ギリアムの洗脳
俺の部屋を通り、ルーシーの部屋に行く。
そこに全員が丁度座れる椅子があり、それぞれ席に着く。
「ジン、説明は頼んだ!」
あ、俺なんだね・・・
座るや否やルーシーは俺に丸投げしてきた。
「・・・畏まりました。まず、暗殺者の正体はダミアンと名乗る帝国宰相の駒使いの集団です。」
「な・・・なんで帝国が私の兄を・・・」
「帝国とは関係無く、宰相が単独で有名な冒険者などを退け、国力を低下させて戦争を吹っ掛けようと画策していたみたいでした。」
「それで私の兄が・・・?」
「はい。貴方の兄はB級の冒険者です。それも二つ名持ちであり、直ぐにA級に上がるだろうと言われていました。それだけ強く、帝国宰相からは恐れられていたのでしょう。」
「そう・・・なんですね・・・それで、集団というのは・・・?」
「そのままです。帝国宰相は洗脳の魔法によって多くの手下を操っていたようです。そしてそれぞれがダミアンだと名乗り、名前はそれで統一されています。」
「そんな・・・では、どうやって探せばいいのかは分からないのですね・・・」
「いえ、探す必要はございません。」
そうして俺はチラッとルーシーを見た後に話を続けた。
「貴方の兄を殺害したダミアンは、その後、お嬢様と私をターゲットにしてきたのですよ。」
「・・・えっ?冒険者じゃないのにですか?」
「ええ、ですが私たちの師はA級冒険者である戦闘狂ヒューグ殿ですからね、師を殺すために私たちに近づいて来たのです。なんとか拘束する事に成功して、王国の信用できる方へ引き渡しました。」
「引き渡した後・・・どうなったのかはご存知ですか?」
「その後は帝国宰相は行方不明となり、洗脳が解けたと同時に、今では王国の奴隷として働かされているようです。」
「帝国宰相が行方不明・・・ですか?」
「はい。洗脳も完全に解け、行方不明。恐らく何者かの手によって亡き者とされたのでしょう。貴方の兄を殺害したのはダミアンですが、指示を出したのは帝国宰相ギリアム・アベスドールです。その宰相は最早この世にはいないでしょう。」
「すみません・・。ついせかしてしまって・・」
「いえいえ、仕方ありませんよ。大切なお兄様に関することですので。」
こんな感じかな?宰相が魔物になったとか、そういったものは口止めされている。
それでもルーシーが話そうと思ったのは、クレアの兄が亡くなったと聞いたからだろう。
でも自分ではうまく説明できないと思って俺に丸投げしたと・・・まぁ、俺もこんなんでいいのか、よくわからないけど・・・
するとルーシーがウインクしてくる。
うまく出来てなくて、不細工になってるけど、まぁこれでいいってことだろう。
「へ~ジンもルーシー様も暗殺者を撃退するなんてすごいねぇ」
っとダンが疑い深い目で見てくる・・・だが、それは本当のことだ。
「いやいや、ダン殿!私は足を引っ張ってしまったのだよ!私に矢が突き刺さってな!ジンが何とかしてくれなければ死んでいた!」
ハッハッハと笑うルーシー。いや、何でそういうこと言うの?
ほら、ダンがジト目で俺を見てきたじゃないか・・・
「ジン・・・君は本当に何者なんだい?暗殺者を退け、見たこともない魔法を使い、青の騎士に参ったと言わせる君のその力は、どうやって身に着けたのか、本当に興味があるよ。」
「いや、ダンだってお嬢様に負けを認めさせたじゃないか。青の騎士は・・・あれは俺の負けだったし、俺なんてまだまだだよ。」
「わ、私のメイドだって・・・本気を出せば貴方くらい蹴散らしちゃうんだからね!」
「もちろんです!リーゼ様!」
なんかリーゼも張り合ってきた・・・てかフェリス・・・今までいたのかよ。
でもそうゆーのはいいからやめてほしい。
「そっか・・・もう敵討ちはしていただいていたんですね・・・ルーシー様、ジンさん、わざわざご説明・・・ありがとうございました。」
「うむ!まっ!敵を取ったというか、ダミアンを捕まえたのは、紛れもなくそこのジンだ。私は守られただけだしな!礼ならジンに言ってくれ!」
「ジンさん、本当にありがとうございました。」
クレアはルーシーにも俺にも頭を下げた。
「別に、俺はあの時急に襲われたからね・・・クレアの兄のことを知ったのも捕まえた後だったし、感謝されることでもないです。でも、そうですね・・・もし恩義に感じてくれたのなら・・・あのさ・・・」
俺が恩義に感じてくれたならって言った瞬間、クレアの顔が青ざめて、リーゼはビクッとなった。
それを見てダンはクックックと笑いをこらえるようにしてるが音が漏れてる・・・。
「あ、いえ、すみません。その・・・私はまだ、あの・・・・」
「いや、違うよ。お嬢様と仲良くしていただきたいって言おうとしただけです・・・ダンは笑いすぎだ。」
「いやーごめんごめん。」
「す、すみません・・・・・・でも私なんかがいいのでしょうか?」
「私は問題ないぞ!さっきも言った通り、敬語もいらないしな。同じクラスなんだから仲良くしたほうが良いし、今日みたいなことも私とリーゼがいれば早々起きることもないだろう!」
「ふん!まぁ、ルーシー様のお考えなら、賛成いたしますが・・・私の精霊の方が優秀なんですからね!そこの部分は勘違いしませんように!」
「お二人ともありがとうございます。私、ここで優しくしてもらえるなんて考えてもいませんでしたから、嬉しいです!」
3人ともぎこちなさそうだが、いや、ルーシーは何も考えてないみたいだけど、話すきっかけみたいになれたのなら、余計なお世話だったのかもしれないが、良かったと思う。
クレアは見ててちょっと寂しそうだったしな。
今回も半ば無理矢理みたいなとこがあっただろうけど、そうでもしないと、こいつら話もしなさそうだしな・・・。人生の先輩として陰ながらこっそりとって立ち位置で行こうと思う。
そうしてぎこちないながらも、話すようになった3人と、それに追従する感じの俺とフェリス、そこにちょいちょいちょっかいを出してくるダンといった感じで、少しだけ騒がしくなった。
別に誰も俺らが話すことに関しては気にした様子もなく、授業もこれといって、今のところは気になるところもない。
魔術に関しては火球などの初歩の魔法陣がどういったつくりになっているかは理解できた。
属性、威力、速度、魔力使用量そういった個所はおおむね理解したが、属性だけが変わるだけなので、威力や速度をどうやって変えればいいのか皆目見当がつかない。
で、それが分からなければ・・・錬金術のしようもない。
これに関して、ダンもリーゼもクレアも知らなかった。もちろんフェリスもだ。
そうして筆をころころ転がして困っていた時に不意に声がかけられた。
「おいお主、魔法陣が知りたいのか?」
俺はハッとなって周りを見渡すが誰もいない。
ん?気のせいか?と思ったら、
「こっちじゃ!お主わざとやっとるじゃろ!」
どうやら声は下の方から聞こえていたらしい。
チラッと顔を下に向けると、そこにはオレンジ色の髪でくりくりした目の幼女
ゾーイ・アラモンド
が両手を腰に当てて威張ったような態度でそこに立っていた。
お読みいただきありがとうございました。
ブクマと評価をしていただけると、モチベが上がります。
手間ではありますが、どうぞよろしくお願いします。




