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失望者の異世界転生  作者: コバヤシ アキラ
第2章
78/137

3年後に


「ハッハッハ!やはり!魔法を使えば私より強いじゃないか!若!ここは私にお譲りしていただきたく!」


「ハッ!一人で戦いたいってか・・・まぁ、好きにしたらいい。」


「ありがたい!ジン殿、そなたのような強者と戦えるのが私の楽しみでもある。私が相手では、少々役不足かもしれぬが・・・まず王子を狙うのであれば、私を倒してからにしていただく!」


グレイスとイザークはそんな会話をしてイザークは俺に向き直る。


「役不足だと思うなら引っ込んでてくれ。」


「ハッハ!なら、確かめてみてくだされ!」


「ちっ!」


イザークの顔は兜で見えない。見えないが、雰囲気がガラリと変わり、大剣の切っ先を俺に向け、あの時、戦った時の移動で一瞬で間を詰めてくる。


だが・・・あの時と違って隙が見当たらない。


切っ先が俺に届く寸前、俺は刀で受け止めた。

受け止めたにもかかわらず、イザークは平然としていた。


魔法を付与しているにもかかわらず、平然と受け止めたのだ。


むしろ―――


「ふんっ!」


イザークはその声とともに、俺を後方へ吹き飛ばした。


後ろに風の魔法を発生させ、地面へと着地するが、


イザークはまた、間合いを詰めてくる。


青の公爵家も・・・ダンの仲間・・・当然といえば当然だろう。

また鍔迫り合いとなる。


するとイザークの声が、俺の頭に直接響き渡るように聞こえた。


『聞いてくだされジン殿、今、直接貴方に話しております。応じるように思っていただければ会話が可能・・・戦いながら聞いてくだされ。・・・某は青の公爵家の護衛、そして青の公爵家は王国への反逆を企てている。』


念話・・・?

何を言っているんだ?反逆?そうやって隙をつく作戦か?


『それを・・・俺はどうやって信じればいい?』

俺は念話で応じた。


この男はそんな卑怯な真似はしない。


それは出会った時から、模擬戦で戦った時から、この男は戦いに関しては一切の小癪な真似はしないと、ある種信用していた。


『吹き飛ばしたのは念話で話していることを不審がられない為・・・信じる信じないは貴方にお任せ致す。まずは、聞いてくだされ・・・青の公爵家は認識を改める魔法に関しての対抗魔法を開発しております。故に、我らはジン殿が正常なことを分かっております。』


『認識を改める魔法?』


『そうです。王国と、それに連なる国々は、どうやってか、その支配領域に都合のいい解釈をするような、認識を変える様な魔法を放っているのです。』


『俺が罪人だと認識させたってことなのか?』


『左様。我らも対抗魔法は万全ではない為、ジン殿が敵に映ってしまいますが・・・それだけに留まらず、本来の歴史も、混合魔法等も、その全てが変えられております。その事実を、我らは青の領土にあるダンジョンにて発見しております・・・この認識魔法は、千年前から続いているのです。』


その事実に驚きを隠せない。



だが、確かに、ずっと不思議だった。


転生者だから思いつけたって最初は納得していた。


でも混合魔法なんて、誰もが考えることだと思う。

例えば、お湯を作り出すために水と火を合わせられないか・・・とか。


それに全属性使えるにもかかわらず、使えないと思い込んでいたルーシーと師匠も不思議だった。

それは、その魔法を見たことがないから・・・と思っていたが、師匠はA級冒険者だ。

見ていないはずがなかったのだ。


その話を聞いて、今まで疑問だったことに説明がつく。


でも、しかし、そうであるならば、


『ならなぜ・・・お前らはそちら側についている?』


『我らでは・・・まだ力が及びませぬ。ジン殿が加わったとしても・・・それは変わらぬでしょう。それに・・・』


『それに?』


『ルーシー殿がジークフリードに見張られております。何故かあなたと同じく、認識魔法にかかっていませんでした。我らが先に接触し、今は掛かったふりをしています。ただ、人質に取られてしまえば、我らは戦えても、そなたは戦えなくなる。むしろ、ルーシー殿を助けるために我らの敵になることも考えられます。』


