襲撃
「おい!ルーシー!大丈夫なのか!?」
俺はすかさずに声をかけた。左肩を怪我してゼーゼーと肩を上下させている。
「問題ない!こいつは一人でやらせてくれ!!!」
ルーシーが叫ぶ・・・。めちゃくちゃ心配なんだが!
でも本人が言うしな。最悪火弾を使用して助けに入るために準備をする。
見極めは大事だが、致命傷を与えられそうなら迷わずに撃つ。
その心配は杞憂に終わることとなった。
ルーシーは一旦距離を取ろうとみせかけ、胴体のみを後ろに引く、剣持コボルトはそのフェイントに乗ってしまい追撃しようと一歩前に出てしまう。
そこを待ってましたと言わんばかりに踏み込み、相手の懐まで一気に差を縮め、首を狩っ切った。
これは俺がルーシーと試しに打ち合いした時に俺が見せた逮捕術でよくやってた技だった。
「ふふん!どーだジン!!うまく使いこなせていただろう?」
ルーシーは得意げにそれを自慢してきた。まぁあれはただ腰から上だけを後ろに引くだけなんだけど、大事なのは相手に後ろに引くと思わせること。
これはなかなか難しい。上半身だけで距離をとると思わせる演技をしなければならないのだから、頭、目、口、肩、腕等、そのすべての動きを微調整して釣る。
それでいえば・・・
「まだまだだけど、いい感じだったのは認めるよ。」
俺の言葉にルーシーはニコっとして嬉しがった。まぁ及第点だったのは本当だからな。
「でも今のはサシでしか効力を発揮しないからな!俺が助けてなかったら危なかったじゃねえか!」
「う・・・たしかに・・・」
と今度はシュンとしだした。
「でも俺らならやれることが分かったな!パーティーなんだから2人で倒せるならそれでいいだろ?追々一人でも倒せるようになればいいだけだ。」
「うむ!そうだな!私でも軽く倒せるようになってみせるさ!」
って感じで初戦は終えたが、次からはルーシーの体の切れが異常に増して圧倒していた。
聞いたらレベルもジョブレベも上がったらしく、それからは安定して倒すことができたのである。
そうして俺はDランク、ルーシーはEランクに上がり、一応初心者、新米というものから脱することができた。
Dランクになったと言っても気の緩みなどなかったつもりだし、毎回安全な立ち回りを心掛けていたつもりだった。
だが、それは魔物に対してであり、完全に気配を消した者からの死角からの攻撃など想定外だったのだ。
ルーシーの右肩に1本の矢が突き刺さった。
「ルーシー!!!」
俺は目を見開き、飛んできた方角の気配を探りながらルーシーに駆け寄ろうとする。
ルーシーも直ぐに反応して回避行動をとるものかと思っていたが、仁王立ちのまま動かない―――いや、動けないのか?
手足が痙攣している。言葉も発さず、振り向きもしない。
俺が近寄るまでにルーシーの両足まで射抜かれる。
俺はパニックになりながらもルーシーをつかむと引きずるように矢の飛んできた方角から隠れるように大木の後ろに移動した。
「おい!ルーシー!!しっかりしろ!」
俺の声に反応ができないようだが、きちんと息はある。
俺は矢を風のカッターできれいに斬り、抜いて、特級ポーションを取り出そうとしたときに声がかけられた。
「そのまま動くな。」
静かに、そしてはっきりと、背後から男の声で告げられた。
「何が目的だ!?」
俺は動くのをやめ、聖魔法を行使し、止血する。とりあえずの応急処置をこなした。
「ああ、ヒューグって奴の居場所を聞きたいんだよ。知っているんだろう?どうもこちらの情報からでは探し出すことが出来なくてねぇ・・・」
「ヒューグさんの居場所?それだけの為にルーシーを・・・?それにヒューグさんの居場所なんて・・・いや・・・それを知ってどうするつもりだ?」
わけが分からない・・・この前の5人といい、今回といい、ヒューグさんに何があるってんだよ
「ふん、本当に知らないみたいだな。なら死ね。」
そう言うと、大木の後ろからしていた気配が消えた。
気配を消して弓矢で攻撃してくるってことは、俺と同じような職業のはず。
まずやるべきこと・・・俺は特級ポーションをルーシーに飲ませた。
このポーションは解毒の効果ももっている万能ポーションである。
在庫は沢山ある。なんてったって【トラック】のレベルがⅥになり、調合ができるようになったからだ。ブロデ村長に調合の素材や割合を聞いていたからな。量産できるわけだ。
俺の居場所を知られている以上俺の攻撃はどうしても後手に回ってしまう。
「ルーシー!動けそうか?」
恐怖で動けなくなる可能性も考えて聞いたが、
「うむ!問題ない!どうすればいい?」
「ルーシーはここから自分の身を守ってくれ!死ななければ怪我は治るが、カスリでもすると毒で動けなくなりそうだ・・・気を付けてくれ。」
「わかった。ジンはどうするんだ?」
「やるだけやってみるさ・・・」
それだけ言うと俺は動き出した。
俺は索敵スキルを前方にしか使用していなかった。後ろは魔物を倒してきた道であり、警戒する必要がなかったから。それが甘かった。
俺は集中して索敵を円のように、徐々に広げていく・・・
!!!
「ルーシー!左から来る!!!」
ルーシーは俺の声を聞いた瞬間に右に避ける。その場所に矢が突き刺さった。
後ろにいた敵は左側に気配なく移動していた。だが、これで場所がわかった。
俺は弓を構えて魔法を行使する。
俺じゃなく、ルーシーばかり狙いやがって・・・関係ないのに・・・
怒りがフツフツと湧き上がる。
弓矢は最大最速で敵に届くものがいい。
そして苦痛を味合わせる。容赦はしない。
痛みといえば、俺の中では闇がイコールで結ばれる。
深く、激しく、何処までも終わることのない痛み。
そして最速は雷と風。
ドス黒く紫電と風を纏った弓矢が完成した。
ここまでに1秒もかかっていない。こんな形で練習の成果が出るとは思ってもいなかったが・・・・
敵の動きを見極めて・・・・・・・・今だ!!
放つと同時に敵の腹部に着弾する。
「ぐわぁあ!!」
200メートルくらいの距離を一瞬にして到達させ、男は痛みに叫んだ。
俺はそこから相手の両手両足に再度今の弓を放ち、警戒しながらそいつの傍に近づいて行った。
俺らを殺そうとしたプロなのだ。気は抜くことは出来ないし、仲間がいる可能性もある。四肢を射抜いただけで警戒を解くなどできるはずがない。
索敵には引っ掛からない。どうやら一人・・・俺はその男を拘束するのだった。




