無我夢中
「ん・・・・っつ・・・」
「お・・・目が覚めたか?」
ゴトゴトと揺れる床の上で俺は目を覚ました。
目を覚ますと全身に痛みがはしる。
「ジン・・・話せるか?」
教官の呆れたような顔、ルーシーの不安そうな顔が目に飛び込んできた。
ジャスミンとナタリーとも目が合う。
「全員・・・無事で何よりです。」
痛みをこらえながら体を起こした。
「それで・・・どうなったんですか?」
全員無事、それは良かった。
でも次に思うのは、結局あの転移は何だったのかということである。
そうして何がどうなったのか・・・あまり覚えていない。
「ああ、結局、スタンピードは起こらなかった。魔法陣の転移に関しては不明。残念ながら死者は多数・・・未だに何だったのか、調査機関も首を傾げるだけで、答えは分からない。」
そう、淡々と教官は話した。
ダンジョン出入口に設置されている帰還用の魔法陣は現在、元の青色に戻っている。
魔法陣を赤くさせ、ダンジョンに誘い込む罠にしたという説や、ダンジョンが狡猾に進化したという説など、そういった説等が飛び交うばかりで真実は不明。
そしてダンジョンはしばらく封鎖された。
また同じような事態になったらどうするのか、という事に関しても早急に対策する必要があることから、上部の人間はてんやわんやしているそうだ。
「ってことで、私たちはこれ以上することもなく、こうして帰ってる途中ってことだ。」
「なるほど、ありがとうございます。」
「それで?ジン・・・お前は赤鬼を倒したのを覚えているか?」
そう言われて思い出す。
正直、ぼんやりとしか覚えてはいない。
ジャスミン達を狙い、それが罠だということを、殴られ、吹き飛ばされ、叩きつけられ、そこでようやく騙されたと理解し、そこからは・・・無我夢中だった。
あれだけの力で殴られ、なぜ立てたのかは分からない。
だが、結果として立ち上がり、そこからは周りの音も聞こえず、視界も意識も赤鬼だけを捕らえていた。
そして、その感情を否定しようとするが・・・否定できなかった。
―――楽しかった。
そんな感情が湧いて出て、俺は果たして正常なのかと自分で自分を疑った。
あの凶悪な魔物・・・恐怖の象徴ともいえる様な魔物。
ジャスミンらが危険に陥り、多くの冒険者の命を奪い、その血で、自身や壁を真っ赤に染め上げ、少しでも恐怖すれば、飲み込まれてしまうようなその姿を前にし、俺はなぜ楽しいと、思ったのか・・・
狂戦士
そんな言葉が次いででてくる。
俺はそんなバトルジャンキーではない。
戦闘とは怖いもの。誰かの命が奪われかねないもの。
だが、あの時の戦闘を思い出せば、間違いなく俺は楽しんでいたんだと思う。
スキルをフル活用し、己の魔力で身体を覆い、刀に全てを注ぎ込んで、無我夢中で駆け回った。
飛び、跳ね、走り、今までの集大成ともいえる動きで、相手を翻弄しようと、撥ね飛ばそうと動き回った。
最後の動きはダンを知らず知らずのうちに真似ていた。
自身を火弾のように発射した。
圧倒的スピード。
そして勝負がついた。
そうなったことをぼんやりと思い出す・・・。
「なんとなく、覚えています。」
「そうか、私も見ていた。あんな戦い方は不快だ。もうするな。」
教官から冷めた口調でそう言われた。
うん。それは俺も同感だった。
「はい。申し訳ございませんでした。」
だから素直に謝った。
教官が見ていたことなど、全く気付かなかったが・・・それほどに、己のことしか考えず、自分の力を試すように戦ったのだろう。
「分かればいい。チームワークも糞もない、自己中心的な行動はもうやめることだな。早死にするぞ。」
「はい・・・」
そうしてしょんぼりすると、教官は直ぐに顔を緩めて、俺の頭をくしゃくしゃしてきた。
その腕は力強く、頭がもげると思ったほどだ。
そんなゴリラみたいな怪力も持ち合わせておきながら、力加減もできない・・・繊細さもくそもないから、未だにどくしn
俺は殴られて、また意識を失った。
と、まぁ、そんな冗談はおいといて、いや、殴られたのは本当だし、意識も刈り取られたのは本当だが、
再度目を覚ますと、ジャスミンとナタリーらから、
「助かった。ありがとう。」 「助けていただき、ありがとうございました。」
と、お礼を言われ、改めて、なんというか、夢中で戦っていた自分を恥じた。
ルーシーはといえば、落ち込んでいるような、考え込んでいるような表情をしていたが、最終的には、
「ジンが無事で良かった。」
と言ってくれたのだった。
そうして反省しながらも、すぐに学院についた。
気が付かなかったが、相当に眠り込んでいたらしい・・・どっちでかは分からないが。
教官から教室で待機しろとの命令がでたため、教室へと移動する。
俺らが最後の組みだったようで、二人を除いて全員が教室へと集まった。
いなかったのは
デブス・レッドフォードとその護衛、大剣使いのルーファスだった。
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