確かに・・・ルーシーが人質になるのなら・・・俺は取り戻すために何でもするかもしれない・・・言いなりになってしまうかもしれない。


『でも何で、ルーシーは平気なんだ・・・』


『それは我らにもわかりませぬ。ジン殿も何故か、かかっておりません・・・我らはジン殿が知っているのではと思っておりましたが・・・違うようですな。』


『ああ、分からん・・・ルーシーは全属性の魔法が使えた。それは俺が教えたからだ。でも、今回の件は、顔見知りの村長を説得しようとしてもダメだった。』


『ふむ・・・分かりませぬな・・・。話は脱線しましたが・・・最も重要なことは・・・ジークフリードも、そこの王子も、邪神復活の組織の構成員でしかないという事です。』


それは・・・


『つまり、殺したとて、また同じようなことが起こるのです。』


だが、それでも・・・ダンだけは・・・


『3年・・・』


『ん?3年?』


ぽつりとイザークは念話で言う。


『3年で、若は対抗魔法を完成させ、魔法の発生源を突き止めるとおっしゃっています。ジン殿は、もし、我らに加勢していただけるのであれば・・・3年後に青の公爵家をお尋ねください。』


『つまり、ここは引けと?』


『ええ、今の貴方では、狂気に身を染めた貴方では、私にすら勝つことは敵わないでしょう。』


『やっぱお前も魔法にかかってるんじゃないのか?』


『いえ・・・私の後ろを見れば、分かることだと・・・』


言われてチラッと後ろを見る。

そこは、さっきまで俺が暴れていた場所。


ジャスミン、フェリス、ジョナサン、教官が右の壁際で所々に擦過傷をつけて気絶しており、ゾーイ、リーゼ、クレアは戦意を無くしてへたり込んでいる。


そう・・・俺がやった。

俺がやってしまった。



認識魔法によって俺を敵としか見れなかったっていうのに・・・それを邪魔だといって殴り飛ばした。

まんまとダンの戦略にのってしまった。



イザークが、これを分からせるために、隙をつくるためにやったのであれば、成功していた。

俺は間違いなく、攻撃されていれば、今、死んだはずだ。


『分かっていただけましたかな?』


『あ、ああ・・・ああ、分かったよ・・・俺が馬鹿だった・・・でも・・・』


『ルーシー殿はお任せを・・・』



別れを言えないのは辛い。


孤独を味わうのは辛い。


目の前に諸悪の根源がいるのに、手が出せないのが辛い。


俺は・・・まだ弱いのか。


殺すと躍起になって、イキッてきたってのに、逃げ帰らなければならないのか。

何処に逃げればいいのか・・・どこに行けばいいというのか・・・


『迷宮の森の奥・・・獣人族の国を目指してください。そこで、フォルスという獣人をお探しください・・・私どもの名を言って、右ポケットに忍ばせた青の印を見せれば、きっと力になってくれましょう。そこは認識魔法の範囲外でございます。ジン殿であれば、たどり着けるかと。』


もう俺はイザークを信じ切っていた。

隙を突かれなかったのもそうだし、話してる間、攻防を繰り広げていたが、絶妙な力加減で互いが念話出来る様ように調節していた。

右ポケットの中にはいつの間にか指輪が入っていた。


これらが全て演技であれば、最早俺は誰も信じれなくなるくらいには、話していることは本当だろうと思えた。


『ルーシーもそうだが、デブスも頼む。礼節もわきまえず、申し訳なかった。貴方になら、二人を託すこともできる。誓っていただけるだろうか・・・』


『ええ、この身にかえましても。』


それをきいて、安心する。

青の公爵家であるグレイスとは話したこともない。


だからこそ、イザークが俺と対峙したのだろう。

そして、イザークになら、俺は安心して任せることもできると思えた。


復讐心は、この怒りは、3年後にぶつけると決意する。


『では、力をいれます・・・上手く吹き飛んで、そのままお逃げください。』


分かった。


そう言おうとしたときだった。




―――「ジン!」



聞きなれた声が、もうずいぶんと聞いていなかったような、懐かしい声が俺の耳に届いた。


ハニーブロンドの長い髪、琥珀色の瞳、見間違いようがない。



俺は泣き出しそうになるのをグッと堪えた。




ルーシー・オリヴァーが、瞳を潤ませてそこに立っていた。






お読みいただきありがとうございました。


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よろしくお願いします。

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