赤の公爵
王都の中心部の城の周りには重要な施設が立ち並んでいる。
図書館や教会の本部、騎士の訓練場等もここにあり、その中に貴族学院がある。
そしてその周りに貴族の屋敷があり、それを囲うように王国民の民家が立ち並び、さらにそれを囲って冒険者ギルドや、酒場、武具屋等の施設が並ぶ。
つまり、俺は外側しか歩いたことがなかった。
国民街と貴族街を通り抜けたその先にある学院は、4階建ての要塞のように頑丈そうな建物で、その面積はデカすぎてよくわからない。
その学院の豪勢な入り口の前に、ちょこんと新入生受付と書かれた場所があった。
「あそこが受付か、ルーシー早く済まそうぜ。無難にひっそりと目立たないことが大切だ。事前の打ち合わせ通りにしてくれよ。」
「うむ!わかっておる!さあ行こうかジン!」
本当にわかっているのか心配になるが、俺らは受付に並んだ。
途中身分の低い貴族が場所を譲ろうとしてきたが、それを断りちゃんと並ぶ。
「おい!そこをどけ!」
唐突に後ろからそんな声が届く。
「そこをどけと言っているんだ気様!私を知らないのか!!!」
そんなことを言いながら並んでいた新入生を次々にどけながら俺らの後ろまで迫ってくる。
「ん?おお!これはこれは、ルーシー・オリヴァー殿、お久しぶりでございます。」
そう言うとその男は大ぶりな手ぶりで挨拶を交わしてくる。
赤髪に赤色の瞳、身長は俺と変わらないが、横の長さは俺の2倍はある。
豪華で派手な赤色の服装に身を包んでいる。
王国の公爵家はそれぞれのカラーが決められている。
シャーリーのオリヴァー公爵家は金色。他には赤、青、緑、黄土色となっていて、この生意気なデブは、赤を基調として全体をまとめている。
つまり赤の公爵レッドフォード家の人間であり、そこの次男であるデブス・レッドフォードだろう。
このルーシーの年代には3人の公爵家がおり、そのうちの1人というわけだ。
俺に歴史等を教えてくれた執事曰く、このレッドフォード家は気をつけろとのことだった。
これを見れば一目瞭然だろう。納得する。
ルーシーはどうするのかと見ていると、頭に?マークを浮かべ、
「うん?誰だ?」
とか言っている・・・。それだけでもデブスは顔を真っ赤にしていたのだが、俺が耳打ちで、レッドフォード家のデブスだと伝えると、
「ハッハッハ!ジン!面白い冗談を言うな!こんな生意気なバカがレッドフォード家の人間なわけないだろう!」
うん・・・俺は今すぐにでもルーシーの頭をひっぱたいてやりたくなったが、他の貴族が見ている間は出来るはずもなく・・・
「っく・・・・お、覚えていたまえ・・・」
顔を真っ赤にしながら、ワナワナと震えながらそう言うとデブスはその場からいなくなってしまった。
恐らくいたたまれなかったんだろうな・・・。
何でも、公爵家においても序列があるらしく、デブスのとこが確か一番下だった気がする。
ルーシーのところは丁度真ん中なんだと。
とは言っても、別に同年代間では敬語は不要みたいだ。
ルーシーの様子を見るからして、敬語なんて使わなそうではあるけども。
「ルーシー・・・あれはレッドフォードだぞ・・・そういう挑発はやめてくれよ・・・気に食わない奴ではあったけど、うまく引かせられるようになってくれ。」
「すまんなジン。私はああいうのがどうしても鼻についてしまう。もちろんレッドフォードだというのは気が付いていたのだがな・・・・すまない。」
「ああ、わかっててやっていたのか・・・意外だな・・・。まぁ、周りからの評価は上々だろう。あまり気にしなくていいか。」
そんなことを話していると俺らの順番になった。
「次の方・・・ルーシー様こちらへどうぞ。」
「うむ!よろしくお願いします。」
「いえ、そんな・・・私はただの受付ですので、それではルーシー様、最初にクラス分けの試験がございます。魔法と武術どちらでも使用していただいて構いません。」
「ん?両方使っても構わないんだよね?」
「え?・・・ええ、もちろんでございます。教官との模擬戦で審査員を含めての判定になります。」
「うむ。わかりました!」
「クラスはAからDまであります。Aクラスは上位8名で、広い個室が用意されています。BクラスはAよりは狭いですが個室です。Cは相部屋、Dは6人部屋となります。順番はすぐに来ますので、もうしばらく・・・あ、順番になりました!どうぞお進みください。」
その言葉を聞いて俺たちは学院へと足を踏み入れた。
入ってすぐに庭のようなものが真正面に広がり、それを囲うように建物が横に伸びている。その庭のような中央には審査員たちと思われる人達が集まっていたため、そこまで歩いていく。
「初めまして、私が今回試験の教官を務めさせていただくジークフリードと申します。試験は模擬戦、何でも使っていただいて構いません。武器はこちらからお好きなものを使用してください。」
ジークフリードと名乗った教官は、金髪のサラサラヘアで爽やか。少女漫画にでてきそうなイケメンだった。俺は好きになれそうにない。
「うむ。よろしくお願いします。・・・・・じゃあ私はこの片手剣を使います!」
とルーシーが選んだ木剣は片手剣用のいつもルーシーが使う剣よりかは少しだけ短い剣を選んだ。
「分かりました。私は・・・どうやら手加減等不要なようですね・・・では、これを使わせていただきましょう。」
ルーシーの構えと、気迫を見て、教官はルーシーと同じ剣に盾を慣れた手つきで装備した。
「いつでもいいですよ!かかってきてください!」
「うむ!それでは・・・・・参る!」
ルーシーの掛け声とともに試験という名の模擬戦が開始された。




