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引きこもり勇者がダンジョンマスターになったら  作者: ニンニク07
第六章  冒険者編
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ミカエルVSルキフグス

ブクマと評価を頂き本当にうれしいです、ありがとうございます。


グルルン草原



 共和国主体の連合軍第二軍十万は、本部からの進軍命令の通りに、他のどの軍よりも早くアルミにたどり着くためにかなり無理な侵攻をしていた。だが、そのおかげで第二軍はアルミまで目と鼻の先の距離まで迫ることに成功していたのである。


 だが、ここがまでが限界点だった。無謀とも言える進軍ですでに兵站は崩壊し、ろくに補給も受けられない。そして、武器と食糧を満足に調達できない彼らをガアプ率いる魔物の大群が襲う。


 人間の兵士はすでに疲労困憊で戦闘は困難であったが、第二軍の司令官達にとっては予想の範疇だ。司令官達は、当初の予定通りだとほくそ笑み、共和国の切り札であるゴーレム部隊を繰り出す。


 このゴーレムは悪魔との取引で入手した〈マギア・エンジン〉を搭載しており、たった一体でユニークモンスターと互角に渡り合える戦闘力を持つ。それが十台、第二軍の誰もが勝利を疑わなかった。


 しかし、希望と戦況は一瞬のうちにひっくり返される。魔王側ガアプは用意していた〈アンチ・マギア・エンジン〉によってゴーレムの動力炉を強制的に停止させる。何故魔王側が対抗手段を持っていたのか、答えは簡単、共和国の〈マギア・エンジン〉の技術を流したのは、魔界にいるルキフグスの配下の悪魔だったからだ。


 手違いで人間に流れたしまった悪魔由来の技術だが、ルキフグスは、対抗手段を用いることでピンチをチャンスに変える。


 だが、共和国の人間はそんなこと知る由もない。何故、突然ゴーレムが停止したのか分からないまま、魔物の群れに飲み込まれる。


 司令官を失った第二軍の兵士達は戦場を逃げ出し、当然魔物の群れもそれを追撃する。第二軍が開戦以前の場所まで後退した頃には損耗率は七割を超えていた。




アーラン湿地帯


 帝国軍主体の第一軍七万は、行軍中、小規模な襲撃を受けていたが、概ね予定通りに侵攻していた。他の軍の司令官達とは違い、第一軍の司令官は功を焦らない人物であったため、司令部からの急いで侵攻せよと言う命令に反し、のんびりと進軍していた。


 だが、今回ばかりは急いで進軍していた方が良かっただろう。何故ならば、連合軍司令部を一人で潰した最強の悪魔アザゼルがゆっくりと第一軍の背後から迫っていたからだ。






アルミ王城 玉座の間


「……どうやら、連合軍の敗北は決定的のようだな」


 大天使であるミカエルは、連合軍の魔力反応から自軍の敗北を悟った。対して、勝利者側であるはずのルキフグスは抑揚のない声で答える。


「ああ、だが、貴様からしたら、別に人間共が勝とうが負けようがどうでも良かったのではないか?」


 その通りと、ミカエルは心の中で賛同する。


「あれだけの数の人間が攻めて来れば、流石のお前も三公爵を出さざる負えない。おかげ、この王城に楽に忍び込めた」


 メタトロンと同じく、ミカエルもどちらかと言えば人間などどうなっていいと見下すタイプの天使である。そのため、簡単に人間を犠牲にして魔王の元へたどり着くことができたのだ。


「まあ、お前を倒せばいくら人間が死のうが我々の勝利だ!」

「確かにそうだ。私が死ねば魔王軍の負けだ」


 ルキフグスはミカエルの乾坤一擲のこの行動を正しく理解している、だからこそ気を抜けない。


「では全力で相手しよう。 メギド!!」

「それはこちらも同じ。食らえ! メギド・フレア!!」


 二人が初手に選んだのは、初級、中級、上級の上に位置する光魔法の最上級魔法であり、天の火と呼ばれる魔法メギドシリーズ。


 複雑な魔法陣が二人の周囲に展開された後、凄まじい閃光が玉座の間を包みこみ、世界を滅ぼすのではないかというほど熱が解放された。






「!?……くっ、何だ?!」


 道端に立てられたアルミの街まで後二十キロと書かれた看板を見た直後、俺は、目を潰すかと思うほどの閃光、激しい地響き、そして轟音と共に天まで届くかのような巨大なキノコ雲が姿を目撃する。


