ほしっみっっっつ!
「そー言えばさ、ムカチャッカファイアとか、何で知ってるの?」
どうしたって引っ掛かる。そもそもそんな言葉はこの世界にはないはずだ。
で、あるならば、俺の他にも異世界転生とかしたやつがいて、そいつから聞いたとか、そんな感じに思った。
そして期待して聞いたものの、返ってきたのは―――
「ユーとミーは繋がってるって言ったろ?ちょっとユーのメモリーを見てみたのさ!」
ん・・・ちょっと待てよ?
「なら・・・ル〇語もやっぱり俺の記憶から読み取ったんじゃないのか?」
だって英語って概念もない。このクソ猫・・・わざとやったんじゃないだろうな・・・
「あ・・・え?・・・テヘペロ!」
俺の右手が真っ赤に燃える―――クソ猫叩けと輝き叫ぶ。
ゴッドチョップ!
「てい!」
右手で左肩に乗ってるクソ猫を思いっきりチョップした。
「ぐえ!ワッタッファック!何するんだい!」
「その話し方をやめろ!」
「ぐぬぬ・・・ユーが寂しそうだったから脳内記憶からトークをスタディしたっていうのに・・・・わかったよ!もう!普通に話すよ!」
「ったく!平気で何年もこの話し方だ!とか嘘つきやがって!ん?てかお前、じゃあ俺のことどこまで知ってるんだ?」
「ん?いやいや、流石にミーだってプライバシーは守るよ!記憶を見たのは話し方だけさ!・・・ほ、本当だよ!」
まぁ・・・いいか・・・別に見られて困るもんでもないしな。
むしろ説明しなくて済むし、便利かもしれん。
とはいえ、困らないとは言っても、見られたくないはないものでもあるし、見てないというのなら、それでいいか。
ムーは結局、精霊界には帰ろうとしない。
俺の肩に乗って、ずっとしゃべっているし、何か話せと根掘り葉掘り聞いてくる。
俺が話したのは、俺がこの世界に来て、見たもの、出会った人、そして経緯。
どうして俺が獣人の国に行くのか、どんな目にあったか、その話をしているときは、ムーは黙って聞いていた。
理解したのかどうかは分からないが、聞いた後は全く違う話を振ってくる。
今日のメシはなんだの、いつまで歩くんだだのと・・・そのくせそういった話は要求してくる。
「これから一緒に過ごすんだからね!お互いの事は知っていなくちゃ!」
とはクソ猫の言葉であるが、こいつは自分の事はまるっきし話さない。
「ミー?ミーはエンシェントキャット。それ以上でも以下でもないよ!」
そう言ってはぐらかした。
まあ、それくらいしか話すこともないのだろう。
精霊界は自然が猛威を振るう地であり、マナを多く含み、人が住むには厳しい環境なんだそうだ。
自然が豊かなだけで、他には何もない。
そんな場所にいたものだから、俺の話も、メシや魔獣も、全てに興味があるんだと。
その目は懐かしむような感じではあったが、楽しんでいるようにも見えた。
「さて、今日はこの辺で寝るか。」
「えー?もうちょっと行けば着くかもしれないじゃないか!こんな汚らしい場所で孤高のミーは寝れないよ!」
「・・・いや、ここで寝るんじゃない。ほら」
そう言ってトラックの異空間を広げる。
「あ・・・お前は入れないかもしれないな。」
まだ俺のトラックレベルはⅨであり、自分しか入れないと書いてあった。
なら、このクソ猫はここで寝るしかない。
いい気味だとは思ったが、
「わーお!ジン!ユーは異空間を所有してるのかい?!こりゃあすごい!おっ入れる!」
ムーはそう言うと俺の肩から飛び出し、異空間へと入っていった。
「あれ?」
とりあえず俺もそれに続く。
「俺しか入れないのに・・・何で入れるんだ?」
「んー?ミーはジンと繋がっているからね!つまりそういうことさ!」
ということらしい。
なら、一緒に歩かなくとも、ここにずっと入っていてもらえれば、しゃべり続ける猫の相手はしなくともよいのではないか。
そう思ったのだが、そこで俺は自分勝手だなと、思わずにはいられなかった。
話し相手が欲しくて呼んだのに、今度はうるさすぎるからと異空間に閉じ込めようとする。
それはあまりにも、自分勝手だった。
お互いの合意の上での召喚ではあるが、いささか自分勝手が過ぎたなと自重する。
「ん?どーしたんだい?早くご飯を食べよう!ジンのご飯はおいしいからね!コーヒーとかいうのは泥水よりも酷い味だったけど・・・」
精霊も食事はする。
ムーは自称美食家らしく、俺の料理を毎回星の数で評価する。
「ほしっみっっっつ!」
尚、これも記憶を覗いたからこそ知っているものだと俺は思っている。
ムーは吹けない口笛を吹いて誤魔化しているようだが・・・
孤独から一転、にぎやかな奴と共にムーが短い手を指し示す方向を毎日歩き続けた。
そして、どれくらい歩いただろうか、ついに、人工物に辿り着く。
レンガでできた壁。
それが左右にずっと伸びていた。
「これが獣人の国?」
「ああ、昔も今も、壁は変わってないようだね。」
「ほーん、まぁ、行ってみるか・・・」
「いこーいこー!早くおいしいものを食べよう!」
こちら側にも扉があり、そこに近づくと、
「そこで止まれ!お前!何者だ!」
と、その扉の方から声が聞こえた。
「あー人族のジンです。青の公爵の護衛、イザークさんから、フォルスさんを訪ねるよう言われて来たのですが・・・あ、これが青の印です。これを見せれば、きっと力になってくださると言われたのですが・・・」
「む・・・それは正しく青の印。イザーク様の匂いもするな・・・よし、そこでしばらくまっていろ!」
え・・・その位置から、この指輪の匂いがわかるん・・・?
ああ、いや、返事だ返事。
「はいっ!よろしくお願いします。」
そうして待つこと数分。
ゴゴゴゴゴゴゴと重そうな扉が開き、中から獣の耳や、尻尾をはやした人たちが出てきた。
「ようこそ獣王王国レオグラルトへ。入国の許可が下りました。私、ハルベルがフォルス様の元までお連れ致します。どうぞ付いて来てください。」
そう言って、その中の一人が頭を下げた。
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