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失望者の異世界転生  作者: コバヤシ アキラ
第2章
67/137

冒険者と貴族

2万PV突破、誠にありがとうございます!


毎日更新を心掛けておりますが・・・ちょっと日にちが空いていくかもしれません・・・


平にご容赦下さい。

――――――



「ん・・・」


「おー気が付いたか?」


出来る限り普段通りを心掛けてそう聞いた。


「きょ・・・教官殿」


「すまなかったなルーシー・・・私の失態だ。魔法陣が罠となって動く等・・・初めてのことでな・・・探すのに手間取ったが、お前だけでも見つかってよかった。よく生きていてくれた・・・ありがとう。」


まだ・・・ルーシーしか見つけていない。

他の三人は無事なのかどうなのかも分からない。


ルーシーを見つけたときは死んでいると思った。

ただ、傷は浅く、すぐにバジリスクの毒だと思い至り、解毒薬を飲ませた。


危ないところだった。近くにはもう一人、新人らしき冒険者の死体があった。

おそらくルーシーは守ろうとしたのだろ。


優しい子だ。


ここまでの道中、何人もの死体を見てきた。

そう、全て死体だった。


ここはダンジョン階層19階。


ただ妙なことに、15階層でルーシーを拾い、16階に上がったところ、一直線に魔石が転がっており、そこを丁度いいとばかりに進むと・・・それが次のフロアの入口まで続いていた。


そうして19階層まで、魔物と接触することもなく進んでこれた。そしてまだ、それは続いている。


「教官殿・・・」


「ん?どうしたルーシー・・・まだ具合が悪いのか?」


「いや、その・・・私の近くに、もう一人いなかっただろうか・・・」


「ああ、いたぞ。タグはちゃーんと回収済みだ。お前が後でギルドに届けてくれるか?」


「あ・・・はい・・・私は・・・助けられなかったんです・・・私じゃなければ、きっと救えた命だったのに・・・私は・・・。」


「おいおい、お前のせいじゃない。お前は助けようと死力を尽くしたんだろ?私だったら助けようともしなかったかもしれない。この混乱の中で、それどころでもなかったしな。」


「それでも・・・私は貴族、公爵なのに・・・」


「私だって貴族だぞ?だけどお前は、パニックになりながらも助けようと努力をしたんだろう?それはな、貴族とか、平民とか、そんなこと関係なく動いたはずだ。違うか?」


「違いません・・・」


「私はな、このダンジョンに挑戦したことがあると言ったろ?その時は冒険者をしていたんだよ。その時、実は死にそうな目にあってなー、ヒューグっていうどこぞの平民が私を助けてくれたんだよ。正直、平民に助けられたことがショックでな、平民の分際でって助けてもらったのに怒鳴っちまったんだよ。」


「ヒューグさんは・・・どう返したんですか?」


「ふふ、『そんなの関係ないだろ・・・くだらねぇ』ってな、そこから私も何かどうでもよくなってな、貴族とか平民とか、そんなのは関係ないんだよ・・・それにな、大事なのは、お前のその良心だ。助けたいと思ったお前の心は素晴らしいもんだ。私は、そんなお前が生徒で誇らしく思う。」


「教官殿・・・私も冒険者をやってるんです・・・でも、貴族は平民の為に働くもの・・・私は冒険者を辞めるべきでしょうか・・・どう思いますか?」


「そんなのは自分の心に聞いてみろ。貴族だからどうするべきか、じゃない。お前がどうしたいかだ。」


「私は・・・」


「はぁ・・・ったく、冒険者は人々を守る為にいるものだ。

貴族は政治政策等を行って人々を守っている。両方とも人々を守ることに変わりはない。同じだ。


何が違う?貴族は、冒険者で小遣い稼ぎすることだってある。


力を持った貴族は、むしろ冒険者になろうとする者が多い。お前にも当然その力がある。むしろ、冒険者をすることの出来る貴族は少ない。自ら危険な場所に行こうとする者が少ないからだ。


