道中から地獄
「課外授業ってのは・・・魔物退治だ。」
ん?今更・・・このメンバーで?正直このメンバーなら・・・フルボッコにできそうだけども。
「疑問に思う奴らもいるだろうな!だが、こっちでちゃーんと班編成してやる。そして向かってもらうのは・・・まぁ真剣に私の授業を受けてくれているお前らだ。察してくれるだろうな!!地獄に行け。」
あ・・・みんな真剣に授業なんて聞いていなかったように思う。
俺ですら暇になりそうな話しかしてこなかったし・・・てことは、これはあれか?俺たちへの嫌がらせなのか?
教官の声がワントーン高い気もするし、してやったりって顔してる。最後にボソッと地獄に行けって言ったよな?聞き間違いじゃないよな?
生徒全員がどんよりした雰囲気の中、今日は淡々と授業が進んだ。
そして翌日、決められた班編成によって俺らはそれぞれ馬車に乗った。
俺の班はルーシーといつも寝ているジャスミンとそのメイドだった。
俺らだけ4人で後は5人だ。
他の班は、グレイスとゾーイとクレア、デブスとリーゼとダンで、それぞれ従者を入れて計5名ということになった。
そしてそれぞれに教官がつく、俺らの班には・・・アベリ・シュナイザーが付いた。
リーゼの班は見たことはあるが、名前も知らない教官で、ゾーイのところはルーシーの入学試験の相手だったジークフリードだった。
俺らの班の道中はそれはもう・・・うるさかった。
なんせ教官がペラペラしゃべり続けるからだ。
その会話のおかげでジャスミンの出生地は黄土色のヴェロニカ領という事が分かったくらいか。
ジャスミンの肌は浅黒く、よく日に焼けている。いつも眠っているのに見た目は物凄く活発そうに見える。
目の色は金色、髪の色は黒。
そんな活発的で野性味溢れる感じの見た目だが、いつも見れば眠っている。ギャップが凄まじい子だと思う。
俺の出身地をやたらと聞かれたが、俺も何と答えていいか分からず、迷宮の森の奥らへんでひっそりと暮らしていましたと答えておいた。
迷宮の森っていうのは、最初に女神様から送られた場所の先、リグム村が監視する森であり、ギリアムと戦った場所でもある。
何かと因縁のようなものがある地なのは間違いないだろう。
迷宮の森で育ったなんて聞けば教官もジャスミンも目を見開いたが、そんな見た目をしていないからか、ジャスミンはボソッと「私の真逆ね」なんて呟いていた。
俺は森で育ったが、そんな風には見えず、ジャスミンは野性的な見た目だが、森とかで育ってはいない。
なるほど、確かに真逆かもしれない。俺が本当に森で育っていたのであればだが。
そうして移動に丸一日費やして着いたのは、ただの更地だ。
つまり何処にもついていない。
「よし、今日はこの辺で野宿するぞーージン!お前が今日は飯当番!見張りは他の3名が交代でやってもらう。寝床は馬車があるが・・・私は構いやしないが・・・ジンは一応違う場所で寝てもらう。そこらへんは任せるから適当に頼む。」
適当に頼むって・・・地面に寝ろってか?
そもそもだ。
「教官・・・どれくらいで目的地につくんですか?」
「お?ジン、お前が私に質問するのか・・・まーいいだろう。後4日だろうな。」
後4日も移動するのかよ・・・それまでずっと地面で寝れってのか・・・
「目的地は・・・・どこなんですか?そろそろ教えていただいてもいいように思いますが。」
目的地で魔物を狩るってことはわかるが、目的地もわからなければ敵もわからねぇ。
着くまでにいろいろ話し合わなければいけないこともあるだろう。できれば早めに知っておきたい。
「ふむ。まぁ全員気になってるみたいだしな。教えておくか。目的地は青のオズボーン領だ。」
ほう・・・初めて行く場所だな・・・南西に進んだ先にあるところだ。
「気付いたか?青のところのダンジョンに向かう。それぞれ3つのダンジョンにスタンピードを起こす前兆があったらしくてな。応援要請が学院にも来たわけだが・・・戦力になりそうなのはAクラスくらいしかいないからな。」
北が金、東が緑、西が黄土、南東が赤で南西が青
ダンジョンは緑と青と赤にある。そしてその中で一番高難度のダンジョンがあるのが青である。
でも青の公爵が学生やってるのに、俺たちが青の領に行くってのは・・・果たしていいのか?
