正義の味方・・・ルーシー参上
俺は懲りずにゴブリンと狼のいる森を散策している。
ここは森のため、火は使わずに風のみ、あと最近は弓矢を拾うのも面倒臭いと思って魔法でできないか考えた。
風を圧縮させて無で覆い、弓矢に見立てて放つ。
これもなかなかかっこいい!
満足いく結果になった。この風の弓の先端に火や雷を纏わせるとそれもまたエンチャントしてるみたいで見た目が派手になる。
折角狩人をⅩにしているわけだし、放つ速度に物理的な行動を+することによってより加速させることに成功した。
弓矢が万が一尽きたときにも使える中々賢い手だと思う。
俺のpotentialの力があってのものだろうけど・・・。
問題は他にもあった。凄く余った魔石をどうするか・・・。
魔石は魔物の核となるものであり、いわゆる人間の心臓みたいなもの。
急所はこの魔石と脳である。他の魔物によっては異なるのだが、大体がこの2つ。
魔石は魔力の源であり、魔道具をつくる電池のような役割や、その魔力を利用しての戦闘方法等、使い方はいろいろあるらしいが、俺にはわからん。
試しに魔石に魔力を通そうとしてみたが、少し注いだだけで、爆発しそうになり、こればっかりは諦めていたのである。
Eランク冒険者になり、討伐依頼しか受けていないが、1日銀貨3枚~5枚
とかなり稼げるため、現状は満足していた。
そこそこに依頼をこなし、そこそこに稼ぎ、目立たないようにひっそりと情報収集と研鑽は怠らず。
だからこそ絡まれたのにはびっくりした。
ギルドに帰ると毎回こちらをジッと見てきていたガラの悪い5人組。
別に何をしたわけでもないのに毎回睨まれて無視し続けてきたのだけど・・・。
「おう、ひよっこ冒険者!毎日ここを通られるのうざいんだよ・・・もうくんじゃねぇ!」
「お前みたいな雑魚、王国には必要ねぇんだよ!死ぬのを待ってやってたのに毎日毎日雑魚の依頼しか受けやしねぇ腰抜けが!目障りなんだよ!二度とここにくるんじゃねぇ!」
って急に言われたんだけどさ、なんだよこの無理やりな絡まれ方・・・・
まだ、肩がぶつかってーとか、他にあるだろ?
コップを机にドン!って・・・お前ら筋肉のおっさんらに急にやられたらびびるやんけ・・・
ずっと何も言ってこなかったくせになんだよ・・・
クソ面倒臭い・・・それに恐い・・・
「え?あの・・・見ての通り雑魚なんで、かまわないでいただけると幸いなんですけども・・・?」
「あ?だからもうくんじゃねえって言ってんじゃねえか!そしたら絡むこともねぇよ!それともヒューグとかいうあの狂ったやつの助けでも呼ぶか?」
「おう!ヒューグもついでにボコボコにしてやるから呼んで来いよ!あんな糞野郎がまだ王国にいるってのが気にくわねぇ!なんでも強盗やらなんやらいろいろやってきたらしいじゃねぇか。それに初心者を鍛えるだとか言って毎日自分の鬱憤を晴らすためにボコボコにしてたって話だしな!」
ん?なんで急にヒューグさんディスリはじめてんのこの人たち・・・?
それにしてもヒューグさんが強盗?鬱憤晴らしでボコボコ?・・・ボコボコはやりそうだけど・・・犯罪はしないだろ・・・んー?話が全く見えない。
俺以外にも新人冒険者は少なからずいるし、俺だけ因縁つけられてもな。で、ヒューグさんを呼んで来い?ヒューグさんに会いたいってこと?
「ヒューグさんは関係ありませんし、あの人は親切に案内してくれただけですよ?今どこにいるのかもわかりませんし。ヒューグさんに会いたいんですか?」
考えても分からん!そういうのは聞いてしまうのが早い。
「あ?ヒューグにあいてぇわけねぇだろうが!あんな糞雑魚どうせそこらへんで野垂れ死んでるだろうさ!ま、お前を見ればわかるわ!まだスライムやらゴブリンばかりしか討伐できないんだからな!その師もたかが知れてるってもんだ!」
誰か代表者が話せよ!順番にしゃべりやがって・・・ヒューグさん馬鹿にしすぎだろうが!それに糞雑魚だと?さっきから何回も言いやがって!あの人の剣技を見たことがないからそんなことが言えるんだろうよ!
