決闘の敗者
「ジン、話がある。」
実技から1週間くらいが過ぎたある日、唐突にルーシーが真剣な顔でそう言ってきた。
俺も改まり、「何ですか?」と聞くと
「そろそろ、リーゼに何らかの罰を与えてやってはどうだろうか?その・・・確かにめんどくさいヤツではあっただろうが・・・見ているとかわいそうでな・・・お前にもそんな趣味があったなんておも」
「おい!まてまてまて!何の話だ?リーゼって俺に決闘挑んて来た伯爵家だろ?それは俺が勝って終わったじゃないか!その後なんて何にも関わっていないはずだぞ。罰なんてそんなのなくていいだろうが。」
そうだ。あれからあの銀髪は俺にもルーシーにすら話しかけてこない。平和な日々だ。
たまにチラッチラッて窺ってくるけど、それは全て無視してるし、このままでいいと思ってるんだけど?
「あ、いや・・・ジン・・・決闘というのはな、自分の全てを懸けて戦うんだ。つまり、負けた瞬間、勝者の物になると言ってもいい。全てが勝者に委ねられるんだ。それが古くから伝わる伝統になっている。」
「へ?」
「つまりだな、何もジンから言うこともなく、ジンの所有物として、リーゼはビクビクしながら過ごしているんだ。ジンがそれを見てゾクゾクするのは、私には理解できないが、そういった者もいると聞いたことがある。だが、流石に長いと思うんだ。その気が別にないのなら、解放してやったらどうだろうか。」
「・・・・・」
流石に言葉を失った。そんな話聞いたこともない。ハンケチ渡して、受け取ったら決闘・・・これしか聞いてない。
俺はそう聞くなり、頭を押さえつつルーシーへと問う。
「ルーシーは俺にそのことを教えてくれなかったよね?何で教えてくれなかったの?」
「何言ってるんだジン。やり方は覚えてなくとも、その中身は伝統のものだぞ?子供だって知ってる常識じゃないか。」
「いや・・・すまん。俺はそんな常識・・・初耳だ。前に話したはずだ・・・森の奥に住んでいたって。」
まずはルーシーの誤解を解くことが先決。俺は本当に知らなかったんだってことを訴えていく。
本当に理解してくれるまで真剣に話した。
「わ、わかったジン。そういうことにして」
「そういうことじゃなくって、本当にそうなんだ!」
「すまない。わかったから・・・別に、ジンがそうだったとしても、私は・・・別に・・・・」
「いや、ダメだ。しっかりと理解してくれ、またこんなことがあってもたまったもんじゃないし、パーティを組む以上そんな風に思われたくもない。」
「そういう意味で言ったのではないが・・・わかったよジン。それで、どうするんだ?」
どうするって・・・どうするもこうするもないのだけど・・・
「どうすればいいと思う?」
「それは・・・正直にそうはなせばいいのではないか?私に話したように、真剣に。私は余計なことを言いたくはないし、今日は護衛としていなくてもいいから、リーゼに話してくると言い。」
と、そんなこんなで、俺は一人、放課後になってリーゼの前に立った。
「あの・・・リーゼ様、お話があるのですが。」
「!」
リーゼは急に話しかけられ目を見開いている。いや、ずっとビクビクしていたっていうし・・・申し訳なくは思うけど、自業自得な部分はあるはずで、それに、リーゼの護衛のフェリスもすごい剣幕で睨みつけてくるし・・・なんかちょっとムカつくけど、このままにしてていいものでもないしな・・・
俺はなるべくにこやかに笑顔を作って話そうとすると、
「皆まで言わずとも分かります・・・・準備致しますので、3時間後に私の部屋まできなさ・・・来てください・・・。」
そう言ってそそくさと教室から出て行った。
いや・・・俺の所有物であるなら、最後まで俺の話を聞けよ・・・
他の連中は遠巻きに俺の事を見てるし・・・ダンは・・・苦笑してやがる。
あいつ・・・知ってやがったな。俺が知らないのも、周りが引いてるのも・・・
俺は助けを求めてルーシーを見るが・・・目を背けやがった・・・悲しい。
とりあえず食欲もなく、どうすっかなと考えながら、あっという間に3時間後。
俺は一人、コンコンコンと銀髪の部屋をノックする。
すると護衛のフェリスが扉を開け、憎々し気な顔で俺を出迎えた。
「っち、ようこそきやがりました。」
そうとだけ言うと奥に進んでいく。
「いや、あの、誤解をときにきたんだけど・・・」
「どういった意味か、獣の言葉は分かりかねますので、さっさと付いて来てこい。お嬢様が待っている。」
こいつ・・・
俺はグッと堪えて中に入る。そうだ、本人に言ってさっさと帰ればいいだけだ。
こちらですと案内された扉に入り、扉を閉められガチャリと鍵を向こう側から閉められた。
あれ・・・
薄暗い部屋を見渡すと、ベットの前に一人の少女が座っている。
リーゼ・バレンシア
銀髪黒目の伯爵令嬢。
ピンクの薄いネグリジェを着ている。
あれ?おかしいな・・・
「どういうこと?」
「は・・・はじめてなので・・・そ、その・・・」
顔を赤くして、もじもじしてる。
「いやーあのね?その・・・俺は森の中で育った田舎も田舎の出でね?その、言いにくいんだけどさ、決闘のやり方も知らなかったし、その意味なんて、常識なんて言われたけど、俺は知らなかったんだよ。」
「・・・え?」
「だから、その意味を知ったのは今日お嬢様に聞いた時でさ、それで、俺は別に何にも思っていないし、何もしないし・・・ただ、ずっと貴方がビクビクしてたって聞いたから、その誤解を早く解かなきゃいけないって思ってさ・・・それで話したんだけど・・・」
「じゃ、じゃあ、何もしないの?」
「うん・・・」
「やっぱりってなったりもしない?」
「うん。ないよ。しいて言えば」
そこでリーゼの身体がビクッとなるが、そうじゃない。
「お嬢様・・・ルーシー様と仲良くしていただければ、と思います。」
せっかくの学院生活だ。ルーシーにとっていい思い出になればいい。友人が出来たり、普通に楽しんでくれれば、喜ばしいことだろう。
俺も前世の学校生活は、くだらないと思いつつも、友達と過ごすのは楽しかった。同じ趣味の話をしたり、新しい人と出会ったり、いい影響も悪い影響も少なからず受ける。
昔を思い出せたのも、こうやって護衛としてこられたからだ。俺はそういったことに感謝している。
それをぶち壊すようなことを俺はしたくない。
それを聞いたリーゼは
「よがっだー」
と言ってうぇ~んと泣き出し・・・
扉が急に開いて護衛のフェリスが駆け寄って、「良かったですね。」と抱きしめている。
うん。なんか、完全に悪者みたいになってる。
フェリスは「貴方の事を誤解していました。」とそのまま軽く会釈され、泣き止みそうにないので、もうお帰りくださいと言ってくれた。
俺もそれじゃあと軽く会釈してから部屋を出た。なんというか・・・俺が悪かったのかなぁ・・・?
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