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失望者の異世界転生  作者: コバヤシ アキラ
第2章
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悲しみは雨とともに

3万PV突破誠にありがとうございます!


気付けば、俺はルーシーを抱きしめていた。


「なぁ・・・何でここまでするんだ?」


「私は・・・ジン・・・お前と・・・一緒にい・・られれば・・それでいい・・・」


周囲に雨が降ってきた。都合がいい、俺の目から涙が溢れていたから・・・


「ルーシー・・・俺には何もない。俺と一緒にいたって、不幸にしかならない。だから、一緒には行けない。連れていけない・・・諦めてくれ・・・お願いだ。」


「でもな・・ジン・・・わたしは、気付いたんだ・・・わたしは・・・お前が・・・好きなんだ・・って」



声にならない声が出た。

声が出ない代わりに、強く、抱きしめた。


純粋に・・・嬉しかった。


そして、気付いてしまった。



ああ・・・そうか、俺も、ルーシーが好きなんだ・・・と。


多分、出会った時から・・・


一目見たときから、惹かれていたんだ。



そっか・・・



こんな感情は、いつ以来だろう。

人を好きになるのなんて、いつ以来だろう。


一緒にいたいと思ったのは・・・いつ以来なのか・・・


「ルーシー・・・それなら、やっぱり、君を連れていけない。」


俺も好きになっていたんだ。ずっと前から。


でも、俺に彼女を幸せにできる自信はない。

この状態から、連れ出せる勇気もない。


俺はヘタレで、気が弱くて、頑固で・・・感情的で・・・

こんな俺では、ルーシには釣り合わない。


いや、そういうことじゃないか・・・



このまま抱きしめていたい。


でも・・・それは敵わない。

・・・俺には力がないから。


この場をどうにかできる力がないから。


いいように転がされて、嘲笑れて、結果的に逃げるのだから。


そんなのに、彼女を巻き込みたくはない。

彼女の大事な家族を、悲しませたくはない。


俺には出来なかった。

前世では自分の家族を悲しませることしかできなかった。


彼女には、そうなってほしくはない。

失望してほしくなんかない。


俺が出来なかったくせに、偉そうにと思うかもしれない。

でも、出来なかったからこそ、後悔したからこそ・・・それだけは、やってはいけない。


だから、連れてはいけない。



「なん・・で?・・・他には、何も・・・いらない・・・お願い・・・」


ルーシー・・・・こんな俺に・・・ありがとう・・・。


「俺は3年後・・・ケリをつけに戻ってくる・・・その時に・・・もし、気持ちが変わっていなかったのなら・・・また、パーティーでも組もう。」


俺は精一杯の笑顔を向けた。

多分顔はしわくちゃで、歪んでて・・・泣いてるのだってバレてただろう。


ルーシーも、そんな顔をして・・・・押し黙った後、小さく、微かに聞こえるくらいの声で、


「ぅむ・・・」


そう言って、ルーシーは気を失った。


俺はそっと地面に卸す。

特級ポーションをルーシーに振りかけ、イザークを見る。


彼は微かに頷いた。


任せろってことだろう。俺も小さく頷き返し、踵を返す。

出口から出ようとして歩き出した。


ぼやけた視界に道を阻むヤツが一人。


「か弱い女に手を上げるクズだったとはねぇ!まっ、お前が捨てていくってゆーなら、見た目は悪くないし、私が責任を持って可愛がってあげるよ・・・使えなくなったらお前と同じで捨てるけどね。」


「・・・」


確かに女に手を上げる奴はクズだ。

俺もクズなのかもしれない。


でも、俺はルーシーを一人の戦士として見た。

言い訳かもしれないが、対等に戦った。


そこに男女なんて考えはない。


それに、ルーシーが、か弱い?

何の冗談だ?何言ってんだコイツ。


あんなに心が真っすぐで、強いヤツを俺は知らない。


お前もダンと同罪なんだ。

こうなったのも、全部・・・全て・・・お前らのせいなんだ。


そしてそれより許せないのは―――



「な・・・んだ・・・その殺気は!ハハッ私に勝てるとでも思ってるのか!」



「お前なんかが、触れていい女じゃない。」



そいつは剣と盾を持っていた。

両方が、光り輝く―――


刀の柄に手を置く。


ほんの少しだけ、気持ちが軽くなったからなのか、生きる意味が復讐だけではなくなったおかげか、身体が軽く感じた。


そして、周囲が良く見通せた。

雨が降っているにもかかわらず、草木の揺れる音も、そいつの踏み込む足音も、しっかりと、クリアに聞き取れた。


どう動くかが、手に取るようにわかった。


そいつは盾を構えながら、剣を真上から振り下ろしてきた。

半身で躱す。


刀を抜いた。


黒い雷を纏った女神からいただいた漆黒の刀。


それはあっさりと、そいつ、ジークフリードの首に届き、その首を―――身体から引き離した。

刀を抜いた時には、結果が見えていた。










初めての感覚に戸惑った。

この感覚を忘れないように記憶に留める。


一先ずここから離れなければならない。

後ろ髪を引かれながら、しかし、振り返ることは決してせずに。



ただ、小雨の降る、夜明けの道をひたすらに歩き続けた。




お読みいただきありがとうございました。

お陰様で2章完結まで書くことが出来ました。ありがとうございます!


ブクマ、評価は非常に励みになります。お手数ですが、していただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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