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失望者の異世界転生  作者: コバヤシ アキラ
第1章
42/137

ただの想い

ドオオオオオオオン


真っ二つにされた、ギリアムが地面に倒れた。

まさしく一瞬の出来事。


「すごい・・・」


思わず声が漏れた。


「師匠!何ですか今の!」


「ん?ああ、気と魔力を剣に込めるんだよ。そうするとバカみたいな切れ味になるぞ。覚えとけ。」


気も剣に注げるのか・・・そして、魔力も込める・・・


「師匠にはホント、かないませんね・・・」


参ったなぁ、全く・・・何時までも追いつける気がしない。



ふと、倒れたギリアムの辺りが、白く光っていることに気が付いた。

ギリアムの牛の右側の心臓部分、そこがうっすらと光っている。


あれは・・・狩人の心眼の急所の光?

そう思った瞬間、


「シネエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!」


真っ二つにされたギリアムが叫び周辺が歪む―――


「師匠!!!」


気付いた時には師匠は大剣を前にかざし防御の姿勢をとり、吹き飛ばされた。

俺は離れていたため、ルーシーの前でシールドを張り、何とか耐えられた。


ギリアムが真っ二つになった身体をつなぎ合わせるように、再生しようとしている。


(今しかない)


俺は小太刀に残りの全てを込める。魔法、魔力、気、想いなんでもいい、とにかく全部、ありったけを――――


そして走り出し、切り裂く。


「甘いわ!!!!」


寸前のところでギリアムは蛇を再生させており、それらを犠牲にして防ぐ。

小太刀に無茶をさせすぎた所為か、その刀は俺の込めたものに耐えられなかったのか、表現通り粉々に散った。





だが―――――――――――




「まだまだぁぁぁぁぁぁぁあああああああ」



俺は木刀を取り出した。

俺を助けてくれた女神様から貰った木刀。

それを奴の心臓に突き刺す。もう何も残っていない。


残っているのは、ただの想い。

せめてルーシーを、師匠を・・・俺もこんなところで死にたくはない。

まだこの世界で何も成せていない。何も知らない。


MPも気も、もう何も出せないが・・・これで・・・!


「グフッ・・・・こんな餓鬼に・・・・」


ギリアムは血を吐き、今度こそ絶命した。そして、それと同時に木刀もまた、願いを聞き届けたかのように粉々に砕けた。


俺はそのまま、意識を手放した。






「ここは・・・・・・・」


視界がぼやけ、体がものすごくだるい。今まで常に調子が良かったのだが、この感覚は久しぶりだな・・・。


「お、ジン!!気が付いたか!」


その声は・・・


「ルーシー・・・無事で良かった・・・。」


「いや、不甲斐ない・・・足手まといにしかならなかった。すまない・・・。」


「そんなことはない。助かったのは事実だ。ありがとう。そういえば、残りの魔物はどうなった?」


ギリアムを倒せたのは覚えている。だが、残りの魔物は4千匹くらいいたはずだ。


「ああ、それなら、あの怪物が死んだあとに、他のすべての魔物は霧散していったぞ。」


「そうか・・・あいつが魔物を作り出していたからなのか?よかった。」


よかった・・・やっと、戦いが終わったのか。


「ところで、し・・・いや、ヒューグさんという大剣もったおっさんを見なかったか?」


師匠は大怪我を負ったはずだ。特級ポーションを渡せればいいんだが


「誰がおっさんだ!あんときは師匠なんて言ってたくせに!」


声が聞こえた方向を見ると、俺の反対側のベッドに、全身包帯だらけのヒューグさんが横になっていた。


何という痛々しい姿・・・俺と同じく重症のようだ。


「うわ・・・ご、ご無事で何よりです・・・。」


「そんなことより、頼む・・・ポーションを俺にくれ・・・実は声を出すだけで死にそうなんだ。」


「はいはい」


そう言って俺はポーションを2つ出して、ヒューグさんと乾杯をした。

反省点はめちゃくちゃある。だが今は、大事な人が生きている喜びを心から嬉しく思うのだった。


「ところでジン!これはなんなんだ?」


そう言ってルーシーが俺に見せてきたのは1本の漆黒の刀。


「ん?こんなの俺は知らないぞ?」


「ああ、それお前の持ってた木の中から出てきたぞ。」


どうやら師匠は刀が出てくるところを見ていたらしい。


ん?木刀の中から出てきた?・・・・もうあれだな・・・。

考えたら負けな気がする。とりあえず、有難く頂きますよ女神様・・・・。


俺の手持ちの武器は全て砕かれたが、この刀が手に入った。

黒一色の刀。鞘から抜いてみたが、刀身までもが吸い込まれるような黒だ。

神様が真っ黒い刀寄越すってのも変な感じだけど、この刀はもの凄く美しい。大事にしないとな・・・。


この一件を指揮していたであろうギリアムを、俺たちは討ち破った。これで戦争が開始される、なんてことはないだろう。


ギリアムが言っていた「あのお方」とかいう奴が気になるが、考えてもしょうがない。帝国の宰相が死んだんだ。あっちの方がダメージがデカいだろう。


一件落着、とまではいきそうにないが、ここ最近のモヤモヤが解消されたのは喜ばしいことだ。


――――――


時は転生時に遡る。



「それでは、あなたにとって良き人生となりますよう・・・」


そう言うと雨宮仁は姿を消した。


「ふふ、お名前を間違えるなんてあるわけないじゃないですか・・・雨宮さん。それなりに冷静じゃなかったようですね・・・さて、お次は・・・」


カツカツと歩いてまた別の方へ向き直る。


「目覚めましたか?高杉聖也。」


「ここは死後の世界。私は簡単に言ってしまえば女神と呼ばれる存在ですね。貴方はトラックに引かれそうになり、そのままショックで亡くなってしまったのです。」


「・・・・・・・・・」


「信じられないというのは分かります。ですが、せっかくの貴方のその知識、輪廻転生させるのはとても勿体ないと思ったのです。そこで、提案なのですが、剣と魔法の世界で生かしてみる気はありませんか?その場合は、記憶を保ったまま、人生をやり直すことができます。」


――――――――――――

――――――――――

――――――――

――――――

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――

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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