「!?……これは、まさか!?」


 それは俺達、日本人が決して忘れていけないものに非常に良く似た光景だった。一瞬この異世界でまさか、あれがと!?と脳裏をよぎったが、非常に高い魔力を感じたので、これは魔法の一種であるとすぐに確信できた。


「どちらにしろ、この立て看板を見るに爆発があったのはアルミの街の方だ。一体どうなっている?」


 状況は分からないが、アルミで何者かが戦っているのは確かのようだ。状況を掴むため、俺は大急ぎでアルミに向かうことにした。







 

 解放された天の火の強烈な爆発と熱戦は、アルミの街そのものを一瞬にして破壊し焼き尽くした。幸いと言ってもいいのかは分からないが、この爆発による人間への被害はゼロである。何故ならこの街にいた人間はとうの昔にルキフグスの手によって皆殺しにされているからだ。


 よって、犠牲なったのは、街に住み着いていた人間の敵である魔物のみであるが、この惨状を見て、素直に喜べるかどうかは、人それぞれであろう。


 さて、ここで、メギドについて少し説明をしよう。光魔法の最上級であるメギドだが、実はまだ上がある。それこそがミカエルが唱えたメギド・フレアだ。このメギド・フレアが使えるのは限られた天使のみで、光魔法しか使えないとは言え、悪魔であるルキフグスでは発動することはできない。


 そして、メギド・フレアの威力はメギドのおよそ十倍だ。


 つまり、ルキフグスの放ったメギドは完全に力負けし、ルキフグスはこれ以上にないくらいにメギド・フレアの直撃を受けた。はずだった。


 廃墟となったアルミの街のがれきの上に、爆発に巻き込まれ少しだけ傷を負ったミカエルが立っていたが、その表情はとても険しいものである。何故ならば、


「やはり、無傷か!」

「ふん、魔法戦では完全に君の方が上だが、だからと言って君が勝つとは限らない!」


 ミカエルの前には、無傷な姿で余裕な表情をしているルキフグスの姿があったからだ。


「……厄介だな、貴様の持つクリフォト能力〈拒絶〉は!」


 以前、〈星〉のアルカナを持つ勇者竜崎の隕石落としすら無傷で凌いだルキフグスの持つクリフォト能力〈拒絶〉、その能力は極めてシンプルだ。


「知っての通り、私の〈拒絶〉は、能力者である私が認識した全ての現象を肉体が拒絶するというものだ。私に攻撃を当てるには、私が認識できないほどの速さで攻撃するか、不意打ちをするしかないぞ!」


 そう言いながら、ルキフグスは自分の感知能力を向上させるために風魔法の上級魔法の一つ〈マジック・センス〉を発動する。この魔法は、使用者の魔力感知能力を大幅に上昇させる。


「本当に厄介だよ、お前は!」


 ミカエルは悪態を吐くと、大太刀を手にルキフグスに襲い掛かった。


 



「!?…ちっ、またこれか、一体いくつ仕込んだのだ!」


 ルキフグスが文句を言うのは仕方のない、ミカエルは事前にアルミの街のあちこちに、物体のみならず空中にも設置できる火魔法の一つである地雷魔法を設置していたからだ。ちなみにこういった魔法はさきほどのメギドの影響を受けない。


 地雷魔法は誰かが触れれば、発動し爆発をする。そのため、認識できる攻撃を無効化するルキフグスの〈拒絶〉に対してはかなり有効的な攻撃手段だ。


 とは言え、多少のダメージは当てえられてはいるが、魔王を倒すほどの威力はない。


「ミカエル!! 色々と小細工をしているようだが、その程度では私は倒せんぞ!!」

「………」


 ミカエルに対して優位な戦いをしていると判断したルキフグスは自信に満ちた声で旧友を挑発する。対するミカエルは、何故か先ほどから一切言葉を発しない。


(何か、策であるのか? まあ、何をしても無駄だがな)


「ホーリー・スピア!!」

「ダイアモンド・シールド!」


 太刀と剣の打ち合いがメインだが、時折魔法の打ち合いをしながら戦う二人、


 しばらくすると、地雷がなくなったのか、それとも他に策があるのか、ミカエルは戦闘中の最中にも関わらず、敵に背を向けて廃墟と化したアルミの街から逃げだした。


「待て、ミカエル!!」


 ルキフグスは呼び止めるも無視される。


(罠か、まあいい、追うか!)


