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失望者の異世界転生  作者: コバヤシ アキラ
第1章
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成長の速さと小太刀(仮)の力

30階層の扉を開けた。

物凄くデカくて重厚な造りをしているだろうに、物凄く軽く開けられる。

全てを魔法で片づけてしまえば簡単だろうが、だからこそ発展がちぐはぐなのかもしれない。


今は目の前のことに集中する。


シーフである俺が正々堂々と戦うのもなんか違う気がするのだが、本物の強さを得たいと思う俺にとっては、これもまた、技術を磨くためなのである。


でてきたのは・・・真っ白な巨人。


「ジャイアントスケルトンか」


これは当たりといっていい、ここにはグールのデカい奴かスケルトンの2択なのだが、グールだった場合、臭いで中に入れないのだから。

全長7mくらいの骸骨、目の部分が赤く光り、心臓の部分には大きな魔石がある。

分かりやすく魔石が弱点なのだろうが、俺は今回、弓も魔法も使わない。

つまりルーシーに何とか魔法で体勢を崩して貰うか、俺が敵の足を切断するかしないと攻撃が通らなそうだ。


ルーシーのお手並み拝見といこうか。

魔法は光と聖魔法が得意だが、本人は最初、この二つしか使えないと思い込んでいた。というよりも、この2つしか正確にイメージ出来なかったという事になるのだが・・・。

それを詳しく説明してやった。俺が実演し、隅々まで観察させた。後は魔力操作で、属性変換を効率よく出来るように練習させる。

すると、全ての属性を何とか行使することができたのである。

まだまだ戦闘に使えるほどのものは光と聖だけだが、どうしてそうなったかといえば、子供のころに読んでいた御伽噺のせいだろうと思う。


その冒険者は国の為に戦い続ける。ゴブリンから始まり、最終的には邪龍等を相手に、光と聖魔法、それに剣を駆使して何度も立ち上がり戦い続け、神龍や大精霊からの加護をもらいつつも奮闘していく物語なのだそうだ。


で、その時のイメージが頭から離れないのだと思う。


だから多分こうなってる。


ルーシーは「くらえ!!!!ジャスティスレイ!!!!」とか叫んで光と聖の混合魔法をスケルトンに与えている。


質が悪いのはそれがめちゃくちゃ効いていることだろう。


ジャイアントスケルトンも「オオオオオオオオオオオオオ」とか唸って膝をついている・・・・


そこ合わせなくていいから!!!


俺は微妙な気持ちになりながらも近付いて止めを刺したのだった。




なんだかんだ思うことがある。

俺は果たして強くなれているのだろうか?と。


俺が強さを追い求めるのは、理不尽な目に合わない為、俺の大事な人を守れるだけの力が欲しいため、そして女神様の最初の言葉。


(世界を救ってもらいたい)


俺が撥ねて殺してしまう予定だったあの少年が、この世界を救う予定だった。


つまり、この世界は危機的な状況になるのだと分かる。

好きに生きていいとは言われたものの、それが分かるのならば、俺では何もできないかもしれないが、最善を尽くしてあげたいと、守ってあげたいと思ってしまう。

あの時の俺は心も死んでいた。この世界に来て、少しは自分を取り戻せたと思う。

俺は女神様に感謝しているのだ。そしてこの世界が好きだ。

それはリグム村の人たちにヒューグさん、ルーシー、エリーさん等、本当に出会えてよかったと思える人たちばかりなのだから。


それに、ゲーム感覚がまだ少し抜けていないのもあるかもしれないが、頑張れば頑張った分、それが力となる。

前世では考えられなかったものだ。俺がいくら頑張ろうと、何も変わらない。

それがここでは違うのだから、ありがたい。


俺は強さを求めなければいけない。俺が世界なんて大それたものを救うことができなくても、ほんの少しでも力になるために。


何が起こるのかわからないから、力で解決できるものじゃないかもしれないんだけどね・・・。


だからこそ不安になる。俺はどれだけ強いのか、どれだけ俺より強い奴らがいるのか。


ここはBランクの冒険者もくるダンジョンで、全部で50階層。

そのうち30階層まで攻略した。


攻略といっても地図は買ってあるから、道なりに出てくる魔物を狩って進むだけでいいのだが・・・


何はともあれ、Bランクが単身で1日でクリアできるダンジョンだときいている。

ならば俺の強さはまだBランクに達していないと捉えるのがいいのだろう。


potentialだけは一丁前だが、使いこなせていないのが現状だ。

だからまだまだ鍛錬は怠れない。


ほとんど金策とレベル上げでダンジョンに来ているようなもので、技術はルーシーと対峙した時の方が向上する。

だがやはり蓄えはあったほうがいいのだから、こうやってコツコツやっていくのが性に合っているのである。


これだけのスキルを与えられてまだBランクというのは、やはり俺には才能というものはないのだろうと哀しくはなるんだけどね・・・。



大分話がそれたが、そのダンジョンは2人で無事にクリアできた。

ちょっと手間取ったのは50階層のボスのキマイラだ。

40階はバグベアという大きい熊さんだったのだが、素手でリーチが短く、動きも遅かったため、ルーシーの雷と俺の剣で、あっさりと倒せたのだった。

そして50階層も余裕だろうと思っていたのだが、このキマイラは、ライオンをベースに尻尾は蛇になっており、背中から鳥の顔が生えていたのだが、ライオンは火を噴き、鳥は風をおこし、蛇は毒を霧状にして吐き出す。迷惑極まりない魔物だった。


なにより、素早く、火や毒を吐いては、風で拡散されるので、近付くことが難しい。俺は弓と魔法を使わないと決めていたため、どう倒すか逃げながら考えていたのだが、ルーシーがおもむろに


「私の日ごろの鍛錬を披露する時が来たようだな!!!」


と言い出して、水と風の混合魔法を行使し、敵の攻撃が吐き出される前に壁のようにして出現させて防ぐ。

もう水と風の魔法が一端に使えるようになったのには驚いた。


防いでくれたのなら後は俺の出番である。

小太刀をトラックから取り出すと、魔力を流して気合をいれる。

ミスリルと魔鋼の複合の剣は魔力伝導率が高いが、重量が重いという性質がある。

これは少しでも軽くするために鍛冶屋のおっちゃんが試行錯誤して作った失敗作だと言われるもの。


確かに重いが、俺は失敗作だとは思っていない。なにせ魔力を注げばこいつの切れ味は凄まじいことになる。


俺はキマイラに向けて、3m離れた場所から小太刀を振った。

真っすぐに、鋭く。


この小太刀は長さはないが、それは魔力で補えた。魔力を注げば注ぐほど、その切れ味は増し、刀身も伸ばすように魔力が小太刀を覆っていく。

それは小太刀が長身の刀に見えるほどに。


そしてそれは事実、長身の刀だった。MPではない為、斬撃を飛ばすなんてことは魔法を使っていない以上はできないが、こんなに応用もできる優れた小太刀を俺は失敗作とはどうしても思えない。


こんな風にキマイラも真っ二つにすることも簡単なのだから。


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