それは少なからず、民たちにはいい印象を与える。むしろ、やってもらったほうが良いはずだ。だが、そんな事情は関係ないだろ。


要は、お前がやりたいのか、やりたくないのか、それだけなんだよ。」


「私は・・・続けたい。でも、また助けられなかったら・・・」


「なら、続ければいい。助けられなかったのなら、その事をちゃんと次に生かせ、そいつの分も頑張れとは言わん、頑張らなくてもいいんだ。ただ、もしまた同じようなことが起こった時、後悔しないで動けるようにしておけ。そーゆうのが、私は大事だと思う。以上、しみったれた話は終わりだ。ジンのバカ共を探しに行くぞ。歩けるか?」


ルーシーはただ、泣きながら頷いた。どうもこの歳になると、説教みたいなのが多くなっていけない。


ただ、私はここに・・・お前たちを連れてきてしまったんだよ。



そうして、二人歩いていくと、20階層に辿り着いた。

ボス部屋だ。20階層なら・・・私一人で倒せるはずだ。


「ルーシー・・・いいか?入ったら足一本動かすな。いいね?」


頷いたのを確認して中に入る・・・・魔物を見て驚愕した。そこにいたのは40階層のボス・・・赤鬼だったからだ。

そして・・・誰かが戦っていた・・・いや、あれは、


「ジンか?」


ルーシーも目を見開く。ジャスミンもナタリーも無事みたいだ。


だが、赤鬼が前に見たときとは大きく違う。


身体が一回り大きくなり、その速さは尋常じゃない。


壁には二本の大剣が壁に突き刺さっている。


あれは・・・?鬼の武器・・・だったのか?


あんな大剣なんて持っていなかったはずだ。



いったい何が起こっているんだ・・・



いや、それよりも・・・あれは何なんだ・・・


私の前に繰り広げられた光景は、信じられないものだった。

ジンの動きが、人間のそれを超えている。


全身血だらけになり、壁と床を弓矢のような速度で行き来し、鬼もまた、同じように血だらけで、同じ速度でぶつかり合っている。


ドン!ドン!


と何度も地面が、壁が、心臓まで響くような音を上げ、何度も何度も互いにぶつかり合う。

ジンは刀、鬼は拳で対等に殴り合っている。


こんなもの・・・見たことがない・・・周りの奴らも、ただ唖然と、それが夢であるかのように、ぼんやりと眺めている。


ここに介入など、できやしない。


邪魔になるだけ・・・いや、邪魔にすらならない。ただ、潰されて終わりだ。


「な、なぁルーシー・・・あいつは、何なんだ・・・」


「む?・・・ジンはジンだ・・・ジンはいつもああやって・・・誰かを守ろうと、自分を傷つけて戦うんです。」


返ってきたのはそんな言葉。


あんな奴の隣に並ぼうとすれば・・・そりゃルーシー・・・挫折もするだろうさ。

あれは・・・化け物だ。



自分がどうなってもいいっていう戦い方は、見ていてうんざりする。

周りの事を考えない自己中ヤローだ。



一目見れば、ちゃんと向かい合おうとすれば、分かるはずなのに、そんなルーシーの気持ちも知らないで、お前はなんでそんなに生き急ぐんだ・・・



確かにあの鬼をどうにかできるのは・・・ジン、お前しかいないだろうな。

でも、今回だけじゃなかったはずだ。ルーシーにこんな顔をさせるんだから・・・


鬼が立ち止まり足に力を込めている。

ジンも同じように地面に手をつき、足に力を貯めた。


轟音と爆風が巻き起こる。


互いにぶつかり合い、凄まじい音をあげた。

砂塵が舞う。


今度は静寂がこの場を支配した。


そこに立っていた者はいなかった。

鬼は黒い霧になって散り、ジンはその場に倒れていた。


ルーシーが叫びながらジンのもとへ駆けた。



40階層のボスの赤鬼は、A級冒険者が束になってやっと倒した魔物だった。


それよりも一回り大きく、力を増したであろう相手に、一人で挑み、倒した。



そのことが私には信じられなかった。



―――――




お読みいただきありがとうございました。

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よろしくお願いします。

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