Aクラス
真夜中に入った学院は、不気味なほど静かだった。
警備も無く、簡単なほどに、あっさりと入れたことを不気味にすら感じたのだが、そうはいっても入らざるを得なかった。
ダンがいるであろうこの学院に入り、暗殺できればそれでよし、戦いになれば、刺し違えてでも、殺すという意志が俺にはあった。
ただ・・・
「よく、ノコノコと顔を出せたもんだ。」
そう冷ややかに言ったのは、教官・・・アベリ・シュナイザーだった。
学院に入ると最初にある広間、そこにはルーシー以外のAクラス全員が・・・教官にリーゼにフェリス、グレイス、イザーク、ゾーイにジョナサン、ジャスミン、ナタリー、クレアそして・・・ダン。
ルーシーがいないことに・・・焦りがうまれる・・・
ただ何故、こんな深夜なのに、待ち受けていられたのかは分からない。
ドクンと心臓が鳴るのが分かった。
俺は平常心を保つように話す。
「教官・・・みんな・・・俺はやっていない。そこの・・・ダンが全ての元凶だ。そして・・・ルーシーはどこだ?」
全員からの殺気を受けるが・・・出来る限り、取り乱さないようにそう言った。
だが、返ってきた言葉に、俺はまたもや混乱する。
「ルーシーはお前とは戦えないそうだ・・・ジークフリードが見てくれている・・・で?ダンってのはどこのどいつだ?」
何だ・・・それ・・・
それに・・・ジークフリードだと?確かダンはジークに怒られると言っていた・・・それがジークフリードの事であるならば・・・まずい・・・だが・・・ダンがどいつか、だと?
「そいつだよ!そこの一番後ろにいる!ダン・ウェイカーだ!大ウソつきの糞野郎!俺はそいつを・・・ぶっ殺しに来たんだ!」
「ジン・・・」
その呟きの方向を見る・・・胸が締め付けられた。
リーゼが、泣きそうな顔でこちらを見ていたからだ。
「リーゼ!・・・お前も、分かるだろう?」
俺は、願いを込めて、リーゼにそう言うが、返ってきた言葉は・・・
「何を言っているのですか!・・・こちらの方はこの国の王太子殿下、ダリアス・ウェルト・カナリム様だわ!・・・貴方が命を狙ったっていうのは・・・本当・・・なの?あんなに仲良さそうにしてたじゃない!」
「・・・・」
そんな事ってないだろう?そんな悲しいことなんて・・・ないだろう?
誰だよ・・・ダリアス・ウェルト・カナリム?誰だよそいつ・・・知らねーよ。
「何とか言えよ・・・ダン!」
「ジン・・・私は悲しい。貴方は私の友だと思っていた・・・それなのに、何処の誰かも分からない名前で私を呼び、暗殺を目論むなど・・・デブス君が命をかけて守ってくれなければ・・・私はもうこの世にはいなかっただろうね。邪神に蝕まれた悲しき友よ・・・せめてこのクラス全員で、弔おう。」
そう、ダンが言うと、全員が身構えた。
ダンは皆には見えないところで、ニタァっと薄気味悪い顔をした。
怒りが頂点に達する。
「ダアアアアアアン!」
刀に力を籠め、足に爆風を纏い駆けだす。
「みんな!力を貸してくれ!」
ダンは終始、俺をムカつかせた。
何が力を貸せだ・・・人をゴミとしか思っていない糞野郎が!
走り込んで直ぐ、地面が揺らいだ。
――ぅ!?
すぐさま反応し、そこから飛びのく。
何だ?・・・穴?
