オレンジ髪の幼女メロメロ大作戦
ちんまい・・・
そう感想を述べざるを得まい。
小学生にしか見えないのだ・・・そんな感想を抱くのは当然のことだと思う。
とは言え、今、気になることを言った。
「魔法陣が分かるのですか?」
「ハッハッハ!当然じゃ!なんたってワシは天才だからな!お前もなかなかの魔法を使えるようじゃし、見どころがあるからのう!教えてやっても良いぞ!」
ちんまいくせに、態度はやたらとデカいな・・・身長を全部態度に持っていかれたんじゃないだろうか・・・
でも、教えてくれるってのなら、教えてもらいたい。
「ぜひ、教えていただけますか?」
俺は護衛・・・執事だ・・・子供だと思っても同い年だろうし、失礼のないようにしなくてはいけない。
とはいえ、ゾーイの詳細もこれまた不明だ。
俺が知っているのは青、赤の公爵家と伯爵の銀髪、農民のクレア、この4名しか名前を知らなかった。
この4名は目立ったからな。まぁ護衛までは分からなかったけども・・・。
ゾーイは俺のそんな言葉に満面の笑みを浮かべ
「なら、見返りに何がもらえるのじゃ!」
と言ってきた。
見返り・・・か。俺にできることなんて別にないんだけど・・・・
「どんなものがお望みなんですか?」
分からなければ聞いてみるのが1番だろう。
「ふむ、決まっておる。前にお主が使った魔法もしくは・・・」
魔法は無理だ。原理を説明するのもめんどくさいし、複合魔法だし、ゾーイがルーシーの敵に回った場合、俺よりも危ない発想で魔法を使われては負ける可能性だってある。
だから先の言葉が気になった。違う魔法なんて言われたら断るしかないけど・・・
「もしくは?」
俺は急かすように聞いた。ゾーイは口の端を吊り上げてニヤリと笑うと、
「食べ物じゃ!」
と、声を大にしてそう言い放った。
「はあ・・・食べ物・・・ですか・・・?」
「そうじゃ!お主この前食堂に黄色い奴持ってきて食べてたじゃろ!ワシもあれが食べたいんじゃ!」
気の抜けた声をだしちゃったけど、そうか・・・オムライスか・・・この前ルーシーが食べたいって言いだして、ダンやリーゼ、クレア達にも振舞ったんだったな。
そうか・・・オムライスでいいのか・・・ふふ、あれの良さが見ただけで分かるのか・・・飛び切りの奴を作ってやろうじゃないか!
「なんじゃお主・・・目が怖くなっておるぞ・・・それで、どうなのじゃ?」
「そういうことなら、喜んでおつくりしましょう!貴方を料理でメロメロにしてやりますとも!」
ということでオムライスを作ることになった。
とはいっても、簡単と言えば簡単である。
前世の調味料と同じようなものがこの世界にもある。コーヒーもあったしね。
用意するのは冷めた米、ケチャップ、卵、生クリーム、白ワイン、バター、もも肉に玉ねぎ、塩コショウとこんなもんでいい。
まずはもも肉と玉ねぎを細かくしてバターで炒める。
そこにケチャップを入れて水けを飛ばし、冷めたご飯を投入して、さらに白ワインと塩コショウを加える。
それでケチャップライスは完成。
卵は2~3個をといて、そこに生クリームを液状のまま、生クリームの色合いくらいまで入れて、バターで半分だけ入れて弱火で焼いていく、この時は箸で空気を入れながら・・・ゆっくりだ。
残りを入れて、ちょっとしたら火を止め、余熱で形を整えながらまんまるの半熟を作り上げれば・・・完成だ。
好みで卵にチーズを入れたってうまいぞ。
ソースはつくったっていいが、最初はケチャップで食べてもらいたい。
「お待たせいたしました。」
ゾーイの目の前にコトリと皿を置くと、ゴクリとつばを飲み込む音が部屋に響いた。
「こ、これじゃ・・・遠くから見ていても食欲を掻き立てるこの色合い・・・そして匂い・・・ジョナサンに命じても作ることはかなわなかった一品・・・」
そう呟きながらスプーンで食べようとする。
だが・・・俺はそれを手で制した。
「な、なんじゃ!今から食べるところなのに!」
「失礼・・・ナイフで真ん中を薄く切り開いてみてください。もし、あれでしたら、私がお手本をお見せしますが?」
「いや、いい。ワシがやる・・・お、おお!」
ゾーイはナイフで真ん中を切り開くと中から半熟の卵が重力に逆らえないとばかりに崩れて、ケチャップライスを包み込んだ。
そこに俺はケチャップをすすっとゾーイの横に置く。
それをゾーイは見て理解すると卵の上にケチャップをかけた。
「よし・・・これでいいのじゃな・・・・それでは・・・!」
ゾーイはスプーンですくって一口・・・目を見開いた。
「な、なんじゃこれは!こ、こんな暴力が・・・あっていいものか・・・」
訳の分からないことを言いつつ、だがそのスプーンは止められない。
どうだ!オムライスはシンプルがベストなんだ。
そこに少しのアレンジを加えるだけでこんなにもうまくなる!
ジョナサンは後ろで静かに使えているが・・・俺のオムライスに屈したのだろう。
よだれがでているぞ!
クフッ
ゾーイはスプーンが止まることなく全て奇麗に食べ終わると、軽くゲップをした後、満面の笑みで「美味かったのじゃぁ」と呟いた。
「お粗末様でした。」
俺は最後にそう言って、どや顔を決めた。
火加減や分量に物凄く気を使ったからな。完璧と言っていい出来だったはずだ。
「お主・・・ワシの専属料理人に・・・」
「いえ、申し訳ありませんが、私はルーシー様の護衛でありますので・・・」
「それは残念じゃのう・・・本当に美味かったのじゃ・・・また食べられるかのぅ」
「それは、ルーシー様と仲良くしてくださっていれば、食事に誘われることもありましょう。私の料理はオムライスだけではありませんので。」
「おお!そうか!それならば今後ともよろしく頼むのじゃ!今日は満足じゃ!ご馳走様だったのじゃ!」
「いえいえ、こちらこそ。それでは失礼いたします。」
そうしてメロメロ大作戦は大成功した。
部屋に戻るとルーシーがいじけていたが、俺は料理がうまく出来たことに満足してしまったため、目的である魔法陣を教えてもらうことをすっかり忘れてしまった。
またルーシーにオムライスを作らされたことは言うまでもあるまい。
お読みいただきありがとうございました。




