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失望者の異世界転生  作者: コバヤシ アキラ
第2章
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休暇の使い道


俺らは取り敢えず席に着く。


重苦しい雰囲気が周囲に漂い、ダンやリーゼは暗い顔で、状況を聞くのが躊躇われた。

そうして待っていると、教官が入って来る。


「おう、待たせたな。で・・・その様子だとどうなったか聞いてないみたい・・・だな。」


ダン、リーゼを除き、全員が頷く。


「そうか、まぁ、結果から言うと、赤の護衛のルーファスが亡くなった。で、詳しく説明するとだな。」


そう言って話したのは、全員がダンジョンで同じ目に、魔法陣によってバラバラにされたという事だった。


原因はやはり不明。


ルーファスはデブスと同じ場所に転移したが、それは、ボス部屋だった。

ジャスミンとナタリーの状況と一緒だ・・・そして、ルーファスはデブスを庇い、刺し違えて命を落としたそうだ。


デブスは落胆し、部屋に引きこもった。


「っと事の顛末、この場の空気が重いのはその為だ。みな、すまなかった。」


そういって教官、アベリ・シュナイザーは頭を下げた。


しばらくの沈黙が場を支配したが、



「別に教官は悪くない。護衛に守られっぱなしだったデブスにも問題があるだろう。最初の模擬戦の時から腑抜けた奴だとは思っていたがな。」



口を開いたのは、青の公爵家、グレイス・オズボーンだった。


その言葉はあまりにも・・・冷ややかに感じられた。



はたから見たデブスとルーファスは仲が良さそうだった。


俺らとは会話はしないデブスだったが、ルーファスからは「坊ちゃん」とか「坊」と呼ばれており、デブスはその言い方は直せと毎度言っていたが、嫌そうな顔をすることもなく、楽しそうに会話をしていた。


大切な・・・友人のような関係だったのだろう。


そうしてふさぎ込んでしまったのは、自分のせいだと思ってしまったからなのか、俺には推測することしかできないが、ともあれこれはどうするのだろうか。


「そう言ってくれるな青の・・・あいつはあいつなりに頑張って、それでも出来なかったことで参っちまったんだろう。私にも経験がある。」


「まー話はまだあってだな。今日から2週間、学院は休校とする。各々好きなように休息を取れ、家に帰ってもいいし、寮で過ごしてもいい。まぁそこらへんは任せるが、変なことはしないようにな!じゃー解散。」


そう言って教官は教室を後にした。


「じゃあジン、私たちも取り敢えず部屋に戻ろう。」


そうルーシーに言われ、俺らは部屋へと戻った。

そして、唐突に言われた。


「ちょっと一人で家に帰ろうと思う。」


ん?・・・俺は?


