パーティー
っとその前に宿屋にチェックインしに行く。
俺がいつもお世話になってる宿屋のツキグマ亭。ここはヒューグさんお勧めの宿屋で、老夫婦の2人がひっそりとやっている。
この2人はいつも優しくて、ご飯も美味しい。ここの食事でもいいんだけど、お礼ともなればちょっと奮発してもいいかなと思い、割高な酒場に行こうと思ったのだ。俺が一度は行ってみたくて丁度いいと思ったわけではないのだけども。
俺とルーシーが宿屋に着くと、そこには婆さんが店番をしていた。
「ただいまー!ばあちゃん!こちらのルーシーって人もここに宿泊したいんだけど、宿空いてる?」
ここはもう毎日帰ってくる家みたいになっていて、ばあちゃんもじいちゃんも親しく接してくれている。
「おや、お帰りジン!うーん、すまないねぇ・・・ここの所空いてる部屋はなくて・・・そうだ!あんたの所に特別に簡易ベットを設置することならできるよ?あんたのとこだけ部屋が広いし!」
「んーーーそっかぁ・・・ルーシー申し訳ないがそれでもかまわないか?それとも他の宿屋探してみる?」
「むむ!宿まで払ってくれるのか?野宿を覚悟していたからな!!とても有難い!!ありがとうジン!女将さんもありがとうございます。」
そう言って俺らにお辞儀をするルーシー。
「いやいやルーシー、俺を助けてくれたんだ。これくらいさせてくれよ。」
そう言って少しやり取りした後、俺は簡易ベットの設置を申し出て設置すると、料金を支払い、酒場に出かけてくると伝えて向かった。
料金は追加で大銅貨2枚の格安だった。
酒場について中に入る。中はなかなかの高級感で、酒場というよりはレストラン。イタリアンチックで奥に石窯らしきものもある。
正直期待大である。俺らの場違い間はこの際気にしない。
「ちょ、ジン!ここすごく高そうだぞ!大丈夫なのか?」
ルーシーがそわそわしながら小声で話しかけてくる。めちゃくちゃ不安みたいだ。
「バカルーシー、ここは堂々としてればいいんだよ!金の心配はいらん!たらふく食えばいい!!恥ずかしがったら負けなんだよ!」
俺は自分にも言い聞かせるようにそう言うと、ウェイターが注文を取りに来た。ウェイターと表現したように、店員の服装もバッチリ決まっている。
俺らはぎこちなくもなんとか注文して料理を静かに待つ。
「っと、ルーシーさん。いい加減にその頭に着けてる重そうなものを取ったらどうだい?てっきり店に入る前に取るかと思ったのに、取らないなんて・・・なにか理由があるのか?」
そう。ルーシーはガシャガシャとずっと鎧を着たまま兜すら取らない・・・
それこそがこの場違い間の圧倒的な要因だろう。
ウェイターなんて俺たちが入って来るや否や身構えていたからな・・・
「ああ、そうだな。特に理由はないといえば嘘になるが、言うタイミングがなくてだな・・・。」
そう言って兜を取り外していく。顔に深い傷でもあるのかな?と思っていたが、そんなのじゃなかった。髪は長く、色はハニーブロンド。美男とも美女とも思える整った顔立ちだった。
「ルーシーさん?貴方の性別をお伺いしてもよろしいか?」
「う、うむ。私は女だ。それで舐められるのが嫌だったからな・・・こんな格好をしてたわけだが、おかげでジンを助けられたのだから、悪い手ではなかっただろう?」
兜外して話すと、めちゃくちゃきれいな声だった。兜で声がこもって低く聞こえていたのか・・・てかさ・・・
「お前、野宿しようとしてたの?てか一緒の宿なんだけど、大丈夫なの?」
女が一人野宿とかありえないだろう。そんなの寝れないぞ・・・。俺ですら野宿は恐くて一人じゃ絶対できないってのに・・・。
「最悪寝れなかっただろうな・・・この甲冑を買ってしまったばかりに金がなくなってしまってな。でも結果泊まれるのだし、冒険者である以上男とも野宿するわけで、そうゆうのには慣れなければいけないしな!」
いやいや、そんなドヤ顔されてもな・・・まぁあれだ、俺は気にしないけどね・・・。
なんやかんやと話していたら酒と料理がきた。
酒は葡萄酒、料理はアンティパストと呼ばれる前菜から、プリモ・ピアットと呼ばれる、ピザにパスタ、セコンド・ピアットと呼ばれる肉や魚を使ったメイン料理だ。
前菜からお皿いっぱいに盛られており、その後の料理もガッツリとした男前イタリアンって感じで、素材の味を活かしたような料理が次々にでてきた。
ハッキリ言おう。めちゃくちゃうまかった。
デザートはミルクのアイスだったけどこれもまたうまい。てかアイスあったのねって感じ。
ルーシーも・・・うん・・・とびっきりの笑顔でガツガツ食ってる・・・。
「うまいな!うまいな!」しか言ってない。喜んでもらえて俺は嬉しいよ。
葡萄酒もなかなかのものだろう。魚はこの辺りに海はないから川魚だろうけど、味はピカイチ。日本と比べちゃいけないが、それなりに近いうまさを感じる。来て良かった・・・。
俺らは料理をぺろりと食べ、宿に戻った。
金額は大銀貨1枚。一人5万円だった。
宿に戻って二人きりになり、ルーシーは神妙な面持ちで俺に言ってきた。
「ジン、あの酒場とこの宿で、十分過ぎるものを貰ったのだが、この期に及んでもう一つ頼みがある・・・もしよければパーティーを組んでもらいたいのだが・・・どうだろうか?」
俺はレストランで他にお礼で何かできないかと聞き出そうとしていたが、それらしいものもなく、めんどくさいから直接聞いたのだが、もう十分だと言われてしまっていた。
そんなルーシーが、パーティーを組みたいと申し出てきた。
パーティーか・・・正直この世界のFランクがどれくらいの強さかもわからないし、誰かと組んでみたいと思っていた。
俺の強さの参考になる人がヒューグさんしかいないのだ。上を目指すにもどの魔物までが狩れるかもわからないし、安全第一を考えると、倒したことのあるゴブリン止まりになってしまっていた。
ルーシーなら気兼ねなく話せる間柄にもなったし、強さはわからないけど、それに合わせていけばいい。俺もゴブリンまでしか倒したことがないしな。
「ルーシーがいいのなら、パーティー全然いいぞ!俺も一人で心細かったしな」
ついつい本音がでてしまい笑ってごまかす。今まではヒューグさんがついていてくれたが、一人になり、やはり心細かったのは事実だった。
だからこそ確実な強さがほしいと、魔法の改良やらなんやらと試してきたのだから。
「おお!!いいのか?仲間ができるというのは嬉しいものだな!!これからもよろしく頼む!!!」
そう笑顔でルーシーは言って、右手を差し出してきたので握手を交わし、戦力確認や方針等は明日にしてぐっすり眠るのであった。




