所在不明とある秘密
俺らはそのまま冒険者ギルドへと足を運んだ。
あれ以来あの5人組は姿を見せていない。今日もいなかった。
俺らは2階に上がりエリーさんを見つけて声をかけた。
「お疲れ様ですエリーさん!ヒューグさんに会いたくて、何か良い方法がないか聞きに来たんですけど・・・」
「あら、ジンくんにルーシーさんお疲れ様です。ヒューグ様ですか・・・申し訳ございませんが、あれ以来一度も見ておりませんし、確かにあの時ジンくんから伝言があるかもしれないからちょいちょい顔を出すとは言われていたのですが・・・どこにいるのかも分からない状態です。何かあったのですか?」
ふむ・・・どうしたものかな・・・
「ジン、今までの事話したほうが良いと思うぞ。私たちでは解決できる問題ではないと思う。」
と、ルーシーが言ってきた。
「そうだな、ルーシーの言う通りだ。」
俺はルーシーの提案通り、エリーさんにすべてを話すことにした。
「突然すみません。エリーさんお話があります。王国にも関わるお話かもしれないのですが、よろしいですか?」
「そんなに大事なんですか?うーんギルドマスターが今不在なのですが、いいでしょう。私がお話をお聞きして、必要であれば私からお話しします。それでは場所を移します。こちらに付いて来ていただけますか?」
そう言ってエリーさんは俺らをギルドの奥、応接室と書かれた扉を開けて腰を下ろす。
そして、今までの経緯を話した。もちろん俺に関するスキル等は話さないで、出会いから矛盾がないように、ただ、生命草だけは、俺がたまたま手に入れられたことにした。こればかりは誤魔化せない。
「そうだったんですね・・・。まず、怪我もなくご無事で良かったです。それで、ヒューグさんの件なのですが、私からもお話があります。」
そう言って聞かされた話は、ヒューグさんの腕の怪我の理由。
宿屋で暗殺者に狙われ、反撃して撃退するも、腕に後遺症が残ってしまったこと。その後は、基本を忠実に守った戦闘スタイル、技術力、何よりもAランク冒険者まで駆け上がったその力を買われ、教官になったのだが、そこから数々の不評の噂が流れ、訓練に参加した貴族から反感を買い、教官を続けさせることができなかったということ。
「その・・・噂は事実だったんですか?」
「いいえ、全くの事実無根よ・・・誰かが情報操作をしたとしか思えなかった。でも、それを嘘偽りだと証明するものもなかった。ギルドは勿論ヒューグ様の噂を払拭しようと努めましたが・・・さらに追い打ちをかけるように貴族からの圧力も加わり、抵抗しようとしたところでヒューグ様が身を引く形になってしまわれたのです。」
なんだその情報操作・・・一体なんでまた・・・
沈黙が部屋を包み込む。俺に出来ることが見つからない。
個の力がこれほどに無力だと感じるのは久々だった。
「ジン、暗殺者ってもう死んじゃったの?」
ルーシーの言葉にハッとする。
そうか、機関に渡して、自供してもらえばいい。
それで対応してもらう。ただ、帝国がそんな奴の自供で動くとも思えないし、帝国に対して王国が言うとも思えないが、王国が警戒するだけでも違う。
冒険者の見る目が変わるだけでも状況は違ってくるはずだ。
「そうだな。自白した暗殺者を捕らえています。どこに連れて行けばいいでしょうか?」
「それについては私に任せて頂戴。しかるべき所へ責任を持って連れて行くと約束します。ジンくんには・・・伝えるべきね。私は王国の情報部隊の者なのよ・・・王国の冒険者に対する扱いは、複雑な事情があってね・・・でも今回のことを伝えれば、少なからずその対応は変わると思う。変えていかなければならないと思うはずよ・・・少しずつでも・・・だからどうかジンくん、冒険者を嫌いにならないで。」
「うむ。それならばジン、私も話さなければならんことがある。」
ん?なんだこの流れ?エリーさんが国の情報部隊?ルーシーも何か爆弾発言するの?
「エリーさんのお気持ちは分かりました。特に嫌いになったりしないので大丈夫ですよ。俺にはヒューグさんっていう立派な師匠がいますしね!で、ルーシーまで何かあるわけ・・・?」
「うむ。実はな、私の名前はルーシー・オリヴァーといって、リグム村の領主であるジュイデン・オリヴァーの三女なんだ。」
「えええええええええええええええ???!?!?!?!!」
何それ????!?!?!?!
「まぁ、それ以外は特に何も変わらないからな!特段秘密というわけでもなかったんだが、この機会に言ってしまおうと思ってな!」
うん?公爵家の娘ね・・・????俺はてっきり貧しい村の出の娘かと思っていたよ??????
なんでもルーシーは・・・
ルーシーは、オリヴァー公爵家三女であり、物語の冒険者に憧れを抱いた。
たまにリグム村に父と遊びに出かけては元冒険者から手ほどきを受けていたそうだ。
幼いころから冒険者になりたいと言っていたルーシーに対して、彼女の父親は条件付きではあるが許可を出してくれたという。
エリーさんにパーティーの相談をすると、俺を紹介をされたのだが、俺を助けに来たのは偶然だったらしい。
そして、俺の名前を聞き、話していく中で、パーティーに誘うことを決めたとのことだった。
ちなみにその後、エリーさんの付けたしで、父ジュイデン・オリヴァーは娘が大人になるにつれ、諦めると思っていたそうだが、その決意が変わらなかった。また、なったとしても、厳しい世界であり、すぐにあきらめて帰ってくると楽観視し、許可を出した。
スライム等でも魔物は魔物、大事な娘なので、ギルドへ相談し、怪しまれずに優秀なパーティーを組んでもらうように王国とも繋がりのあるエリーに任せたのだそうだ。
なぜ俺にしたかというと、ヒューグさんが鍛えた冒険者であり、太鼓判を押されていたからだということだった。
なんだかルーシーの父親の苦労が目に浮かぶな・・・。
で、俺らは今だに同じ部屋で寝泊まりしている。別にお互い大事な仲間であるし、男女関係は全くないのだが、これをルーシーの父上が知ったら抹殺されそうである。
そもそもルーシーには、1度死にそうな目に合わせている・・・。
傷跡は残らなかったからバレることはないが、結構胃が痛くなる事実を聞いてしまった・・・・。
と、なかなかにいろいろな情報を貰ったが、後は王国次第。このまま危険な目に合うようなら、王国を離れることも視野にいれるし、二度と今回のような襲撃が起こらぬよう、さらに警戒をすることにする。
良い方向にいくことを願うばかりである。
2人には随分驚かされたから、仕返しとばかりに暗殺者の男を目の前で釈放して引き渡してやった。
めちゃくちゃビビらせてやったぜ・・・ざまあみろ!
でもその男、なかなかの有名人だった。
疾風のタイラーっていうB級冒険者を暗殺していたらしく、ほかにもいろいろな悪事を働いていた。そして懸賞金がかかっており、金貨4枚頂いた。ラッキーだった。
それにしても今回の件で暗殺者の強さを改めて思い知った。
なぜなら・・・・
認識外からの一撃はpotentialを無視する。
どんなにpotentialが高くとも、それを常に最大限に発揮できる者はいない。
寝ている時や、無警戒の時等はpotentialなんてのは発揮されていない。
そこに攻撃が加えられれば、瞬殺されてしまう。
どんな強者でも油断していれば、そうなってしまうのである。
だからこそ、俺は魔法士が終わったら次に何をするか決めていた。
シーフである。