あーなんかイライラがやばい。
目立ちたくもないし、穏便に済ませようと我慢してきたのに・・・俺のせいでヒューグさんの評価がさらに下がるのは我慢できんよなぁ!
「あーーーもういいわ、かかってk」
「もうやめてやれ!」
俺が「かかってこいやぁ!」って格好良く言おうとした瞬間、鋭い声が二階から聞こえた。
そちらに顔を向けると、鋼の甲冑に身を包み、素顔すら見えない長身の奴がゆっくりと階段を降りてきた。
「んだてめぇ!!」
いかつい奴らの一人が叫ぶと立ち上がり威嚇した。
「いやいや、一人の初心者を相手に大の大人が5人がかりで絡んでいたからな!このまま見ていては剣士の恥だとこうして止めにはいったまでだよ。」
階段をガシャガシャと鎧の擦れる音を出しながら降りると、静かにそう言い放った。
その立ち姿からは、ただ立っているにもかかわらず、凄みというか、威圧感がすごく、5人もたじろぐ。
「べ、別に殺そうってわけじゃねぇよ!先輩としてどんなに厳しい世界かを教えてやってただけだ!ちっ酔いが覚めちまった!!行くぞてめえら!!」
5人がびびりながらギルドを出て行った・・・。
俺は怒りもどこかへ吹き飛んで唖然とその光景を見ていたが、ハッとなって
直ぐに鎧の人に駆け寄るとお礼を述べた。
「ありがとうございます!おかげで助かりましたよ!」
「ふふ、私のハッタリもなかなかのものだろう?いやー恐かった・・・」
そう言って鎧の人は地べたにガシャガシャ音をたてながら片膝をついた。
「え?ハッタリだったんですか・・・?」
「う、うむ!でもなんとかなっただろう?私は今日冒険者になったばかりの新人でな!御伽噺の弱者を救うヒーローに憧れてなったんだ!!!どうだ?かっこよかっただろ?」
・・・・この人危ないだろ!巻き込んでしまったのは俺の責任もあるし、正直すごく助かったけどさ・・・
「そ、そうなんですね・・・正直すごく助かりましたし、かっこよかったです。でも、無茶はやめてください。もし、あそこであいつらが引かずに、あなたが危ない目にあったら、私は自分で自分を許せなくなってしまいます。」
俺があそこで穏便に済ませようとしたばかりに、この人が無茶して怪我や死んだなんてのは、俺は自分を許せなくなってしまうだろう。
「あ、いや、そ、その、すまなかった。以後気を付けるよ!」
なにをそんなにモジモジしてんだよ・・・・
「でも、助かったのは事実です。改めてありがとうございました!俺の名前はジンっていいます。もしよかったらお礼をしたいのですが、夕飯でもどうですか?」
こういう時何でお礼すればいいか全然わからん。とりあえず飯誘って、そこで何か欲しいものを聞き出すのが良さそうだ。
面倒ごとが先送りになっただけかもしれないけど・・・もう絡んでこないといいな・・・
「うむ!私はルーシーだ。実は金が全くなくてな!!今日の飯も宿もなかったんだ!いやー助かる!!!それに畏まった言い方はよしてくれ!敬語なんて止めて普通に話してくれた方が助かる。」
ハッハッハと笑うルーシー、いやいやいや、Fランクで金もないってけっこう崖っぷちだろ!・・・いや、それが普通なのかもしれない・・・冒険者になるなんて、多分憧れかよっぽど金がないかなのかもしれない。
他がどうか知らないけど、王国では冒険者は嫌われている感じがある。
宿屋や武具屋等、冒険者を相手にするところはそんな感じはないけどな。なんとなく、王都民の目は冷たい感じなのだ。
こいつは【憧れ】と【金がない】の両方を持っているのだろう。ま、嫌いじゃないけどなこういうやつ。こういうやつが増えれば都民の目も温かくなりそうだし。
「おう!任せとけ!意外と俺は儲かっているからな!たらふく食わせてやるし、宿も俺のところを紹介してやるよ。」
だから出来る限り支援してやろう。お礼も兼ねてるし、冒険者に幻滅してほしくもないしな。
そうして俺は今日の依頼の報酬をもらった後、ルーシーとともにちょっと割高な酒場へと向かったのだった。




