悲しみは雨とともに
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気付けば、俺はルーシーを抱きしめていた。
「なぁ・・・何でここまでするんだ?」
「私は・・・ジン・・・お前と・・・一緒にい・・られれば・・それでいい・・・」
周囲に雨が降ってきた。都合がいい、俺の目から涙が溢れていたから・・・
「ルーシー・・・俺には何もない。俺と一緒にいたって、不幸にしかならない。だから、一緒には行けない。連れていけない・・・諦めてくれ・・・お願いだ。」
「でもな・・ジン・・・わたしは、気付いたんだ・・・わたしは・・・お前が・・・好きなんだ・・って」
声にならない声が出た。
声が出ない代わりに、強く、抱きしめた。
純粋に・・・嬉しかった。
そして、気付いてしまった。
ああ・・・そうか、俺も、ルーシーが好きなんだ・・・と。
多分、出会った時から・・・
一目見たときから、惹かれていたんだ。
そっか・・・
こんな感情は、いつ以来だろう。
人を好きになるのなんて、いつ以来だろう。
一緒にいたいと思ったのは・・・いつ以来なのか・・・
「ルーシー・・・それなら、やっぱり、君を連れていけない。」
俺も好きになっていたんだ。ずっと前から。
でも、俺に彼女を幸せにできる自信はない。
この状態から、連れ出せる勇気もない。
俺はヘタレで、気が弱くて、頑固で・・・感情的で・・・
こんな俺では、ルーシには釣り合わない。
いや、そういうことじゃないか・・・
このまま抱きしめていたい。
でも・・・それは敵わない。
・・・俺には力がないから。
この場をどうにかできる力がないから。
いいように転がされて、嘲笑れて、結果的に逃げるのだから。
そんなのに、彼女を巻き込みたくはない。
彼女の大事な家族を、悲しませたくはない。
俺には出来なかった。
前世では自分の家族を悲しませることしかできなかった。
彼女には、そうなってほしくはない。
失望してほしくなんかない。
俺が出来なかったくせに、偉そうにと思うかもしれない。
でも、出来なかったからこそ、後悔したからこそ・・・それだけは、やってはいけない。
だから、連れてはいけない。
「なん・・で?・・・他には、何も・・・いらない・・・お願い・・・」
ルーシー・・・・こんな俺に・・・ありがとう・・・。
「俺は3年後・・・ケリをつけに戻ってくる・・・その時に・・・もし、気持ちが変わっていなかったのなら・・・また、パーティーでも組もう。」
俺は精一杯の笑顔を向けた。
多分顔はしわくちゃで、歪んでて・・・泣いてるのだってバレてただろう。
ルーシーも、そんな顔をして・・・・押し黙った後、小さく、微かに聞こえるくらいの声で、
「ぅむ・・・」
そう言って、ルーシーは気を失った。
俺はそっと地面に卸す。
特級ポーションをルーシーに振りかけ、イザークを見る。
彼は微かに頷いた。
任せろってことだろう。俺も小さく頷き返し、踵を返す。
出口から出ようとして歩き出した。
ぼやけた視界に道を阻むヤツが一人。
「か弱い女に手を上げるクズだったとはねぇ!まっ、お前が捨てていくってゆーなら、見た目は悪くないし、私が責任を持って可愛がってあげるよ・・・使えなくなったらお前と同じで捨てるけどね。」
「・・・」
確かに女に手を上げる奴はクズだ。
俺もクズなのかもしれない。
でも、俺はルーシーを一人の戦士として見た。
言い訳かもしれないが、対等に戦った。
そこに男女なんて考えはない。
それに、ルーシーが、か弱い?
何の冗談だ?何言ってんだコイツ。
あんなに心が真っすぐで、強いヤツを俺は知らない。
お前もダンと同罪なんだ。
こうなったのも、全部・・・全て・・・お前らのせいなんだ。
そしてそれより許せないのは―――
「な・・・んだ・・・その殺気は!ハハッ私に勝てるとでも思ってるのか!」
「お前なんかが、触れていい女じゃない。」
そいつは剣と盾を持っていた。
両方が、光り輝く―――
刀の柄に手を置く。
ほんの少しだけ、気持ちが軽くなったからなのか、生きる意味が復讐だけではなくなったおかげか、身体が軽く感じた。
そして、周囲が良く見通せた。
雨が降っているにもかかわらず、草木の揺れる音も、そいつの踏み込む足音も、しっかりと、クリアに聞き取れた。
どう動くかが、手に取るようにわかった。
そいつは盾を構えながら、剣を真上から振り下ろしてきた。
半身で躱す。
刀を抜いた。
黒い雷を纏った女神からいただいた漆黒の刀。
それはあっさりと、そいつ、ジークフリードの首に届き、その首を―――身体から引き離した。
刀を抜いた時には、結果が見えていた。
初めての感覚に戸惑った。
この感覚を忘れないように記憶に留める。
一先ずここから離れなければならない。
後ろ髪を引かれながら、しかし、振り返ることは決してせずに。
ただ、小雨の降る、夜明けの道をひたすらに歩き続けた。
お読みいただきありがとうございました。
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