龍ではなく亜竜
「よーーし、全員集まったなーーー!席に着けーーーー」
俺らが教室に入ると、眼鏡をかけたスレンダーな女性がうしろから大声でそう言った。
「席は自由だ。さっさとしろー」
俺らは各々好きな席へと腰をおろす。俺はルーシーと共に一番後ろの席を陣取った。
護衛するなら後ろの方が相手の動きが見えるし守り易いからな。サボりやすさもこっちの方が良さそうだし。
「よーーし、私がこのクラスの担任になった教官のアベリ・シュナイザーだ!ここでは貴族階級とかは一切関係ない!私のことも教官と呼べ!お前らは生徒!それ以上でも以下でもない!わかったなーー!!」
一同は無言で頷く。これはいい制度だろう。優秀な奴が埋もれたりすることもなさそうだ。
「護衛の方々も一応はここの生徒という扱いにする。規則は順守するように!そして護衛は関係ないが、2か月に一度筆記試験と実技試験がある!その成績次第ではクラスが入れ替わるから覚悟しろよ!お前らは追われる側だ!うかうかしていると追いつかれるからそのつもりで授業に励め!」
まぁ、俺には関係なさそうだが・・・
クラスが落ちると俺の部屋はどうなるんだ・・・?
「あ、そうそう、護衛の奴らはBクラスに落ちると部屋がなくなる。つまり護衛対象と同じ部屋に住まわせてもらうか、廊下で寝るか辞めるかだな!せいぜいクラスを下がらせないためにサポートすることだ!」
うわぁ・・・・まじかよ・・・
まぁルーシーなら実技は問題なさそうだが、筆記があるのがやばそうだな。
俺がルーシーをチラリと見る。
「っ!!」
見られたことにびっくりしたのかルーシーの目がめちゃくちゃ泳いでいる・・・
「だ・・・だい・・じょうぶだぞジン!筆記・・・多分大丈夫だ!最悪一緒に寝ればいいのだからな!」
全然大丈夫じゃなさそうだな・・・一緒に寝るわけがないだろうが・・・お前朝起きると頭と足が逆になってるのよく見かけるし・・・無理・・・。
「護衛諸君も重要事項に気付いたところで・・・早速授業を始めるが、まずは一般的な歴史を学んでもらおうと思う。まぁ、お前らは既に知っていることだとは思うが、おさらいだと思って聞いていけ。
ああ、自己紹介は各々好き勝手にやってくれればいい、授業にそんな時間は割かないぞ!
ってことで、お前らも知っている通り、古代魔法という言葉がある通り、この世界は一度滅んでいるわけだが、今の時代と比較すると、調査結果では、全くもって古代の時代に技術や魔法は追いついていない。それはなぜか・・・そこの銀髪少女、わかるか?」
教官は質問を前の席に座っていた銀髪で黒い瞳の少女に投げかけた。
「わたくしの名前はリーゼ・バレンシアと申します・・・それは前の技術の大半が伝わっておらず、生き残った者は一部の少数の貴族がいたものの、ほとんどが技術や魔法に関する知識のない農民だったからだと聞いております。」
「そうだ。また、生き残った貴族も武術に特化した者達だったときいている。だからこそ、その技術等は継承されず、時代と共にそれらも更に失われた。よって今はダンジョンや地に埋まった遺跡等から稀に出てくる残った書物やアーテイファクトからでしかその技術はいかされていない。ではなぜ、そんな超技術の大国が滅んだのか・・・そこの赤髪」
「っ!!私はデブス・レッドフォードだ!公爵だぞ!伯爵風情が!」
デブスは目を見開き怒鳴り散らした。
「おいおいデブス・・・まぁ、ちゃんと説明すればいいのか?国王よりそういう命を受けている。ほれ、この紋章があるだろ?これは教官全員が付けている。これはずっとついていたぞ?気付かなかったのか?・・・それともお前なにか?国王の命に逆らおうって?」
教官は短気なのか超速でまくしたてる・・・大人気ねえ・・・
「い、いえ・・・申し訳ございませんでした!!!!全く見えていませんでした!!」
「わかったからもういい。で?答えは?」
「は!超大魔法を使用しようとして爆発したと聞いております!」
「何でそんなものを使った?」
「言い伝えでは悪魔が魔物を使い進撃してきたということでした。」
「そうだ。だからこそ我らは魔物を狩るし、力を着けねばならない!いつ脅威が来るとも分からないからだ!お前らに一つ良い情報を教えてやろう!幻想種である龍はわかるな?それに含まれているグレイトドラゴンだが・・・あれは、幻想種ではない。ワイバーンの仲間、その一つ上の存在とされている。だがどうして幻想種なんて呼ばれるようになったかといえば、私たちの技術、魔法じゃ倒すのに苦労するからだな。古代人はあれを一人で軽く捻っていたらしい。どうだ?今と古代じゃぁどれだけ力の差があるか思い知るだろ?」
そう言って教官は辺りを見回す。
にしても龍ではなく亜竜だったとは・・・あの強さでか・・・・・
確かに、あのグレイトドラゴンを軽く捻ってしまうのであれば、俺との力の差は歴然だ・・・俺はあれで死にかけているし、今戦ったとして、どれだけの余裕を持って倒せるか全くわからないしな・・・試したくもない。
ともあれ、ここらへんの歴史は俺もオリヴァー公爵家の優秀な執事ウェルシスさんから聞いて知っている。
師匠にも最初にちょこっと聞いていたし、エリーさんからも、冒険者になったときに魔物は狩らなければ、危険にさらされるとも聞いていた。
生き物を殺しているのだから、当然抵抗があったのだが、スタンピードを起こしてしまうのは、魔物を狩らないからだと言われている。
つまり放っておけば人類種にとって、戦えないものにとっては脅威でしかないのである。
数千数万、海千山千の魔物を一気に相手にするか、ちょこちょこ魔物を減らしていくか、どちらがいいかと聞かれれば、当然後者となるわけだ。
そんな感じの初歩的な説明から授業は始まり、昼休みになったのだった。
食堂に移動し高級そうな飯を食べていると・・・
「おい貴様!!なんで貴様がルーシー様と一緒に昼食を食べているのよ!執事でしょ?頭大丈夫!?」
俺が頭を上げるとそこには教官に一番最初に質問されたリーゼ・バレンシアが怪訝そうにこちらを見ている。
俺は一言
「ええ、大丈夫ですよ。」
と返した。




