断固拒否する。
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貴族が平民に頭を下げる。
きっとプライドも何も全部捨ててそう言ってきたんだろう。
それも強いかどうかもあまり分からない相手だろう俺にだ。
デブスは今、正常な判断が出来ていないのかもしれない・・・
だって、俺の戦闘はほぼほぼ潜在能力とスキル頼みなわけだし、そこに鬼のような師匠の訓練で何となく形にはなったという程度だ。
デブスが俺の戦闘を見たのは2回だけ、決闘と模擬戦だけだろう。
それだけで、恥を承知で頼んでくるってのは、思い詰めているからか、強くなりたいと思ったからなのか・・・。
その顔はキリッとしていて、漢の顔をしている。
貴族からそのようなお願いをされて、思い悩んでいるデブスの力になれるのであれば、まぁ、出来る限りしてやりたいとは思う・・・
「だが断る!」
俺も漢の顔でキリッと決めてやった。
デブスは目を見開き、驚愕な顔をする。
「・・・理由を聞いてもいいか?」
デブスは怒らずに、落胆した感じで聞いてきた。
理由か・・・単純にめんどくさい。
っていうのもあるが、っていうか、ほぼほぼそれが理由なんだけど、
「私はルーシー様の護衛ですからね、今は休暇をいただいていますが、勝手に決めてはいけないでしょう。」
うちのルーシーが・・・オリヴァー公爵が黙っちゃいませんよって前面に出す。
貴族の縦社会を頑なに守ろうとするデブスは、これだけであきらめてくれるはずだ。
「いや、それは分かっている。だが、今は休暇中なんだろう?それにな、ルーシー様にはもう頭を下げたんだ。そしたら、ルーシー様は貴方が良いと言えば構わないと言っていた。頼めないだろうか?」
「・・・・・・」
俺の後ろ盾はどうやら効果を発揮しないらしい。
平民が貴族の命令を断ればどうなるかは分かり切ったことだ。
オリヴァー公爵の後ろ盾が完全に消えたわけじゃないから、処刑とかはさすがにないだろうけど、だけど、頼むとはいいつつも強制力を感じるのはデブスの必死さゆえか、はたまた貴族だからか。
まぁ、やることもなかったし、意外にいいヤツだったからな・・・なら、俺の出来る範囲内で師匠直伝のむさくるしい漢と漢の訓練をしてやろう。
「私に出来ることなんて限られますが、条件があります。」
とはいえ、タダでというわけにもいくまい。それなりに条件を飲んでもらうことにする。
「おお!それで、条件とはなんだ?」
「はい、まず・・・俺は敬語をつかわない。」
「ふん・・・教えてもらう立場だからな。師のようなものだ。それは当然受け入れよう。」
その『ふんっ』てのが鼻息であることに今更気が付いた・・・デブスお前そーゆうので印象が悪くなるのはかわいそうだな・・・
「そ、それから、祖父からの教えは今後無視してください。」
「なに!?そんなことできるわけないだろうが!」
「いえ、自身を客観的に見てみてくださいよ・・・貴方のその行為は損しかない・・・孫だけにね。」
「何を訳の分からないことを言ってるんだ。そんなものは無理だ。」
どうやらギャグは通じないらしい。
「縦社会ってのはわかりますよ?でもデブス様は自分より年上の相手にも、身分の低い貴族なら、構わずに命令口調でしょう?」
「ああ、そんなのは当たり前だ。」
「うーん、まぁ、そこに関しては、別に上司にあたるわけだから、難しいところなんですけど、でも、人生の先輩じゃないですか。そこらへんちょっと考えて、当たり散らすんじゃなくて、普通にこんな風にしゃべってくださいよ。頑張るところがずれてるんですよ。」
取り敢えず、納得しやすそうなところから攻めていくしかあるまい。
どうもこの考えは直してほしいと思ってしまうなぁ・・・
俺も警察だったころは、後輩が年上なんてのはざらにあった。なんせ、俺は高卒で警察になったからな。
大卒が後輩で入って来るのなんて多々あったわけだ。
でも、仕事は新人だからできない。
つまり俺が教えてたわけなんだが、お互いに敬語だった。
仲良くなれば、その限りじゃないけど、でもいくら俺の方が上司で、仕事ができたとはいえ、最初からため口だと、相手に悪い印象を与えるし、命令口調であればなおさらだろう。
「つまり、貴族として更にのし上がる為に必要なことなんですよ!」
俺はあーだこーだ下級貴族を味方につける方が有利だと言って丸め込んだ。
ブヒブヒ言うデブスは結局この条件を渋々納得して飲んでくれた。
他にも条件を付け足して、話は終わった。
明日から訓練を開始することとし、動きやすい服装でくることと言っておいた。
―――翌日
「動きやすい服装で来てくれって言ったよな?」
学院の闘技場で待っていると、デブスはいつも通りの赤い煌びやかな服装で登場した。
「すまないが、この服装しか持ち合わせがないのだ。私は魔法で戦うからな。問題あるまい。」
「いや、走るんですけど?そもそも師の命令に背くってのは・・・やる気があるの?」
「いや・・・だが・・・何処で買えばいいのかも・・・分からない・・・」
「え?」
「いや、いつもはルーファスが・・・だから私も変わろうと思って・・・」
家でもここでも、こいつは外を出歩いたことがないのか・・・トンだ箱入り男だな・・・
「分かった。付いて来てくれ・・・予定を変更する。」
そうして豚じゃなかったデブスを引き連れて、いざショッピングとなった。
服に食べ物に、いろいろと案内しながらも必要な物を買っていってもらう。
最初は話しにくかったが、ダイエット食品とか、前世の知識でアドバイスしながら歩くと、ちょっとずつ打ち解けていった。
最初はジン師匠とか呼ばれていたものの、それはやめてくれと言うと、俺の呼び方は『ジン氏』ということで落ち着いた。
そうしてまた、闘技場に戻る。
着替えも済ませ、ダイエット食品を買ったデブスはご満悦だ。
少しだけではあるが、明るさを取り戻している。
その顔がこれから歪むことになるわけだが・・・
「デブス、これからやることは特訓だが・・・初めに言っておくと、ダイエットにもなる。ついてこられるか?」
「ジン氏、それであれば、私も全力を尽くしましょう。」
「よし、では、まずは走る。ひたすらに走るぞ!ついてこい!」
そうしてヒューグ師匠直伝のマッスルエクササイズが始まった。
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