続けてやる!」
そうして今日もボッコボコにされ、それから毎日これを繰り返した。
毎日毎日ボコボコにされ、だが、生命力回復のスキルのお陰か、何とか食いついていけた。
レベルは上がらないが、それぞれのスキルもちょこちょこレベルが上がり、職業もそれぞれ少しづつ上がっていった。
気の次は魔力、その次は両方、それが終わって武器を持ち、女王と打ち合った。
気と魔力を違う個所にバラバラに送り込んだりするのは、頭がこんがらがりそうになったが、何度もボコボコにされ続け、殺されると必死になってやっていたら、いつの間にか慣れていった。
これで初歩とか、たまったもんじゃないが、出来なければ死ぬだけだと言われた言葉がかなり突き刺さり、弱音を吐くことは止めた。
その分、煙草の量は増えた気がするが・・・。
ともあれ、強くなっている実感があった。
気闘術、魔力操作はⅩまであがっていたし、後は慣れだけだった。
そして、慣れてくれば、女王とも打ち合える程度にはなれた。
そんなことをずっと続けていたある日、一人の男が門の前に倒れているという連絡があった。
人族だと聞き、見に行くと―――
見た瞬間に俺は駆け寄った。
死んでいるんじゃないかと思うほど血だらけで、緑の防具はボロボロで・・・
師匠・・・戦闘狂ヒューグがそこに倒れていた。
お読みいただきありがとうございました。
ブクマ、評価は非常に励みになります。お手数ですが、していただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。