 慎重を期す普段のルキフグスであれば、決して追撃しようなどは考えないはずだが、天使長相手に優位に戦闘ができているというおごりが、ルキフグスから正常な判断を奪う。






「追いついたぞ! ミカエル!!」


 ルキフグスがミカエルを追い込んだ場所は、アルミから少し離れた場所にある小さな村だ。メギドのよる被害はないが、村人であるゴブリン達は突然やってきた天使と魔王に恐れおののき、家の中から静かに二人を覗いている。


「この村におびき寄せることが、お前の策か! だとしたら少し残念だ!」


 ルキフグスは怯える目をした自分の領民であるゴブリン達を一瞥する。ルキフグスはこんなゴブリン達でどうする気だと思っていたが、ミカエルの策はすでに完成していた。


「ふふっ、これで終わりだよ」

「何!?……グハッ、これは?!」


 ミカエルを追い込んだはずのルキフグスは突如吐血した。それだけではない。体中が痙攣し、激しい頭痛が襲う。


「くっ、これは……まさか、毒か?!」

「ご名答だ、ルキフグス」

「い、一体いつだ」


 〈拒絶〉を持つ自分は毒と言えど受け付けないはずだ。それなのにいつ毒を受けたと思案するルキフグスに対し、笑みをこぼしながらミカエルが真相を語る。


「ふふ、最初からだ。玉座の間で再会した瞬間に空気感染する特製毒を玉座の間にばら撒いた。魂にはダメージはないが、肉体は持つまい…グハッ」


 そう言うと、ミカエルもルキフグスと同じく吐血する。その姿を見てルキフグスはミカエルの作戦を全て悟った。


「貴様!! 私と刺し違えるつもりかぁ!!!」


 血を吐き、体を痙攣させながらミカエルは、家屋に寄りかかり言い放つ。


「ふん、私だけ毒避けの結界を張れば貴様に感づかれるからな、一緒に巻き添えになる必要があった……グハッ…思っていたよりきつい。だが、すでに攻撃を受けた以上〈拒絶〉は働かないだろう」


 そう、メギドも地雷も剣戟も全てはルキフグスが完全に感染するまでの時間を稼ぐための芝居だったのだ。


(くっ……完全に作戦負けした。確かにこれではもう〈拒絶〉は役に立たない、だが、それでもミカエルお前の負けだ!)


 ルキフグスはふらつきながらも、ゴブリンの家に押し入る。


「こ、この後に及んで見苦しいぞ、ルキフグス!」


 ミカエルも何とか立ちながら、ルキフグスが何をするのか知るために窓から彼が入った家の中を覗く。


「なっ!?」


 ミカエルが目にしたのものは、一匹のゴブリンの首筋にかみつくルキフグスの姿であった。


「ま、まさか!?」


 ルキフグスの行為に覚えがあったミカエルは驚愕の表情を浮かべる。反対にルキフグスはゴブリンの首筋から顔を離して静かに言う。


「ふん、流石にまずい味だな……」


 ルキフグスは、体中の水分を抜かれ干からびたゴブリンを無造作に床に転がすと、毒を克服したかのように、快活そうな声を出す。


「そうだ、貴様の想像通りだ! ミカエル。私はヴァンパイアに憑依して受肉を果たした。知っての通りヴァンパイアの吸血魔法は、血を吸うことで魔力や身体能力を向上させると同時に体内の状態異常も回復させる。……お前の相打ち行為は無駄だったな、ハッハッハッハハーーーー!!」


 策を潰され意気消沈するミカエルとは対照的に、ルキフグスは彼らしくない高笑いを上げた。


「もうじき、死ぬだろうミカエル? まあ天界に帰るだけだがな。旧友のよしみだ。貴様の最後を看取ってやるよ!!」

「……くっそ!!」


 愉悦にも似た余裕の表情を浮かべながら、全身に毒が回り息が途絶え掛けているミカエルの前に立つルキフグス、だが、その時背後に何者かの気配を感じ慌てて振り向く。


「何だ!? 貴様は!!」

「うお!?気付かれた!」


 物陰から姿を現したそれは青いエプロンドレスを来た人間の少女であった。何故この場所に人間がいるのかなどどうでもいい、ルキフグスは自分とミカエルの最後を邪魔された事に腹を立てる。


「私とミカエルの仲に勝手に入るとは無粋な!! とっと死ね人間のガキ!」


 ルキフグスは、邪魔な少女の息の根を止めようと、勢いよく地面を蹴ると同時に剣を振りかぶった。

 

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