【桜雷】
俺の風魔法により、20匹近い魔物が切り刻まれて絶命した。
たった20匹だ。
残りは3千から4千匹いるだろう。
だがこの間に体勢を立て直してもらうよう大声を上げた。
「ここに指揮者はいますか!?」
「私だ!近衛兵副団長ラーズ・バルバラッドだ!」
「俺は冒険者のジンです!先ほど特級ポーションを届けました!死ななければ回復できます!今のうちに重傷者を下げるように指示を出してください!」
「わかった!第一陣は第二陣と交代!重傷者を下げさせろ!ジン殿は戦力に計算してよいか!?」
「もちろんです。魔法と弓、剣を少々、足は速いのでどこにでも送り込んでください!」
この間にも火・水・土・雷を全て俺のできる最大火力で順番に行使する。
それで副団長が俺の戦闘力を踏まえて計算すればいい。
「5属性持ちとは・・・それらは何度放てるのだ?」
副団長は一瞬驚いたようだが、すぐに冷静を取り戻した。
「一つの属性だけであれば100発ほど放てると思います!」
今は何も隠したりしない。人の命がかかっているんだ。そんなことは俺にはできない。
「わかった!ここに留まるよりは、遊撃として動き回り魔物をかく乱してくれ!他の指揮者にも伝達しておく!」
「わかりました!」
短く答えて木の上に飛び乗った。
最前線は今のところ問題なさそうだ。で、あるならば、全方位攻撃が一番燃費が良く、かく乱もできる。
木々の上を隠密を用いて移動していく。
この辺りだな。
俺は紫色の雷を木の上から放電する。それらは魔物を目掛け電撃を浴びせるとともに体を切り裂く刃と化す。
紫電は常に俺の手と繋がり、そして枝分かれしては周囲の敵を感電させ、体内の血液を沸騰させ、切り裂き、血をまき散らす。
その紫電は木の枝の如く、その舞う血は桜吹雪の如く
よって名を【桜雷】とした。
なかなか気に入った名だ。ルーシーみたいに叫ばないけどな。
そうしてかく乱させながら、桜雷をまき散らして戦ったのだが・・・。
「まったく・・・数が減った気がしない・・・」
俺は多分千から二千は狩っているはず・・・だが一向に減る気配がないのだ。
魔力は残り半分ほどだ。
前線は動かすことなく守れているが、数が減らないのであれば負け戦でしかない。
一旦戻って副団長のラーズさんにも聞いてみたが、同じ反応だった。
最初は確かに千匹ほど減らせたのだが、今は全く減った気がしないのだ。
「ジン殿、もし、可能であれば、この大群の先を見てきてはもらえないだろうか。この先に何かあるのかもしれない・・・。もちろん、無理にとは言わない。どうだろうか・・・。」
確かに、俺も同じことを思っていた。
「分かりました。無理そうなら戻ってきますが、よろしいですか?」
「すまない。よろしく頼む。」
そうして俺は奥を確認するべく木々の上をはしりだした。
こいつらはなんで一直線にリグム村に向かっているんだ・・・スタンピードは大発生ってだけで、大行進ではないはずだ・・・これも帝国が何かしているのか・・・?
俺はとうとう魔物の終わりまでたどり着いた。
「なんだ、終わりはあるのか・・・ん?」
終わりは確かにあった。あったが・・・
「魔物がうみだされているのか・・・?」
そこには1体の大きな口をあけた魔物がいる。
その口からオークやオーガが出てきている。
「ちっ、こいつが原因か・・・」
俺は火弾を放つ。それは容易に眉間に辿り着く
が、
その手前で動きをピタリと止め、みるみるうちに火弾が掻き消えた。
「誰だ!!そこにいる奴は!!でてこい!!!!」
ビリビリと全身に鳥肌の立つほどの怒号でその魔物は声を出した。
俺は姿を見せることなく、逆方向から弓を放つ、矢はダミアンに放った漆黒の一撃
だがこれも・・・火弾と同じようにかき消された・・・・
「ックックック、我はギリアム・アベスドール・・・・このような化け物になってしまったが、このとめどなく溢れる力・・・この力で王国を・・・・いや、全てを蹂躙してくれるわ!!!」
最早人間には決して見えない、ギリアム・アベスドールと名乗る怪物が、俺に向けて黒い塊を放ってきた。




