入学試験
ルーシーは掛け声とともに剣を両手で握り左腰に添えながら肉薄する。
一方の教官は左手に持っている盾を全面に構えて、右手の剣は相手に見えないように後ろに持っている。
その二人が剣と盾で激しくぶつかる。
ガンという音とともにルーシーはノックバックされ、教官の剣が下から這う様に切り上げられる。
ルーシーは上段まで弾かれた剣をその速度のまま右手だけで後方にくるりと廻し、左手で受け取るように一周させると逆手で持った剣で教官の剣を防ぎながら後退する。
そのハットトリックな躱し方に教官も驚いている。あんな受け流し方でも互角だったことにショックを受けているようだ。
今度は教官から仕掛けた。
ルーシーに体勢を立て直さない為だろうが、ルーシーはそれを見越していたのか風の魔法を行使し、自信の身体を無理矢理に動かした。
再度衝突する。
だが、ルーシーの魔法の加速は伊達じゃない。そのまま教官の剣をはじき返し、続けて盾で防御しようと教官も上手く動くが、その前にルーシーは叫びながら剣を叩き込む。
「秘技!龍昇撃!!!」
ルーシーはただ盾を絡めとり両手を上げる形となった教官の首元にピッと剣を突き立てた。
昔の蛇なんちゃらと全く変わらない同じ技だし、龍が昇るような一撃でもないが・・・・もはや何も言うまい。
「恐れ入りました・・・・」
教官は両手を上げたまま降参する。
「うむ!教官は本気ではなかったようだが・・・まぁ私の勝ちだな!」
「いえいえ、魔法は使いませんでしたが、剣だけは本気でしたよ。それにしてもお強いですね・・・そちらの方と何か関係がありそうですが。」
そう言って俺の方をチラッと見る。
「うむ!ジンは私よりも全然強いぞ!友人であり、先生であり、頼れる仲間だ!」
「そうですか・・・羨ましいですね!私を倒せたのはルーシー様を含めて2人です。今のところはですけどね。文句なしにAクラスとなるでしょう。今日はこれで終わりになります。明日に結果発表をし、そのまま入学式となりますのでよろしくお願いいたします。」
そうして無事に試験は終了した。
後でルーシーに聞いた話、教官は有名な宮廷魔法師らしい。
どうりでルーシーが緊張してたわけだ・・・。
ともあれ、ここでの宮廷魔法師がどれ程の強さかはわからないけど、教科書通りならば、魔法の種類は多くない。
というか、魔法の概念がチグハグすぎるからな。この世界でも、『何でか分からないけど魔法が使える!便利だなぁ』くらいにしか思っていない。
研究は進められているみたいだけど、なんのこっちゃといった感じだ。
それに加えて古代魔法なんてのもあるらしい。
昔の方が栄えていたんだそうだが、その都市は滅んだそうだ。
それでも残っているものが古代魔法と超文明が造ったとされるアーティファクトと呼ばれる便利なもので、それをまねて作ったのが魔導具なんだそうだが、まぁ俺には今のところ全く関係ない。
そもそもアーティファクトなんてのは金で買えるものじゃない。国宝指定されており、見つければ大金が舞い込んでくるが、そんなもんだ。
考えても仕方がない。
それよりも、翌日になって寮に荷物入れに来たのだが・・・・
「ルーシーさん・・・俺の部屋って貴方のお部屋と繋がっているの・・・?」
「うむ!当然だろ?一応執事ということになっているのだから!」
「ルーシーは外に出るにも入るにもいちいち俺の部屋を横切るのか・・・」
「ん?特段なにも困ることはないだろ?」
「いや、まぁーそうなんだけどね」
部屋に入るとまず俺の部屋、そして奥がルーシーの部屋になっている。
護衛でもあるのだから当然といえばそうなんだけど、居心地がすこぶる悪そうだ・・・
全ての来客に俺が対応しなければならないとはわかっていたが、くっそめんどくさいな。
「まぁでも、めちゃくちゃ広い部屋だな・・・」
「私も別にこんな広くなくてもいいのだがな、友でもできれば使ってもらってもいいし、後で考えよう!」
俺の部屋だけならちょっと高いマンションくらいの大きさだと思うが、ルーシーの部屋は俺の倍ある・・・部屋の数も多いし、いったい何に使うんだよってくらいある。
それぞれにキッチン、風呂、トイレ等必要なものは全てそろっているし、Aクラスは食材も自由にもらえるらしい。
食堂はお金がかかるようだが、調理せずに済むからありがたい。
他の生徒と一緒に食べるのは楽しいかもしれないしな。
とはいえキッチンがあれば、好きな時に食べられるし、ゆっくり食べることもできる。俺には嬉しいことだ。
「友達を住まわせるのは勘弁してくださいよ・・・お嬢様・・・」
「ジン!今はルーシーでもいいではないか!お嬢様とかいうのは皆の前でだけと決めただろ!」
「いつ誰が聞いているかもわからんしな・・・誰かに聞かれれば俺が困るからな・・・自主防衛だよ」
「うむぅ・・・・」
どこぞの平民が公爵を呼び捨てにすれば、それこそ俺の首が飛びそうだからな・・・
ルーシーには悪いが、そんなことを言われても『お嬢様』で通していこうと思う・・・。
そうして入学式が始まったが、俺らはずっと座って長ったらしい話を聞かされただけだった。
「話ほんと長かったな・・・・」
「うむ・・・私でもこれは・・・疲れた・・・」
俺らはゲッソリしつつもAクラスへと足を運んだ。
たった8名しかいないが護衛がついている生徒もいる。
全員で14名が顔を会わせた。




