新たな場所へ
俺は暗殺者の職業がシーフであると取調べにて聴取していた。
暗殺者は、シーフと狩人を極めた先にあるという。元警察官だった俺が暗殺者になるのなんて変な感じもするが、なんていったって暗殺者のスキルは侮れない。
暗殺者は気配も何もなく対象物に近づけるのだ。戦闘の上位者になるにつれ、常に警戒し、一定のpotentialを引き出しつつ休息をとることができるらしいが、そんな器用な真似が俺にはできるとは思えないわけで・・・。
シーフですら、潜伏、気配遮断、聞き耳、逃走、望遠、敵意感知が手に入るらしい・・・なかなかの良スキルばかりなのである。
それぞれが戦闘特化のスキルではないものの、持っていて損はないものばかりだろう。
死亡率を下げてくれる便利スキルならば、大歓迎である。
今回の件はとりあえずエリーさんに丸投げした。ルーシーは今回の討伐依頼の達成でちゃっかりDランクに上がった。
そのルーシーも、「ジンは悪くないではないか!」と、気にせずにいてくれるみたいで、このままPTを続けてくれるみたいだ。
で、宿に帰ってきたわけだが・・・・
「ジン!聞きたいことが山ほどあるぞ!!」
と、質問攻めにされた。
まず、魔法である。ルーシー曰く、俺の弓矢の魔法は「ありえない」の一言であった。
なんでも魔法士は本に書かれた魔法に、そのままレベルをつけて行使しているらしい。
俺がこの前図書館で読んだ魔法学校の魔法だろうけど・・・
例えば火球は火魔法のレベル1に該当し、魔力が強ければ強いほどにその大きさも大きくなる。
これを聞いただけで俺の異常さには気づけたのだが、どうやら圧縮なんてのを考える奴はいないみたいだ・・・と。
そしてそんなものなのだから、弓矢を魔法で作ってしまうなんて奴はいない。そもそもその技術がないという・・・。
「ん?エリーさんは魔法は想像だと、言っていたぞ?」
そう、エリーさんは、俺に魔法のことを教えてくれた時、魔法は想像力だと確かに言っていた。で、あるならば、俺はおかしくないのでは?と思ってしまう。
「それはその教科書の通りに想像して行使するという意味なのだ!決して自分で魔法をイメージしたのをそのまま使えるという事ではない!!それにそんなことができるのであれば、自由に空を飛べるし、属性関係なく魔法が使えてしまうではないか!!!」
うーーん・・・自由に空を飛ぶ――か。空を飛ぶためのイメージがきちんとできていればできるんじゃないか?
飛ぶために必要なものっていったら、多分翼をイメージするだろうが、そんなんじゃ飛べないことを俺は知っている。
翼を作ったとしても、それを動かす筋肉もなければ、その巨大な翼を支えることも困難だ。
俺なら・・・重力を操れれば簡単だと思うが、それだと闇?無?わからんからな、なら風かな?
俺を持ち上げるほどの風を地面から吹き上げる。上昇した風はまた地面に循環させるように再利用させる。
後は俺のバランスを補うため、無属性を循環させた風の中に発動させ、固定させる・・・。自由に動くために足の下に吹き上げる風を集中させるか。
俺の体が持ち上がる。
ルーシーは目を見開いてビビりまくってた。
「ちょ!お、おま、じん!!え?なんで?なんで!」
ただこれは・・・・MPがすぐに尽きそうだな・・・
俺は魔法を解き地面に足を戻した。
「これは無理だ。MPがすぐに尽きそうだ。」
「そこじゃないだろ!」
と突っ込まれてもな・・・。
「でも、これでイメージだって伝わっただろ?」
飛べたと言うよりは浮いたが正解だろうけど、これができたのは、地球での知識が少なからずあるんだろうけどね。
ルーシーは興奮して私も魔法がいい!と言い出してきた。
確かにこの世界というか、王国の魔法は攻撃魔法で、飛ばすという発想しかないみたいだしな。
それは多分、魔法士が全体的に魔力とMPに特化しているからじゃないかとは思うけどな。
「俺はシーフになる予定だし、ルーシーが魔法職があるならなってみてもいいんじゃないか?」
もしルーシーがそんなに魔法が使えなかったとしても、元に戻ればいいだけで、魔法が多少使えるのならば、目くらまし程度には役に立つかもしれない。
そして次の質問は、ジョブレベの上昇速度である。
なぜか、俺とPTを組んでから、上昇速度が上がったらしい。
でもこれは俺にもわからん。俺の上昇率は他人と比べて格段に速いというのは自覚しつつあったし、ヒューグさんに騙されたんだなとは思いつつも、俺もルーシーには俺の教えがうまいからだと、そう自慢しておいた。
やたらいろいろ質問されたけど、適当に答えてやった。
ルーシーに使ったポーションも特級だけど、内緒にしといてくれと言っておいた。そうそう、あの暗殺者も俺の事を少しでも口外すれば殺しに行くと伝えておいた。契約ということにして外に出してあるけど、マジで信じてしまっているらしい。
こうして一応この件は終わったのだが、スタンビードってのがいつ来るのか、何をしようとしているのかも分からない今は、少しでも力をつけるために頑張るしかない。
お互いにDランクになり、この王国周辺にはいい狩場がない。
もしかしたら、また俺たちから情報を聞き出そうと、帝国から暗殺者が送り込まれる可能性もあるかもしれないと考え、俺らはダンジョンのある町に移動することにした。
カナリム王国から東に位置するアシュレイ領のエストという町の近くに、ダンジョンがあるのだ。
宿の老夫婦に挨拶をし、俺らはエストに向けて出発するのだった。