「俺一応護衛だよ?ルーシー?」


「うむ。分かってはいるのだがな。ちょっと一人で色々と考えなきゃいけない気がしてな。しばらくジンには休暇を与えようと思う!」


特に働いてるっていう意識はないし、赤鬼とかの件もある。

出来れば一人で行ってほしくはなかったが、再三にわたる俺の説得にもルーシーは首を縦に振らず、結局一人で自分の領への馬車に乗り込み、行ってしまった。


「まぁ・・・大丈夫か・・・」


不安は尽きないが、転移させられた時も、俺がいなくとも難なく教官と合流できたと言うし、技術も天才級だ。

大丈夫だと信じて休暇を楽しむとするか・・・


「って言っても、さて、何をするかな・・・」


楽しもうとは思ったものの、特段することもない・・・



「・・・・」



風呂入って寝るか・・・


そんな事しか思いつかん。

怪我は大分いいけど、それなりに体はだるいし、たまには大浴場でも入って、ゆっくりするとしよう。


そう思い至って、そそくさとそのまま大浴場に向かう。


風呂の道具も全てインベントリというか、トラックに突っ込んである。

本当に便利なスキルだと思う。


そうして大浴場へと乗り込んだ。


この学院には生徒用にめちゃくちゃデカい大浴場がある。

基本的にはAクラスの部屋には風呂が完備されているから、入ることなんてないし、他の生徒の為の風呂であったりする。


ただ、この学院は今日から休みであり、ほとんどの生徒が帰宅していった。


つまり、貸し切りになるわけだ。


ならば入るしかあるまい。


そう思ってデカい扉をバーーンと開け放つと、俺以外に先客がいた。


あらかじめ言っておくが、女性ではない。

俺はきちんと男湯に入ったし、女性がそもそも間違えて入って来ることは絶対にない。

ラッキースケベ的なハプニングなんて起こる確率はゼロに近いだろう。


そうして先客はふくよかな男性だった。

ふくよかというか、デブというか、そいつは俺の事をギロッっと睨んで、一言、


「お前か・・・風呂は静かに入れ、マナーは大切にしろ」


それ・・・お前言う?入学試験の時なんかマナーも糞もなかったくせに・・・


ぐぬぬ・・・でも今のは俺が悪いか・・・


「申し訳ありません・・・デブス・レッドフォード様・・・」


「ふん・・・分かればいい」


それだけ言うと沈黙が流れた。

気まずいけど、もう後戻りはできない。


とりあえず体を洗うが、後ろの湯船から視線を感じる・・・


そうして体を洗い終わった。

ちょっと長めに洗ったのに、デブスはまだ上がらない。


くそぅ・・・

意を決して入浴。


俺は影だ・・・この気まずい感じも、デブスが上がるまでの辛抱。


スキルをフル活用。


潜伏、隠密、気配遮断を発動させた。


スッと存在感が薄くなる。


どうだ!デブス!これでお前は俺を見失うはずだ。



「私にもっと力があればな・・・・お前はどうやって鍛えたんだ?」


そう思ったが、俺の事など見ることもなく、唐突にそんなことを言い出した。

そもそも、俺がいることは分かっているわけだし、俺がスキルを乱用しても意味なかったか・・・


そっとスキルを切って、デブスを見る。


その顔はひどく疲れていて、やつれたように見える。

けっこうな時間思い詰めていたのだろうな・・・


鍛え方・・・か。


「私は冒険者をしてましてね、それで鍛えたのもありますし、A級冒険者のヒューグという人物から手ほどきを受けました。」


「そうか、ルーファスもな・・・冒険者だったんだそうだ。」


そうしてデブスは語りだした。


ルーファスがどうやってデブスと出会ったか、最初は生意気な奴だと思っていたが、話しているうちに同じ趣味を持っていることが分かり、そこから仲良しになったんだそうだ。


話しているときのデブスは、悲しそうに、でも嬉しそうに、昔を思い出しながら語っていた。


俺はあの日以来、クレアを助けようとした時から、デブスを見る目は変わっていた。


なかなか単純な奴だと自分で思うが、人を助けようとするってのは、かなり勇気のいることだと思う。

それを自然にしようとするってのは、なかなかいいヤツなんだと思っていた。


で、話を聞いて確信した。うん、こいついいヤツだわ。


話してる雰囲気も穏やかで、いつもやっている高圧的な態度ではない。


だからふと聞いてみた。

「なんでいつも高圧的な態度を装っているんですか?」と・・・


返ってきた答えは、


「貴族とはそういうものと習った。ルーファスからもやめろとは言われてきたが、それが貴族であるならば、私はこれを辞めるわけにはいかない。そう言ったらルーファスは馬鹿だな、と煽ってきたがな。」


ということだった。

ちなみにそれを教えたのは祖父らしい・・・よくわからんことを教えたもんだ・・・


「もう一つお聞きしたいんですが・・・趣味とは、なんだったのですか?」


「うん?・・・まぁ、話を聞いてもらったしな・・・趣味とは言えないかもしれないが・・・ダイエットだ。」


「へ?」


一瞬自分の耳を疑った。


・・・ダイエット?本当にやってるんですか?そんな事は口が裂けてでもいえないが、本人はいたって真面目にそう言ったのだ。


笑ってはいけない。


「そんな事よりだ・・・恥を承知で頼むのだが・・・私を鍛えてはくれないだろうか・・・」


今までのデブス・レッドフォードはどこに行ったんだというような、綺麗なお辞儀を俺に向けてやってきた。



素っ裸で。

お読みいただきありがとうございました。


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よろしくお願いします。

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