子供のお遊び
「ん?何気を抜いているんだい?」
ダンのレイピアが俺の肩を串刺しにした――
「つっ!?」
刺したレイピアに魔力が集中していく・・・
―――ヤバい!
咄嗟に右足に火と風の爆風を発動させての緊急回避。
右足を守る暇などなかったために、ひどく痛む。
あいつ・・・レイピアに電撃と炎を纏ったのか?
そもそも何故だ・・・何でスキルが効かない・・・?
「んー?ああ、何かのスキルを発動させようとしたのかい?ククッ・・・残念だったねぇ・・・」
「どうゆうことだ?」
「さぁ・・・」
そう言うとレイピアに魔法を纏ったまま接近してくる。
俺も刀で・・・いや、それどころじゃない・・・早くしないと―――
【フラッシュバン】
光り輝く閃光が、闘技場を模したようなこの場所を光で埋め尽くした。
デブスに駆け寄り、特級ポーションを首にぶちまける。
「へぇ・・・君ならこいつの所に行くだろうとは思ったけれど、気持ち悪いモノを持ってるんだねぇ」
時間にして1秒もない行動だったはずだが、ダンは俺の両足を切り裂きながらそう言った。
くそ・・・認めてやる・・・俺より強い・・・
膝から崩れ落ちる前に・・・爆風で距離をとった。
反応出来なかった。
デブスを助けに行こうとしていたのも読まれていた。
「同じことして逃げて・・・芸もないとはね。でもその気持ち悪いヤツ、それは使えるね!何度でも拷問ができる便利グッズだよ!譲ってくれないかな?」
にこやかにそう言うダンに、一種のおぞましさを感じた。
放置していいヤツじゃない・・・一応デブスは大丈夫・・・なはずだが、もう特級も残り二つしかない・・・
そして今、一つを飲む。残りは1本。
ふぅ・・・集中しろ―――
「なーんだ。無視とはね・・・友達なんだろ?譲ってくれたっていいじゃないか。」
そう言いながらレイピアに赤い雷のようなものをまた纏わせた。
あれは・・・多分魔力を属性にしつつ流し込み、気も纏っている?
俺も考えたが・・・まだ出来ない。
魔力を属性にし、流し込むことは出来るが、その上から気を纏わせるとなると反発しあって相殺される。
だから諦めていたことだった―――それをあっさりとこなしている。
「まぁージークに怒られちゃうけど・・・もう少し遊んでから帰ろうかなぁ」
そう言ってルーシーと戦った時の速度の約倍のスピードで突進してきた。
刀とレイピアが交わる。
「ぐあぁぁぁああ」
受け止めた瞬間―――体中が電撃で切り裂かれ、切れた個所を焦がしていく。
かすり傷程度のものなのに、その苦痛は身体中を切り裂かれたかのような痛みだった。
レイピアすら、受け止められないのか・・・
一旦逃げるように後退し、今度は魔法で応戦する。
【桜雷】
紫電がダンへと迫る・・・だが、
「君・・・もしかしてだけど、魔法と剣の同時行使できないんだぁ・・・」
そんなことを呟いて、ダンはレイピアに魔法を纏わせたまま、左手からも赤い雷を出現させ、俺の魔法を相殺した。
敵わない・・・剣も魔法も、何もかも・・・今の俺では弄ばれて死ぬだけだ。
ここまでコテンパンにやられたことはない。
ここまで実力差が・・・あるのか・・・
「でもまぁ、本当に期待外れだ・・・もっと強いと思っていたんだけど・・・もう君と戦うのも飽きちゃったよ。」
そう言うと、ダンはデブスを担ぎ上げた。
「ここは、まぁ楽しめると思うから、精々生きて帰ってくるといいよ。それまでに君の居場所は僕が作り変えておくから・・・楽しみにしててよ。まぁ、帰ってこれればの話だけれど」
そう言うとダンの足元に魔法陣が生成された。
「おい!待て!デブスをどうするつもりだ!」
「彼にはまだ使い道があるから・・・せっかく君が直してくれたしね、連れて帰るよ。あ、そうそう、僕の秘密を言い忘れていたよ。」
―――僕はこの国の王子様さ。
そう言って、ダンはこの場から、デブスと共に消え去った。
「くそっ!!」
そう言いつつ地面を思い切り叩いた。
そんな事をやったってなにも変わらない。そんなことは分かってる。
無力だ・・・何をやっても敵わなかった。
俺の今までの全てが否定されたような・・・赤子同然に弄んで、子供のお遊びに付き合ってあげたような顔をしやがって・・・
あんな奴が王子だと?
あんな奴が・・・俺より強いだと・・・
心が怒りで染まっていくのが分かった。
でも、そうしなければ、ここから動けそうにもなかった。
あいつを殺す――
それを決心して、ようやく動けた。
冷静になれ・・・
まず・・・ここが何処かということだが・・・
あいつは楽しめると言った。なら、ろくでもない場所というのは分かる。
思いつくのはダンジョン。
そしてここは・・・もしそうならボス部屋になるはずだが・・・
だが、周りを見渡しても、扉は1つしかない。
ここから出るしかない・・・か。
「鬼が出るか蛇がでるか・・・」
意を決して扉を開く―――
そこには、
照りつける太陽と、うっそうと茂った森が眼前に広がっていた。
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