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失望者の異世界転生  作者: コバヤシ アキラ
第2章
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無我夢中


「ん・・・・っつ・・・」


「お・・・目が覚めたか?」


ゴトゴトと揺れる床の上で俺は目を覚ました。

目を覚ますと全身に痛みがはしる。


「ジン・・・話せるか?」


教官の呆れたような顔、ルーシーの不安そうな顔が目に飛び込んできた。

ジャスミンとナタリーとも目が合う。


「全員・・・無事で何よりです。」


痛みをこらえながら体を起こした。


「それで・・・どうなったんですか?」


全員無事、それは良かった。

でも次に思うのは、結局あの転移は何だったのかということである。


そうして何がどうなったのか・・・あまり覚えていない。


「ああ、結局、スタンピードは起こらなかった。魔法陣の転移に関しては不明。残念ながら死者は多数・・・未だに何だったのか、調査機関も首を傾げるだけで、答えは分からない。」


そう、淡々と教官は話した。


ダンジョン出入口に設置されている帰還用の魔法陣は現在、元の青色に戻っている。

魔法陣を赤くさせ、ダンジョンに誘い込む罠にしたという説や、ダンジョンが狡猾に進化したという説など、そういった説等が飛び交うばかりで真実は不明。


そしてダンジョンはしばらく封鎖された。

また同じような事態になったらどうするのか、という事に関しても早急に対策する必要があることから、上部の人間はてんやわんやしているそうだ。


「ってことで、私たちはこれ以上することもなく、こうして帰ってる途中ってことだ。」


「なるほど、ありがとうございます。」


「それで?ジン・・・お前は赤鬼を倒したのを覚えているか?」


そう言われて思い出す。

正直、ぼんやりとしか覚えてはいない。


ジャスミン達を狙い、それが罠だということを、殴られ、吹き飛ばされ、叩きつけられ、そこでようやく騙されたと理解し、そこからは・・・無我夢中だった。


あれだけの力で殴られ、なぜ立てたのかは分からない。

だが、結果として立ち上がり、そこからは周りの音も聞こえず、視界も意識も赤鬼だけを捕らえていた。


そして、その感情を否定しようとするが・・・否定できなかった。


―――楽しかった。


そんな感情が湧いて出て、俺は果たして正常なのかと自分で自分を疑った。


あの凶悪な魔物・・・恐怖の象徴ともいえる様な魔物。


ジャスミンらが危険に陥り、多くの冒険者の命を奪い、その血で、自身や壁を真っ赤に染め上げ、少しでも恐怖すれば、飲み込まれてしまうようなその姿を前にし、俺はなぜ楽しいと、思ったのか・・・


狂戦士(バーサーカー)


そんな言葉が次いででてくる。

俺はそんなバトルジャンキーではない。


戦闘とは怖いもの。誰かの命が奪われかねないもの。

だが、あの時の戦闘を思い出せば、間違いなく俺は楽しんでいたんだと思う。


スキルをフル活用し、己の魔力で身体を覆い、刀に全てを注ぎ込んで、無我夢中で駆け回った。

飛び、跳ね、走り、今までの集大成ともいえる動きで、相手を翻弄しようと、撥ね飛ばそうと動き回った。


最後の動きはダンを知らず知らずのうちに真似ていた。


自身を火弾のように発射した。


圧倒的スピード。


そして勝負がついた。

そうなったことをぼんやりと思い出す・・・。


「なんとなく、覚えています。」


「そうか、私も見ていた。あんな戦い方は不快だ。もうするな。」


教官から冷めた口調でそう言われた。


うん。それは俺も同感だった。


「はい。申し訳ございませんでした。」


だから素直に謝った。

教官が見ていたことなど、全く気付かなかったが・・・それほどに、己のことしか考えず、自分の力を試すように戦ったのだろう。


「分かればいい。チームワークも糞もない、自己中心的な行動はもうやめることだな。早死にするぞ。」


「はい・・・」



そうしてしょんぼりすると、教官は直ぐに顔を緩めて、俺の頭をくしゃくしゃしてきた。


その腕は力強く、頭がもげると思ったほどだ。

そんなゴリラみたいな怪力も持ち合わせておきながら、力加減もできない・・・繊細さもくそもないから、未だにどくしn




俺は殴られて、また意識を失った。


と、まぁ、そんな冗談はおいといて、いや、殴られたのは本当だし、意識も刈り取られたのは本当だが、

再度目を覚ますと、ジャスミンとナタリーらから、


「助かった。ありがとう。」 「助けていただき、ありがとうございました。」


と、お礼を言われ、改めて、なんというか、夢中で戦っていた自分を恥じた。


ルーシーはといえば、落ち込んでいるような、考え込んでいるような表情をしていたが、最終的には、


「ジンが無事で良かった。」


と言ってくれたのだった。


そうして反省しながらも、すぐに学院についた。

気が付かなかったが、相当に眠り込んでいたらしい・・・どっちでかは分からないが。



教官から教室で待機しろとの命令がでたため、教室へと移動する。

俺らが最後の組みだったようで、二人を除いて全員が教室へと集まった。


いなかったのは


デブス・レッドフォードとその護衛、大剣使いのルーファスだった。





お読みいただきありがとうございました。


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