獣王王国レオグラルト
ハルベルと名乗った男は、真っ青な毛で全身を覆い、黄色いクチバシが生えている。
翼は生えてはいないが、恐らく鳥の獣人だろう。
その男は「付いて来てくだされ」と述べると、歩き出した。
俺もそれについていく。
獣王王国レオグラルト―――
人族は全くいない。
通り過ぎる人すべてが獣人。
カナリム王国よりも繁栄しているように思う。
獣人の人達は、俺を興味深そうにチラッと見るだけで通り過ぎていく。
「森からは見えなかったけど・・・めちゃくちゃデカいな・・・」
「見えないのなんて当然だろ?ユーは結界も知らないのかい?」
「ああ、そんなものはカナリム王国にはなかったな・・・」
「ふーん。まっ聞いた感じはろくでもない国なのだろうね。迷宮の森がやせ細っていたのも、きっとその国のせいだろうさ。土地を豊かにしつつ凶暴な魔物は寄せ付けないようにしてるんじゃないかな?憶測だけどね。」
「そんなこともできるのか・・・確かにある一点を境に、木々が太くなったし、そこからカナリム王国への道中は、魔獣どもも弱くなってたな・・・」
「でも、そんなことをするとなると、膨大なマナが必要になるはずだ・・・いったいどうやっているのやら・・・ジンもあれだね!一回常識だと思っていたことを捨てることをお勧めするよ!もっと世界は広大で面白いもので溢れている。その分危険も同じだけ溢れているけどね!」
「まーそっか・・・結界なんてのもあるわけだしな。ムーはいろいろ知ってそうだな。」
「まーね!ミーは博識だから、何でも聞いてよ!大体は答えてあげられると思うよ!おしゃべりの為に召喚されたわけだしね!」
ムーを召喚したのは最初は失敗だったと思ったものの、いろいろ知ってそうだし、召喚は正解だったのかもしれない。
やかましいのも、普通に話してくれるならそこまででもないし、それよりは、俺に足りない知識を補ってくれる。
「お!その顔はミーのことを見直したのかい?フフッやっとわかってくれたかーミーは優秀なのだよ!」
と、思ったが、やっぱり失敗だったと思っておくことにしよう。
そうして、獣人がひしめく道を進んでいくと、一軒のお屋敷の前でハルベルさんは立ち止まった。
「このお屋敷にフォルス様がいらっしゃいます・・・が、実は・・・意識不明で昏睡状態なのです。」
「え?それは・・・どういうことですか?」
「そのことについては、我らが国王陛下より、お話があります。あの城でお待ちです。」
そうして示された方を見れば、灰色の頑丈そうな城が聳え立っている。
頼ってきたが、昏睡状態で話も出来ない。そして・・・国王直々に話がある・・・か。
いい話じゃなさそうだな・・・
「なぁ・・・ムー、どうするべきかな?」
「へ?どうするもこうするも、ジンが決めればいい。ここから行く当てがあればだけれど・・・」
まー確かに、最早めんどくさくても、いい予感がしなくとも、ここから先に進むしかない。
俺にはどうしていいのかもわからない。
後には戻れない。行く当てもない。
なら、イザークが示してくれた道をとりあえずは行ってみなければ、先に進むこともできない。
「分かりました。案内をお願いします。」
そうして、城へと歩を進ませた。
城の中は外見と同じように灰色一色で、通路の真ん中には赤い絨毯が、壁には所々に旗が飾られていた。
俺は無言で案内の通りに道を進む。
「こちらでございます。」
ハルベルさんは大きな扉の前で立ち止まる。
扉の両脇にはごつい甲冑を着た兵士が立っている。
「ちょっ・・・ちょっと待ってください。私はどういう感じでお会いすればいいんですか?礼儀作法なんてわかりませんよ?」
「ああ、我らが王は細かいことは気にいたしませんので、ジン殿もご心配なく。ここの王は強き者がなる慣わしでして、今の王も大会で勝ち取ったものでありますれば、ジン殿も特段配意することもありませぬ。気軽に接していただければ、それが王の望みでもありますので。」
と、ハルベルさんは言うけども・・・てか、大会で王を決めるとか・・・脳筋の集まりなんじゃないのか?
そんなので国は回るのかよ・・・心配になるレベルなんだが?
「そ、そうですか・・・まぁ今更取り繕っても意味はありませんしね・・・なるべく粗相のないようにします。」
「はい。それでは、参りましょうか。」
ハルベルさんが扉の前にいる兵士二人に頷いて見せると、二人は扉を開けはなった。
開くとそこは眩い光が目を刺激した。
黄金と赤のコントラスト・・・
煌びやかすぎて、目が開けられない。
ムーが「趣味悪・・・」と呟く。
しかるべきなのだろうが・・・すまないが同意する。
豪華すぎる。
そして目が慣れてくれば、真っ赤な絨毯の先にある黄金の椅子に座る一人の女性。
その女性の見た目は人間に近い。
よく焼けた肌、スレンダーな身体、黄色い耳を生やし、同じく黄色い、細長い尻尾が後ろから生えている。
その女性の口が開かれる。
「よくぞ参った!イザークに認められし孤高なる戦士よ!!我が名はハンナ・ディ・レオグラルト、この国の王だ!!早速戦おうじゃないか!」
「へ?いやいや!ハルベルさんの事をお聞かせ下さるんじゃないんですか?」
「ああ!だが、弱いヤツに話すことなどない!話してほしくば勝負しろ!」
「・・・・はぁ」
普通には話してくれないらしい。
しかも勝負って・・・・
王の前であるにも関わらず、俺は盛大にため息をつくのであった。
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