孤独に耐えきれず・・・
あれからおよそ一か月がたった。
トラックのスキルによって、睡眠はきちんととれ、魔法によって不摂生にもならない。
だが・・・俺はずっと迷宮の森をさまよっている。
進んでは襲い掛かってくるゴリラを倒して、積み上げて現在地を山で確認して・・・また進んで積み上げてを繰り返してはいるが、全くもって終わりが見えない。
でも、残り3年しかない。いや、3年もない。
それまでに自分が納得のいく強さを、ダンを圧倒しうる強さを身につけなければならない。
俺の魔法の付与も、戦いも全てを見ていたイザークは、手を組んでも勝てないと、そう言った。
そもそもの根源を叩かなければいけないのもそうだが、ダンにすら、未だに及ばないと言われれば、やはり、もっと力が必要になる。
最早、潜在能力のゴリ押し等、役には立たないのだ。
赤鬼も、この森に住むマンモスも、煙草を吸って余裕ぶっこいてでも勝てるようにならなければ、それほどの自信を付けなければならないと、そう思った。
だが、その前にまず、拠点がほしい。
食糧は彷徨っている間、トラックにストックしたものを食べ続けてきた。
しかし、さすがに残りは少ない・・・そろそろ補充しなければならない。
それにイザークは言った。
フォルスという獣人族に会えと、力になってくれると―――
きっと、今より強くなる方法を知っているのだろう。
なら、早急に会わなければいけない。
だが・・・獣人の国がこの先に本当にあるのか、ずっと不安になっている。
いや、それよりも―――孤独だ。
自分で決断し、進み始めたものの、やはり、一人というのは、心細く、話し相手もいないというのは、ひどく心を暗くした。
相手をしてくれるのはゴリラや狼に似た魔獣のみで、相変わらず、マンモスは避けて通った。
余裕を持って倒せなければならないが、今はまだ怪我を負うわけにもいかず、逃げの一手だ。
こいつらは魔獣は叫ぶばかりで、話してはくれず、今は話し相手がほしい。
人じゃなくてもいい、何となく話せば、話し返してくれる。
そんな存在がほしかった。
因みにだが、あの時の、ジークフリードへの一太刀はどうやっても再現できない。
そもそもその前段階の、あの感覚が出来ないのだ。
全てがわかるような、見通せるようなあの感覚。
あれはただの勘違いで、ジークフリードがただの雑魚だったとでもいうのだろうか。
何度やっても再現できず、とは言っても目を瞑ってむぅむぅ唸るだけだが、出来ないと分かれば心の片隅に置いておくしかあるまい。
出来たらラッキーと考えておけばいいのだ。
そもそも俺には才能なんてものはない。
場数を他の人よりも多く積んでいくしかないのだ。
話が脱線したが、話し相手が欲しい。
一応、手はある。
―――精霊召喚。
これをすれば、話し相手はでてくるだろう。
だが、召喚すれば、それが俺と繋がる。
つまり、二度と変更とかはできないし、そいつが俺のマナをどれくらい消費するのかも分からない。
だいたいは召喚者の半分だと言われているが、そもそも残量が確認できないのだ。
俺がどれくらいのマナ・・・MPを持っているかすら分からない。
まぁ、最近は残量とか、そういったものを気にしなくなったので、それなりにはあるのだろうが。
ともあれ、話し相手が欲しいだけで召喚するというのも、おかしな話だ。
最初は精霊は強いと思っていたが、今となってはそれほど興味を抱かない。
気に入られなければならないというのも、召喚を躊躇わせていた。
だが・・・しかし。
これほどまでに孤独が寂しいと感じることになるとは思わなかった。
一人が好きだった俺としては、考えられないことだ。
でも人とは変わるもの。
俺も変わったのだろう。
ネットもこの世界にはないしな。
「やるだけやって・・・変なのだったら二度と召喚しないってのもいいのかもしれない。」
俺がもう少し正常であれば、こんな考えにはならなかったと思う。
一人が寂しいから、召喚という名の契約をする。
対価はマナ。
下手したら、今までよりマナが少なくなって弱くなるというのに、1か月もの間、ただ黙々と歩き続け、出会うのは同じ魔獣ばかり・・・正直、気がめいっていた。
「よし・・・えっと確か・・・」
馬鹿な俺は教えてもらった魔法陣を地面に描き始める。
「あれ?どうだったっけか・・・ここはこうで・・・ああ、メモをトラックに入れてたな。」
焦る気持ちを抑えて、メモを見ながら、慎重に描いていく。
ここをミスっちゃいけない。
正確に・・・後で失敗しとけばよかったと思うのに、何のミスもなく、それは出来上がった。
「よーし!上出来だ!」
魔法を使って奇麗な円を描き、その中にメモの通りに文字を描く・・・完璧な仕上がり。
「あとは、ここに己のマナを注ぎ込み、語り掛けるんだったかな?」
俺は魔法陣にマナを注ぎ込んだ。
すると魔法陣は青く輝いていく―――
込めれば込めるほどいい精霊が出るというわけではなく、語り掛けに応じてくれるかどうかということらしい。
ということで、俺も語り掛けることにする―――因みにマナはありったけを注ぎ込んだ。
リーゼ達が間違えている可能性も無きにしも非ずだしね。
「えーっと・・・えー・・・あのー・・・」
で、語り掛けようとは思ったものの、何と語り掛ければいいものか・・・
「えー精霊さん?もしよろしければ、私の所に来てください。お話でもしましょう」
そう呟いたり、念じたり、とりあえずそんな感じでやってみた。
すると―――
カッ!!
と魔法陣から光があふれ出す。
「うおっ!」
思わず左手で目を守る―――しばらくすると、光が収まった。
「ヤッフーーーー!!!」
変な声が聞こえ、光が収まった魔法陣を見る。
その上には、小さな黒い猫が両手を上に掲げて立っていた。
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