揺らいだ場所はポッカリと、大きな穴が開いていた。
「ふむ、これはお主には教えていないんじゃがのぉ・・・よく躱せたものじゃ。」
「ゾーイ・・・」
教えていないということは、魔法陣か・・・恐らく罠の類・・・落とし穴か・・・
「ふむ・・・お主の作る食べ物がもう食べれないとなると哀しいがの・・・それほどの瘴気・・・早く楽にさせてやるから、大人しくするのじゃ!」
「リル!お願い!」
「ウンディーネ!来なさい!」
リーゼとクレアは召喚魔法を使い、精霊を呼び出す。
「ジン・・・もうやめるの・・・」
ジャスミンは悲しそうな顔を向けるも、その拳は俺をしっかりと捉えている。
ジャスミン、フェリス、ジョナサンが前衛
ゾーイ、リーゼ、クレア、ナタリーが後衛
そして精霊が2体
ダンを教官にグレイスとイザークが守る陣営だ・・・
俺はこいつらを掻い潜っていかなきゃいけないのか・・・
気を引き締めろ。
迷宮の森に迷い込んでからの長い間・・・俺は何をするために生きてきた?
ダンを・・・殺すためだろう!
瘴気と狂気を身に纏っているように見えるだ?
身に纏ってやろうじゃねえか。
これだけ混乱させられて、傷つけられて・・・黙っていてやれるほど、俺は優しくなんてない。
刀に雷が迸る―――
それは黒い雷。
怒りに、屈辱に、無力感に・・・そういったものの果てに手に入れた力。
ダン・ウェイカーを殺すためだけに身につけた力。
それを担ぎ、今度こそ、殺気を全開にして―――駆けた。
水の塊がまず飛んできた。ナタリーの水魔法。
【凍てつけ】
ナタリーが叫ぶが、俺は左手から炎を生み出し、それを蒸発させた。
次に電撃を軽めに放つ、火と水で産まれた霧に這わせ、それでナタリーを感電させる。
「こっち」
呟いたのはジャスミン。
分かっている。
俺の背後にジャスミンとジョナサンが迫っているのは気付いていた。
トラックから小太刀を取り出し、左手に持ってそれを振るった。
風と炎で吹き飛ばし、二人とも学院の壁に叩きつける。
「ふんっ!」
続いて、フェリスが大鎌を俺に振るうが、それを余裕を持って躱し、その身体を右足で蹴り上げる。
カハッと声にならない声をあげ、そのまま気絶する。
前衛が片付いた・・・次―――
リルと呼ばれる精霊、白い犬が駆けだしてきた。
それは風を纏い、何層にも圧縮してある。
だが、もうそんなのには驚かない。
土を超圧縮――炎で爆発力を、風で高速回転を・・・【火弾】
今までのものとは違う。
ここ1か月、改良に改良を重ねてきた。
全てはダンを殺すために・・・でも、道を阻むというのなら、邪魔をするというのなら、痛い思いは覚悟してもらいたい。
風の防御のお陰で、リルは吹き飛ぶだけに留まる。
だが、もう戦えないほどのダメージは受けたはずだ。
次はウンディーネ・・・彼女が魔法を放つ前に、周囲を高温で焼いた。
渦巻く炎の熱量で、ウンディーネはダウンする。
その弱点を教えてくれたのは・・・リーゼ、お前だ。
次は地面を切り裂く。
どうせゾーイのことだ。
まだいくつも魔法陣が仕込んであるはずだ。
そうして何回か地面を切り裂いた。
それだけで、ゾーイ、クレア、リーゼは戦意を失った。
残すは・・・ダンを守る青と、教官。
「どいてください・・・俺はそいつに用があるんです。」
「なら、私はどけないな・・・お前のその、歪んだ根性・・・叩きなおしてやるよ。」
そう教官は言いながら氷の弾を飛ばしてくる。
何が歪んだ根性なのだろうか?これが歪んでいるとでもいうのだろうか・・・
そうさせたのは、他の誰でもなく、ダンだというのに・・・そいつをぶっ殺そうとしているのに。
「だったら、邪魔するなよ。」
氷を全て叩き斬る。
小太刀をクルリと回し、空中に飛んだ教官を叩き飛ばした。
そしてすかさず小太刀をしまい―――
【桜雷】
紫だけでなく、赤く輝く雷も混じり、周囲をバチバチ音をたてながら照らす。
狙うはダン。
ダンに当たればよし、ダンが防御すれば隙が生まれるはず―――そう思ったのだが、
「ハッ!」「ぬんっ!」
俺の魔法がはじけ飛ぶ。
魔剣と大剣
グレイス・オズボーンとイザークによって。
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