ジンVSルーシー
「ジン・・・これは、ジンがやったのか・・・?」
周りの惨状を見て、ルーシーは聞いてくる。
「ああ」
「何故だ!何で・・・私に何も言ってくれないんだ!」
それは・・・言うタイミングなんてなかっただろうが・・・
それより・・・
「ルーシーこそ・・・何で来たんだ・・・」
「それは・・・ジンに・・・いや、ジンを止めるためだ!」
「クク・・・そうか、君はジン君の主だったね、私たちは気を使ってしまったけれど、確かに、決着はルーシー君がするべきだろうね。私は見ていられないよ・・・イザーク君、見届け人を頼めるかな?」
「御意。」
ダンが横から入って許可を出し、イザークが見届け人となった。
「あ、そうだ。」
ダンは思い出したかのように俺に近づいてくる。
「お、王太子殿下!危険です!」
グレイスが慌てて止めようとする。だが、ダンは右手をグレイスの前に出すと、なんてことはないように近づいて来た。
「大丈夫さ、ルーシー君を見て、ジン君も一時、良心が戻ったように見えたから、最後のお別れを言おうと思ってね。」
そんな事を言うが、攻撃されないと思ったのだろう。
ルーシーの後ろに、ジークフリードが控えており、その手は剣の柄にあてている・・・
何時でも殺せるんだぞと、言わんばかりに。
そうして近づいてくると、
「フフッ君は本当に愚かだね・・・君の居場所はもうない。ここにも、国にも・・・いやぁ、短期間でちょっと力をつけてきたみたいだけど、やっぱりガッカリだなぁ・・・誰も殺せやしない。君の刃は僕には届かない。ざまぁないね。最後にルーシーが殺してくれるんだ。良かったじゃないか・・・じゃあね間抜け。」
そう囁いて、踵を返す。
「じゃあみんな、ルーシー君に任せて学院に入ろう。」
そうして気絶している者は担がれ、それぞれが学院へと入っていった。
残っているのは5人、学院の門にジークフリード、入口にグレイス、俺とルーシーの間にイザークがそれぞれ立っている。
俺の逃げ場はなくしているのだろう。
ダンに煽られたが・・・正直、何とも思わない。
それどころではない。
ルーシーが俺に剣を向けているから・・・
「本当に・・・戦うのか?」
俺の声が若干震えているのが分かる。
だってルーシーは俺が狂ったとは思っていない。
グレイスらから聞いているはずだから・・・
「ああ、みなを傷つけたことに私は怒っている。それに、私のもとからいなくなるのだろう?何も言わずに行こうとしたのだろう?」
何も言ってくれないんだって、別れのことか・・・黙っていなくなろうとしたことか・・・
「ごめん」
俺はそれしか言えなかった。
「許さぬ・・・私たちはパーティーだ!そうだろ!」
「そうだな」
「なら・・・なぜ一緒に来いって言ってくれないのだ!」
一緒に来てくれって言えば、来てくれるのか・・・
確かにお前が来てくれるなら、旅は寂しくもない。
むしろ・・・楽しいだろうな。
また、あの時のように冒険する。
知らない土地に行って、ダンジョンに潜って、きっと笑いながら、旅が出来るだろう。
でもさ、俺は今や罪人なんだよ。
そう簡単な問題じゃない。
この国じゃ、罪人なのに、一緒に来れば、ルーシーも公爵家ではいられまい。
自分の家に多大な迷惑もかけるだろう。
そしたら、もう、貴族ですらなくなる。
家族とも別れることになるだろう。
むしろ、罪人にされてしまうかもしれない。
そんなのは、俺は耐えられない。
そうなることも考えて、分かったうえで言ってるのか?
ルーシーだって馬鹿じゃない。
でも、俺に似て、直情型ではある。
だから、そこまでの考えに至っていないのかもしれない。
優しく、気高く、真っすぐで、俺にないモノを沢山持ってる強い女性だ。
だからこそ、巻き込みたくはない。
標的は俺だけだ。
俺は目立ちすぎた。
だから、こうして狙われた。
確かに、俺らはパーティーだ。
そう、ただのパーティーでしかない。
なら、こんな俺とはおさらばするべきだ。
「俺はパーティーを抜ける・・・これでいいか?」
なるべく・・・冷たく、そう聞こえるように・・・
お前など知るかと、言わせるために・・・
それが、ルーシーの為になるならば、俺はそれを演じよう。
ついてくるなどと、バカなことは言わせない。
「なら・・・もし、私が勝ったら、私もともに行く。私は・・・本気だ。」
「俺に勝てるわけないだろうが・・・」
「やってみなければわかるまい!いくぞっ!」
ルーシーが爆炎と爆風を足に乗せ、突っ込んできた。
俺が教えた魔法―――俺と同じ移動方法。
俺も同じく魔法を足に乗せて、力強く蹴った。
俺は本気だ・・・本気で戦う。
刀には電撃を纏い、思い切り振るう。
キンッ!と刀と剣の交わる音―――
「ぐぬぅぅ」
ルーシーから声が漏れる。
そりゃそうだ。ダンに同じのをくらった時、俺だって悲鳴をあげた。
絶対的な力の差。
それがある以上、俺の勝ちは揺るがない。
「終いだ。ルーシー、お前は荷物になるだけ、足手まといだ。」
「ま、まだだ・・・」
剣を地面に突き立て、ルーシーは立ち上がった。
「何度やっても、何も変わらない。何の意味もない。」
「やってみなくちゃ!分からないだろうが!」
そうして、また刀と交わり、悲鳴をあげる。
だけど、必ずまた立ち上がった。
何度も・・・
何度も何度も何度も、立ち向かってきた。
「はぁ・・・はぁ・・・ま、まだ・・だ!」
「もう、いい加減にしてくれ・・・」
もう見たくない。
鎧はボロボロになり、身体は所々焼けていて、切り傷からは血も流れている。
いくら死なないように弱めているとはいえ、電撃だ・・・常人が耐えられるレベルをとうの昔に超えている。
俺はただ・・・納得させたい。
諦めさせたい。
じゃなきゃ、もしかしたら追いかけてくるかもしれない。
そんなのは意味がない。
なら、ここで・・・俺を憎んだっていいから・・・ちゃんと残ってほしい。
ルーシーはまた立ち上がる。
そして、ゆっくりと、フラフラと歩いて俺の前に来た。
振るえる腕を精一杯あげて、俺の胸元にコツンと当てた。
「どうだ・・・ゆだん・・・した・・だろ?わたしの・・かち・・だ・・・」
誰がどう見たって、俺の勝ちだった。
最早、立つことすらできない女と、拳を胸元に当てられた男、どうやったって、男の勝ちだ。
でももう、勝負なんてのは、どうでもよくなっていた。
俺はただ、目の前の少女を、崩れ落ちていく少女を、
泣きながら抱きしめた。
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