戦闘狂 ヒューグ
―ヒューグ―
俺はいつものようにリグム村の警備をしていた。
警備といってもどうせ誰も来ない。たまに怪我の後遺症が残った元冒険者がここに来て住み始めるくらいで、魔物すら狩りにいかないと近寄ってこない。
それはこの村が元冒険者の集まりだからであろう。
腐っても元冒険者。ここら一帯の雑魚等お話にならないし、魔物もそれを学習できるくらいには知恵があるのだろう。
でもまぁ、そうであったとしても油断しないのが俺たちだ。
油断してこうなった過去があるのだから。
俺は左腕が麻痺により思い通りに動かない。
魔物にやられたわけじゃないが、宿屋で完全に油断していた・・・。
そして今はこの通り、後遺症が残ってしまった。
何とか死を免れたがその場で気を失ってしまい、目覚めたときに上位ポーションを使ったが、怪我は治ったものの麻痺だけは残ってしまったのだ。
それで冒険者を引退。冒険者ギルドの教官として働くも、ゴブリンすら倒せそうにない馬鹿共が多く、基礎から鍛錬させようとするも、その中に混じっていた糞貴族の反感を買い解雇。
まぁ、あれも完全に策だったよなーと思っていると前に一人の少年が歩いてきた。
こいつの第一印象は・・・不思議なヤツ だった。
俺には真偽の目というスキルがある。
このガキが言っていることが嘘か本当か分かるというものだ。
「突然すみません。私はジンと申します。実はー・・・人里離れた場所に住んでいまして・・・。よく道も分からずにデカい街を探してさまよっていたところ、ここにたどり着きまして・・・。出来れば1晩だけでも薬草等を対価に泊まらせていただけないかなと来てみたのですが・・・可能でしょうか?」
と言ってきたのだが、名前と薬草とかで泊まらせてくれが本当であとは嘘だ。
退屈がまぎれそうだし、隙だらけのこいつが暴れても追い出せばいいだけ。
薬草くれるならいいかと、軽く了承したのだが、とんでもないものを持ってやがった。
生命草である。
これは龍の巣や妖精の森の奥地などの場所にしかないと言われており、とても貴重なものであった。
とはいっても、冒険者が怪我を負えば大抵は治癒の魔法や上級等のポーションで即座に回復することから、後遺症等は残らないので生命草から作れる特級ポーションはほとんど必要とされず、値段は高価だが、そこまで手が届かないというほどではない。
何故かというと、貴族等の奴らは、後遺症が残るほどの怪我をすることがほぼ無く、治癒や上級ポーションで解決できてしまうからだ。そういったことが価値を下げている要因だろう。
となれば、わざわざ危険を冒して取りに行く冒険者等いるわけもない。
運よく取れた場合等のみ市場に出るのだが、それらは必要ないと値段を下げた貴族等が有事の際のためにと秘密裡に買い占めてしまう。
よって俺ら元冒険者など、手に入れる機会はなく、取りに行くことも怪我でできない。
そんな生命草を5枚も持っている。そして価値を本当に知らず、足りなければさらに何かしら支払うという・・・とんだ世間知らずだ。
なんだかんだあり、貰えることになった。そして追加で要求されたのは
食糧と知識、戦闘の指導だった。
指導は楽しかった。
短剣を初めて構えた時は、素人ではないと思ったのだが、身体強化さえ使えなかったのを忘れて、ジンへと突っ込み、思い出して急ブレーキ・・・風圧で後ろに軽く吹き飛ばしてしまった・・・。
反応できていたのに驚いて褒めると、なんとかごまかせた。
そこからは基礎やらなんやらと叩き込んでやった。
吸収力は異常だった。
もともと戦闘経験があるのか、呑み込みは非常に速い。
だが、魔物との戦闘になると途端にその能力や技術が落ちてしまう。
ま、経験がないのか、他の何かか、考えてもわからんから経験を積ませる。自信を付けさせる。今はこれでいいだろう。
そうこうしているうちに特級ができて、俺の腕が治った・・・。
また、高みを目指すことができる・・・。治ったことに感動する。何よりも俺よりも嬉しそうに喜ぶジンを見て、目頭が熱くなってしまう。
実感する。左腕が思い通りに動くことを。
俺はジンに一生の恩ができてしまった・・・。せめてこいつには同じ思いをさせないように、死なせないように、無様な背中は見せないように、師として恩返しさせてもらう。
基礎を磨き、経験をさせ、自信を持たせる。
だが・・・・1か月で短剣をⅩにしたのは心底びびった。
普通1年とかかかるのだが・・・でも、調子には乗らせない。
教えた俺の能力がすごいことにしてやった。ついでに、もっと煙草をよこせと要求してやった。
そうしたら、こいつがスキルで煙草を生成できる、とか意味わからないこと言いだしたが、俺が頭を叩きすぎたのかもしれない。次からは肩にしようと思った。
そんなこんなでジンの成長はみてて面白いほどだった。
言った通りに反復して練習する。センスの良さもあり、成長は止まらない。
そうして弓までⅩにし、狩人となった。
どこか遠征でも行ってもっと強く、自信を付けさせたいとも思う。
だが、こいつと打ち合ってきてずっと違和感がある。時折見せる力が異常なのだ。
本当はもっと力があるのかもしれない・・・自分で力を制限している?
そうは言っても、「ヒューグさんには敵いませんね」等の言葉は真実だと俺に告げている。なら、無意識に制限をかけているのだろう・・・。底が見えない奴だ。
果たして共にいるべきなのか、遠征したとしても制限が取れるとは思えなかった。俺には敵わないと、思い込みが制限をかけているのなら、放り出すのもまた1つの手段だろう。
俺は王都に向かうことを決意し、着いたなら別れることに決めた。
そうして最悪の事態がそこで起こってしまった。
グレイトドラゴン。A級指定の龍種。龍種の中では最弱なものの、その強さはワイバーンの比ではない。
そしてこいつの特徴は物理攻撃がほぼ効かないことにある。
魔法が使えればA級冒険者でも盾役などのいるパーティーならば問題なく倒せるだろうが、あいにく俺らは魔法が使えない。
俺の攻撃もかすり傷程度・・・ジンを逃がす。それだけしか頭にはなくなった。
だが・・・ジンはそれを木の棒で倒してしまう。折れない棒にも驚愕したが、何より驚愕したのは、その圧倒的力。
俺の追い求めた力だった。だが、果たしてこの領域に到達することができるのか、俺には自信がなかった。
無様な背中は見せない。俺がジンに誓ったもの。あきらめるわけにはいかない。俺はお前の師だ。俺はお前より強くあらねばならない。
師を超えるには早すぎる・・・これをきっかけに、potentialをもっと引き出せるようになれるだろう。ならば、俺は心置きなく自分を高みへと、そして俺を陥れた奴に礼をせねばならん。
それに巻き込むわけにはいかない。俺のせいでジンが狙われることはあってはならない。




