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失望者の異世界転生  作者: コバヤシ アキラ
第1章
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ギリアム・アベスドール戦2

「ふん・・・忌々しいハエめ。まあ、誉めてやろう。あのエネルギーをくらっても尚、生きているとはな。」


ギリアムは表情を変えずに、俺にそう言い放った。


「そりゃどーも・・・」


俺はすかさず小太刀を握りしめ突撃する。


ほんの一瞬だが、ヤツに疲れが見えたからだ。纏う魔力も少ない気がする。


あの衝撃波、恐らくそう何発も撃てるものじゃないのだろう。


そうでなくては困る、という俺の願望も含まれるのだが・・・。ヤツが立て直すまでの時間がどれくらいかは分からないが、チャンスだ。


俺は戦法を変え、火弾を撃ちまくりながら奴へと迫り、斬りつけた。

先ほどの攻撃から、まだヤツのバリアは回復していないのだろう。火弾も今なら通る!

しかも、あの鋼のように硬かった皮膚すらも柔くなっているようだ。


火弾はやすやすと牛の顔へと到達し、めり込まれていく。

俺が振った小太刀も、牛の左前脚を斬り飛ばす。


「っしゃぁ!」


あれだけの防御があの一発で切れたのか・・・それほどの威力を出していたからな。そうじゃなければ俺もやっていられない。


魔法を常に当てていれば、あのバリアがいつ復活するのかがわかるだろう。

しかも俺には特級ポーションがある。この繰り返しになってくれれば・・・もしかして、いけるか?


しかし、バリアが切れただけだ。黒い塊も蛇も健在だ。

今はまだ、そこまで深追いはしない。

焦ってはならない。

俺は適当な距離をとり、魔法をばら撒いていく。


しかし、すぐに魔法の効果はなくなった。


それからしばらく、この攻防戦をひたすらに繰り返した。


「私は最強の力を手に入れたが、そこのハエもそれなりに強者のようだな。どうだ?まだ間に合うぞ、私に従え。」


「何言ってやがる糞野郎。もうそんな余裕かましてる場合じゃないんじゃないか?お前の息の根を直ぐにでも止めてやるよ!」


散々こいつに振り回されたんだ。その落とし前は付けさせてもらう。


「フン、まあよい。お前を敵と認識してやる。少々本気を出してやろう。」


あの黒い塊がいくつも展開される。その数は10。

こいつ、まだそんな余力が残ってやがるのか・・・。


その塊が、縦横無尽に解き放たれた。


俺はその圧倒的物量の塊を避けていく。かすっただけでメキメキと骨が軋み、切り刻まれる。

これをいくつも作り出されたんじゃたまったもんじゃない・・・


「どこを見ているんだ?」


不意に背後から糞野郎の声が聞こえた。振り返ると、奴はすぐそこにいた。

俊敏すぎるだろ。


逃げようとするも塊が俺を囲い、逃げ場がない。


「クソがっ・・・・!」


2匹の蛇が俺の両腕に噛み付き、力が抜け落ちる。


「クックック、お前のようなハエなんぞ、私が少しばかり動けば、こうなる。私がお前ごときのために動いたことを誇りに思うがよい。」


ギリアムは憎たらしく俺にそう言い放つ。

一体俺はどうすれば・・・


「ジンを放せ!」


ボロボロになったルーシーが飛び出し、ギリアムに向かう。

この短時間で・・・いや、どれくらいの時間がたったかなんて、もう分かりはしないが、ルーシーは戻ってきた。だけど・・・


「来るな!ルーシー!」


「ふん、小娘の気配なんぞ最初から分かっていたわ!」


ヤツはそう言うと、あの塊をルーシーへ放つ。


俺はその塊を目で追った。


「ぐっ・・・!」


ルーシーは一つ目は躱した。いや、その一つが躱される直前に分裂し、ルーシーの足に直撃した。


「ルーシー!!」


「すまない・・・ジン・・・部隊には伝えたのだが・・・私しか来ることが出来なかった・・・」


俺は大声で叫んだが、ルーシーは消え入りそうな声でそう告げて、そのまま気を失った。


ルーシーの足は・・・無くなっていた・・・

ここまで、気配を消せないルーシーは行き来してくれた。それは多分・・・死ぬ思いで・・・俺の為に・・・


(カチリ)


何かが俺の体の中で音を立てた。


「許せない・・・・」


「フン、いまさら何を言う。そいつもお前も、死ぬのだよ。」


許せない・・・自分が許せない・・・・何が、助けになりたいだ・・・・


ルーシーを二度も・・・・


俺は渾身の力を振り絞る。

噛まれた腕など気にせず、足で蛇を蹴り上げる


蛇の頭をポッキリとへし折り、もう一方の蛇は殴って潰した。


「なにぃ!!!」


ギリアムは驚愕し、声を上げるが、俺はただ無言で腹パンを決め、蹴り飛ばす。

圧倒的な暴力を前にギリアムは脅えだした。


「な、なんだお前は!その強さはなんだ!!!く、くるな!!!」


一歩一歩ギリアムに近付いて行く、もう何も考えられなくなっている。あるのはただ、あいつを殺したいという、殺意だけだ。


(殺してやる)


頭の中がその思考だけで占領される。



しかし突然、俺の肩に誰かがポンっと手を置いた。



「遅くなって悪かったな、ジン。とりあえず落ち着けや。」


その顔を見た途端、安心すると共に色々な感情があふれ出てきた。


「今までどこに行ってたんですか?心配しましたよ、師匠・・・」


俺の唯一無二の師匠、ヒューグさんが、そこにいた。


「おう。すまなかった。取り敢えず、あそこの嬢ちゃんを手当てしてやれ。ポーション持ってんだろ?悪いが、あいつとケジメ付けんのは俺だな。手が空いたら手伝ってくれや。」


「わ、わかりました・・・ありがとうございます・・・。」


俺はルーシーの元に駆け寄り、すぐさまポーションを飲ませた。

あのまま我を忘れて突っ込んでいれば、もしかすると、ルーシーを見殺しにしてしまったかもしれない・・・。


俺は・・・・・・


だが、今は、ヒューグさん、もとい師匠に目をやる。


「クックック、お前がヒューグか?

貴方には散々振り回された。まあ、今となってはどうでもいい雑魚でしかない。だが、危ないところを助けられましたね。一応感謝しますよ。

それじゃ、死ね。」


「グダグダうるせえなお前、たかが魔物がしゃべるんじゃねぇよ」


ギリアムが生成した10個の黒い塊が、師匠へと縦横無尽に駆け回りながら迫っていく。

しかし、師匠はそれを余裕を持って躱していく。


よく見れば風魔法を纏い、効率よく使っているみたいだ。

だが、魔法は・・・


「師匠!そいつに魔法は今通じません!」


俺は慌てて師匠にそう投げかけたが、


「おう!何となくわかるからまかせとけ!」


そう言って師匠は、背中に携えてある身の丈ほどのある大剣を構えた。

あのスピードであの大剣を持って移動するなんて。そんなことは俺には絶対にできない・・・


師匠は風の魔法を付与した大剣を、ギリアムへと叩きつける。


付与した風は、大剣の半分から後ろにしかかかっておらず、単純に振り下ろすスピードを底上げするために使われていた。



その単純な斬撃は、見惚れるほどに美しく真っすぐ、ギリアムの身体を真っ二つに切り裂いた。

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