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失望者の異世界転生  作者: コバヤシ アキラ
第2章
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ジンVSルーシー


「ジン・・・これは、ジンがやったのか・・・?」


周りの惨状を見て、ルーシーは聞いてくる。


「ああ」


「何故だ!何で・・・私に何も言ってくれないんだ!」


それは・・・言うタイミングなんてなかっただろうが・・・


それより・・・


「ルーシーこそ・・・何で来たんだ・・・」


「それは・・・ジンに・・・いや、ジンを止めるためだ!」


「クク・・・そうか、君はジン君の主だったね、私たちは気を使ってしまったけれど、確かに、決着はルーシー君がするべきだろうね。私は見ていられないよ・・・イザーク君、見届け人を頼めるかな?」


「御意。」


ダンが横から入って許可を出し、イザークが見届け人となった。


「あ、そうだ。」


ダンは思い出したかのように俺に近づいてくる。


「お、王太子殿下!危険です!」


グレイスが慌てて止めようとする。だが、ダンは右手をグレイスの前に出すと、なんてことはないように近づいて来た。


「大丈夫さ、ルーシー君を見て、ジン君も一時、良心が戻ったように見えたから、最後のお別れを言おうと思ってね。」


そんな事を言うが、攻撃されないと思ったのだろう。

ルーシーの後ろに、ジークフリードが控えており、その手は剣の柄にあてている・・・


何時でも殺せるんだぞと、言わんばかりに。

そうして近づいてくると、


「フフッ君は本当に愚かだね・・・君の居場所はもうない。ここにも、国にも・・・いやぁ、短期間でちょっと力をつけてきたみたいだけど、やっぱりガッカリだなぁ・・・誰も殺せやしない。君の刃は僕には届かない。ざまぁないね。最後にルーシーが殺してくれるんだ。良かったじゃないか・・・じゃあね間抜け。」


そう囁いて、踵を返す。


「じゃあみんな、ルーシー君に任せて学院に入ろう。」


そうして気絶している者は担がれ、それぞれが学院へと入っていった。

残っているのは5人、学院の門にジークフリード、入口にグレイス、俺とルーシーの間にイザークがそれぞれ立っている。


俺の逃げ場はなくしているのだろう。



ダンに煽られたが・・・正直、何とも思わない。


それどころではない。



ルーシーが俺に剣を向けているから・・・


「本当に・・・戦うのか?」


俺の声が若干震えているのが分かる。

だってルーシーは俺が狂ったとは思っていない。

グレイスらから聞いているはずだから・・・


「ああ、みなを傷つけたことに私は怒っている。それに、私のもとからいなくなるのだろう?何も言わずに行こうとしたのだろう?」


何も言ってくれないんだって、別れのことか・・・黙っていなくなろうとしたことか・・・


「ごめん」


俺はそれしか言えなかった。


「許さぬ・・・私たちはパーティーだ!そうだろ!」


「そうだな」


「なら・・・なぜ一緒に来いって言ってくれないのだ!」


一緒に来てくれって言えば、来てくれるのか・・・

確かにお前が来てくれるなら、旅は寂しくもない。


むしろ・・・楽しいだろうな。


また、あの時のように冒険する。


知らない土地に行って、ダンジョンに潜って、きっと笑いながら、旅が出来るだろう。




でもさ、俺は今や罪人なんだよ。


そう簡単な問題じゃない。


この国じゃ、罪人なのに、一緒に来れば、ルーシーも公爵家ではいられまい。

自分の家に多大な迷惑もかけるだろう。


そしたら、もう、貴族ですらなくなる。

家族とも別れることになるだろう。


むしろ、罪人にされてしまうかもしれない。


そんなのは、俺は耐えられない。


そうなることも考えて、分かったうえで言ってるのか?


ルーシーだって馬鹿じゃない。

でも、俺に似て、直情型ではある。


だから、そこまでの考えに至っていないのかもしれない。


優しく、気高く、真っすぐで、俺にないモノを沢山持ってる強い女性だ。

だからこそ、巻き込みたくはない。


標的は俺だけだ。


俺は目立ちすぎた。


だから、こうして狙われた。


確かに、俺らはパーティーだ。


そう、ただのパーティーでしかない。


なら、こんな俺とはおさらばするべきだ。


「俺はパーティーを抜ける・・・これでいいか?」



なるべく・・・冷たく、そう聞こえるように・・・

お前など知るかと、言わせるために・・・



それが、ルーシーの為になるならば、俺はそれを演じよう。

ついてくるなどと、バカなことは言わせない。


「なら・・・もし、私が勝ったら、私もともに行く。私は・・・本気だ。」


「俺に勝てるわけないだろうが・・・」


「やってみなければわかるまい!いくぞっ!」


ルーシーが爆炎と爆風を足に乗せ、突っ込んできた。


俺が教えた魔法―――俺と同じ移動方法。


俺も同じく魔法を足に乗せて、力強く蹴った。


俺は本気だ・・・本気で戦う。


刀には電撃を纏い、思い切り振るう。


キンッ!と刀と剣の交わる音―――


「ぐぬぅぅ」


ルーシーから声が漏れる。


そりゃそうだ。ダンに同じのをくらった時、俺だって悲鳴をあげた。


絶対的な力の差。


それがある以上、俺の勝ちは揺るがない。


「終いだ。ルーシー、お前は荷物になるだけ、足手まといだ。」


「ま、まだだ・・・」


剣を地面に突き立て、ルーシーは立ち上がった。


「何度やっても、何も変わらない。何の意味もない。」


「やってみなくちゃ!分からないだろうが!」


そうして、また刀と交わり、悲鳴をあげる。


だけど、必ずまた立ち上がった。



何度も・・・



何度も何度も何度も、立ち向かってきた。


「はぁ・・・はぁ・・・ま、まだ・・だ!」


「もう、いい加減にしてくれ・・・」



もう見たくない。


鎧はボロボロになり、身体は所々焼けていて、切り傷からは血も流れている。

いくら死なないように弱めているとはいえ、電撃だ・・・常人が耐えられるレベルをとうの昔に超えている。


俺はただ・・・納得させたい。


諦めさせたい。


じゃなきゃ、もしかしたら追いかけてくるかもしれない。

そんなのは意味がない。


なら、ここで・・・俺を憎んだっていいから・・・ちゃんと残ってほしい。


ルーシーはまた立ち上がる。

そして、ゆっくりと、フラフラと歩いて俺の前に来た。


振るえる腕を精一杯あげて、俺の胸元にコツンと当てた。


「どうだ・・・ゆだん・・・した・・だろ?わたしの・・かち・・だ・・・」



誰がどう見たって、俺の勝ちだった。

最早、立つことすらできない女と、拳を胸元に当てられた男、どうやったって、男の勝ちだ。


でももう、勝負なんてのは、どうでもよくなっていた。

俺はただ、目の前の少女を、崩れ落ちていく少女を、


泣きながら抱きしめた。



お読みいただきありがとうございました。


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よろしくお願いします。

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