「グレイス様が行かなければいけないんじゃないですか?」
「ん?まぁそれが普通だが、出発前にも言ったように課外授業の一環だ。知らない土地を見るのも勉強になるだろう。自分の勝手知ったる地に行くのは味方も多いし、あまり勉強にならんからな。と、すれば公爵家が行ったことのない地にばらけさせるのがいいと考えたんだ。」
だからそう聞いてみたのだが、返ってきたのはそんな言葉だった。
勉強になるのは、間違いないだろうが、一番の高難易度とされている所に俺たち4人しか向かわないのはおかしなことだと思うんだけどな・・・
「不服そうだな・・・だが青が行けないとなれば序列が高い金色が行くのが自然だろ?そこにいつも私の授業を寝て過ごしているジャスミンに加わってもらった。どうだ?納得できるだろう?なに、いざとなったら私が守ってやる。死にに行かせるわけじゃないさ。」
そう言われてルーシーは納得したような顔をし、ジャスミンは焦った顔をした。
これで納得してしまっていいのだろうか・・・いや、おかしいだろ?でもルーシーが何も言わないのなら、俺がこれ以上何か言ったところで何も変わらないわけだし、変に突っかかっても関係が悪化するだけだろう。無理矢理納得するほかあるまい。
「よし、まー納得したのかどうかはよくわからんが、そういうことだから、明日からにしようと思ったが、これから訓練するぞーお前らは4人、この私にかかってくるといい。フォーメーションを確認してやる。誰か一人でも私の棒きれが首元にいったら私の勝ちだ。じゃ、行くぞ。」
そう言うと同時に教官からの強烈な殺気と重圧がかかる。
と、教官は魔法を放った。大きな火球を4つ、それぞれ俺たちに向けられて放たれる。
その速度は・・・遅い。視界を遮るのが狙いか・・・?
「ルーシー!」
俺はルーシーの前に移動、ルーシーもそれだけで察して俺の後ろをカバーする。
そして対抗して同じ威力の火球を生成し、打ち消しあおうとして4つ放った。
それは寸分の狂いもなくぶつかり合い、炎を消滅させる。
教官はその場から動いていなかった。ただその口元はニヤリと笑っている。
ジャスミンのメイドのナタリーは水の魔法を教官に放ち、その魔法の後ろにジャスミンは追従するが、
「フォーメーションもくそもあったもんじゃねえな。」
教官はそう呟くとナタリーの水魔法に手を向けて・・・「凍れ」と呟く。
するとその魔法は凍ってしまい、ついでとばかりに地面まで凍らせる。
ジャスミンは「ふうぇ」と変な声を上げて滑って転び、凍った水の塊に激突する。
火の魔法が8個も飛び交い、熱せられていたところを急激に冷やせばどうなるか・・・そんなのは簡単だ。
濃い霧がその場に出現した。
教官もジャスミンもナタリーも見えなくなる。
そして・・・呟くようにジャスミンが声をあげた。
「参りました。」
俺らは教官1人に負けた。そこから教官の説教が入り、「お前ら今まで何してたんだ?互いを知る機会なんて腐るほどあっただろ?」とネチネチと言われ続けた。その顔は説教が終わるまで終始ニヤニヤしており、なるほど、独身だというのを納得した。
と思っていたら何も言っていないのに殴られた。
そこからは移動時に何ができるかを話し合い、教官との模擬戦をしながらも移動した。
俺の初日のメシが思った以上に好評で、メシの担当は俺、見張りは4人で交代してまわし、寝るときは俺だけ地面を余儀なくされた。
正直、地獄だった。
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